劇場公開日 2025年11月28日

「尊敬と感謝は本物だが、構成の“もったいなさ”が惜しい」栄光のバックホーム こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 尊敬と感謝は本物だが、構成の“もったいなさ”が惜しい

2025年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 野球ファンとして、そして横田慎太郎という男の生き様に強い敬意を抱く者として、この映画をどう受け止めるかは、正直少し難しい。作品全体に流れる誠実さと丁寧なリスペクトは間違いなく本物で、製作陣が横田を英雄にも悲劇の主人公にもせず、ただ「生きた人」として描こうとする姿勢は素直に評価したい。奇跡のバックホームをクライマックスに据えながらも、そこに至る時間を真正面から扱った点も、ファンとしては胸に迫るものがある。

 ただ一方で、映画として観ると“もったいない”部分がどうしても目につく。俳優陣が豪華すぎるのは良し悪しで、出てきた瞬間に「お、この俳優か」と別のスイッチが入るのは避けられないとしても、本作ではその情報整理が追いつかない。誰が誰で、どの関係性を担っているのか、初期段階での導入が薄いため、観客が人物相関をつかむ前に話が進んでしまう。野球で言うなら、守備位置を把握しないまま試合が始まってしまったような感覚だ。

 さらに惜しいのは、エピソードの連打が感情の流れを細切れにしてしまっている点だ。横田の人生は確かに密度が濃い。だが映画はその濃さを「点」の集合として提示してしまうため、観客が“線”として受け止める前に次の出来事へ移ってしまう。泣ける素材は揃っているのに、泣けるまでの“溜め”が育ち切らない。これは本当に惜しい。横田の生きた時間は、もっとゆっくり観客の心に沈ませるべきだった。

 それでも、横田慎太郎という稀有な人間の物語が、こうして映画という形になり、多くの人に届くこと自体には大きな意味がある。野球ファンとしては感謝したいし、作品を通して彼の姿勢や生き様を知る人が増えるのであれば、それだけで価値はある。だからこそ、もう一歩だけ踏み込んだ“物語のつなぎ方”があれば、より深く、より長く心に残る作品になったはずだと、贅沢なことを思ってしまうのだ。

こひくき
満塁本塁打さんのコメント
2025年12月7日

返信お気遣いありがとうございました。パンフは良かったです。😊

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2025年12月7日

いいねありがとうございました。大物俳優は良かったのですが個性が勝ってしまいました。守備の把握ですね。
私的には 最後の 泣かせの連打 がシツコイ感じがしました。失礼します😊

満塁本塁打
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