「画竜点睛を欠く」はだしのゲンはまだ怒っている regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
画竜点睛を欠く
反戦・非核漫画「はだしのゲン」が及ぼした影響を追ったドキュメンタリー。ゲンが体験した昭和20年8月6日の広島を伝えるガイドや、『はだしのゲン』の講談をライフワークとする講談師、漫画の外国語翻訳に奔走してきた編集者など、様々な視点からひも解く。
監督は、『オッペンハイマー』に原爆の被害を受けた日本の描写が抜けているのに憤りを感じたのが本作を製作するきっかけとなったと語っている。まあ感じ方は人それぞれだし、何より、不満や憤怒が原動力となって新たな作品を生み出すという流れは実に興味深いものがある。
ただ気になったのが、『はだしのゲン』を規制した当事者の声を直接拾っていない点。漫画を規制した当事者・関係者にこそゲンはもっとも怒るべきではないか。「歴史的事実としての間違い」を指摘するジャーナリストを取材できたのに、なぜそれができなかったのか。もしかしたら関係者にアプローチをするも断られてしまったのかもしれない。でも、それでもドキュメンタリーとしては画竜点睛を欠いていると言わざるを得ない。
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