「やっぱりマディが正しかったとしたら?」テレビの中に入りたい 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりマディが正しかったとしたら?
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ほとんど妄想みたいなことを書くが、やはりこの映画の舞台はテレビの深夜ドラマ「ピンク・オペーク」の世界なのだと思う。というか、その方が合点がいくと思うようになった。街に帰ってきたマディが言っていることの方が正しくて、オーウェンは地中に埋められているイザベルがあの変な白いジュース漬けにされて見ている悪夢の中の別の自分(『マトリックス』みたいなもん)で、マディもまた埋められたまま悪夢を見せられているタラの分身である。と、こんなことを主張するのは陰謀論とかムー的妄想に近い気はするが、そもそもの話、「VOID(虚無)」なんて名前の高校が本当にありますか?って話ですよ(あったらごめんなさい)。ほかにもあの現実が本物だと思えないフラグはあちこちに立っている。
とはいえそれは設定の解釈の話というだけのことで、いくらミスターメランコリーによって見せられている悪夢の世界が舞台だったとしても、そこで描かれる痛切さが損なわれるわけではなく、むしろ「現実と思っているからこそ抜け出せない世界」の閉塞感は、現実だろうが幻影だろうが普遍的でリアルなものであって、映画やドラマに耽溺していたいというわれわれの欲求の果てに行き着くかもしれない地獄を見せてくれたという意味でも、本当にこわい映画だし、とても勇猛な作品。
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