日泰食堂

劇場公開日:2026年5月30日

解説・あらすじ

香港の離島・長洲にある小さな食堂を舞台に、そこに集う島民たちの姿を通して変わりゆく世界を見つめたドキュメンタリー。

香港島から船で南西に30分ほどの場所に位置する小さな島・長洲。漁村としても知られるこの島の港には色とりどりの船が浮かび、穏やかな時間が流れる。そんな島にある小さな食堂「日泰食堂」は、島民たちでいつも賑わっている。島の人々はこの店に集まっては、ビールを片手にトランプやマージャンに興じる。しかし、社会の変化や市民の熱気は香港から離れた島にも伝わり、食堂の常連客たちも無関心ではいられない。テレビを見つめる店主、懸命に情報を追う若者たちなど、それぞれの立場や距離感で、時代のうねりを受け止めていく。やがて世界中を覆ったパンデミックは、この食堂にも大きな影響を及ぼす。

監督は、本作が初の長編ドキュメンタリー作品となるフランキー・シン。長洲出身で自身も日泰食堂に通い詰めていたシン監督が、家族のように接していた人たちが時代の変化とどのように向き合い、日々の営みを重ねてきたのかを丁寧に映し出す。2024年・第29回釜山国際映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。

2024年製作/83分/G/台湾・香港・フランス合作
原題または英題:日泰小食 Another Home
配給:太秦
劇場公開日:2026年5月30日

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映画レビュー

3.5 ベタな漁師屋台の日常と政治の不穏な対比がおもしろい

2026年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なかなかおもしろいドキュメンタリーだなー
83分とコンパクトなのも好ましい。

映画ドットコムの紹介文にもあるが、監督のフランキー・シンはかつてこの食堂(というより「屋台」)に通い詰めた常連。
だからこんなに店のおじちゃんやおばちゃんその他のグダグダな常連たちに密着取材できたのかw

そして、漁師町の観光客相手の屋台と香港の政治的激動が否応無しに重なる妙。
その「日常」と「政治」の不穏な関連の対比がおもしろい。

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印象に残ったのは、終盤で聞こえてくるTVニュースだ。
「香港民意研究所の調査によれば、香港人の25%が移民を考えており、そのうちの36%が二度と還らないと考えている」
2020年時点で、4人に1人が「香港を脱出する」ことを考えているのだ。
これは『旅立ちのラストダンス』でマン師匠の息子家族がオーストラリアに移住したというエピソードに重なる。

ちなみに香港民意研究所とは、もともと香港最高峰の香港大学で四半世紀も続いていた研究プロジェクトだったが、まさにこのドキュメンタリーの嚆矢となった香港返還22周年の100万人デモの際に大学から独立し、市民のクラウドファンディングで運営が始まった社会調査機関である。
歴代特首(行政長官)の支持率、市民の「自分は『香港人』か『中国人』か」というアイデンティティ調査、天安門事件(六四事件)に関する意識調査などを、厳格かつ中立的な統計手法で実施し、香港社会の「体温計」として信頼されてきた。

しかしここも2020年6月の香港国家安全維持法(国安法) 成立以降、あらゆる調査活動が反政府的であるとみなされる恐れが出てきて、実質的に活動休止状態らしい。

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そして、ふとまた思う。
ここまで反政府的な眼差しを含んだドキュメンタリーを、なぜ香港人が制作できるのか。
当然、海外(香港外)に逃れて制作しているだろうし、デモ鎮圧の映像などもかなり命がけだろうが現場で撮影して持ち出しているに違いない。
そこまでは想像できていたが、今回、制作国として香港以外に台湾とフランスが入っている。
フランス!?
映画の中で、デモに参加していた日泰食堂の若者が英語でフランス人と会話するシーンがちょっとだけ出ていたのも、少々思わせぶりだ。

いろいろ調べてみると、おもしろい推測が考えられる。
まず、フランスの制作会社がクレジットされ、国際的な映画祭のプラットフォームに乗ることで、万が一、監督やスタッフが中国政府から不当な拘束や嫌がらせを受けた場合、「フランス共和国の文化財(共同制作物)と映画人を弾圧した」として、即座に外交問題・国際ニュースに昇華させられるシステムが完成しているのではないか。
この「国際社会の目」こそが、クリエイターにとって最大の防弾チョッキになっている可能性がある。

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GoogleMapで「日泰少食」を検索すると、確かに長州島にその店は実在する。
そうなると、毎週のようにデモに出かけていたあの子は大丈夫なのだろうか。
面が割れているわけだから、その後がちょっと心配ではある。無事に移民してしまっていれば良いが。

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LukeMovieCatnaps

3.5 雨傘運動のその後 離島にて

2026年6月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

香港内の小さな漁村の小さな食堂とその家族、隣人達の日常を通し、香港が中国(北京)に呑み込まれていく様を描いたドキュメンタリー。
最後が、コロナが収束に向かいつつあるところでのエンディングなので、その後(今)を観たくなった。

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Cabe

3.0 香港の静と動

2026年5月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

驚く

斬新

逃亡犯罪人引渡法への反対運動とコロナ禍という、香港を揺るがした4年間の激動期を背景に、長州島の日常を切り取ったドキュメンタリーです。

​舞台は、漁港に面した路上にある簡素な「日泰食堂」。香港海鮮グルメとは程遠い海鮮焼き屋台のようなこの店、食堂という邦題よりも小食という原題がピッタリくるこの店には、家族とも隣人ともつかない人々が日夜集います。彼らは自然に店を手伝い、賭け事に興じ、勝手に冷蔵庫を開けて飲み物を酌み交わします。
この島独特の拡大家族的なコミュニティの中心にいるのが、肥美(フェイメイ)というユニセックスな魅力を持つ人物。
その名の通りの豊かな体躯、鋭い毒舌を吐き、香港島のデモ現場に足繁く通い、いきなり流暢な英語を話し出す。
そして何よりも、好きにならずにはいられないその満面の笑顔に完全にノックアウトされました。

​たまたま撮影期間中に香港を揺るがした2つの大きな社会的事件の影響が、閉ざされた島の共同体を描いた作品に深い陰影を与えています。
激動の時代にあっても確かにそこにある日々の営みと人々の絆に心が温かくなりました。

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さとうきび