「隠れがちな背景に想いを馳せると…」落下の王国 4Kデジタルリマスター flushingmainstさんの映画レビュー(感想・評価)
隠れがちな背景に想いを馳せると…
作品の背景に色んなことが隠れているような気がして、パンフが欲しかったんだけど残念なことに売り切れだった。
設定が1915年だそうで、主人公が再起不能とも言える大怪我を負った映画のスタントマン。同じ病院に手の骨折で入院しているのがルーマニア移民の女の子。この2人の病院のベッドでの交流が愛くるしい。
この時期の映画産業は前途洋々らしく、そんな希望ある時代に大怪我を負って生きる気力を無くしつつある主人公と、もしかしたら母国での生活苦から生きる為に移民となって渡って来た少女の交流…死にたい男と生きたい活力の少女の対比があるとしたら、一緒に紡ぐシンプルなストーリーも実に多面的に見ることができそうだ。それこそが鮮烈な色彩となって映像に現れている気もする。後半の妄想は男の負のイメージに傾き悲劇に終わりそうになるが、少女の生きる活力がアメージングを起こす。終始落下の恐怖に付き纏われていた妄想は、最後水中から跳ね上がって救われるのだ。明るすぎるほどの少女の胸の内には悲惨な過去を思い描くことができる。もし、現実を生きる延びるための必死な想いを、映画という虚構の愉悦に挫折した男が感じることになるとすれば…。2人の妄想は健気で心打つのではないだろうか。
1915年と言う設定とも相俟って、CGを使わない驚愕の映像が圧巻で、石岡瑛子氏のコスチュームがそれに全く負けていないことに二度驚愕。勿論挿話の中にはスタントが散りばめられている。
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