「3つの物語のアドバイザーとなる主人公の心情表現に対して、観客の理解力を信頼していたら、違った演出になったのかも知れません」クスノキの番人 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
3つの物語のアドバイザーとなる主人公の心情表現に対して、観客の理解力を信頼していたら、違った演出になったのかも知れません
2026.2.4 イオンシネマ久御山
2026年の日本のアニメーション映画(113分、G)
原作は東野圭吾の同名小説
クスノキの番人を命じられる青年を描いたファンタジードラマ
監督は伊藤智彦
脚本は岸本卓
物語は、都内某所
和菓子屋の製造工場で働いている玲斗(高橋文哉)は、ある日、理不尽な理由で解雇を告げられてしまう
玲斗はバイト時代の悪友・佐々木(八代拓)から悪知恵を授けられ、それを実行するものの、パトロール中の警官に見つかってしまい、あえなく逮捕されてしまった
そんな彼の元に、岩本(宮本克)という弁護士がやってきて、依頼人からのメッセージを授ける
それは「諸費用を全て援助するから、ある仕事をしてほしい」というものだった
依頼人は玲斗の叔母・千舟(天海祐希)で、彼女は大企業を育てた実業家でもあった
彼女が管理する月郷神社には大きなクスノキがあり、その楠に祈ると願いが叶うという
玲斗は話半分にそれを聞き、クスノキを訪れる人々の管理を行なっていく
彼らは新月と満月に訪れ、クスノキの中にある空洞にて「想いを預け」、それは「思い出を共有する血縁者が受け取れる」とされていたのである
映画は、スピリチュアルなものがある反面、実際にクスノキにそのような能力があるのかはわからないように描かれている
単なる思い込みのようにも思えるが、そこでは受念者が知りたくないこともたくさん流れてくるのだろう
そこで知り得た預念者の想いは受念者だけが抱えるものであり、そういった先に行動というものが生まれてくる
また、映画では「言語化される想い」と「言語化できない想い」というものが描かれていて、受け取る者がどのような心情でそれに向き合うかによって、受け取れるものが変わるとも言える
本作の特徴的なところは、転換点におけるポエトリー・リーディング(パフォーマンス:狐火)の演出であり、ここでは玲斗が変わったことを言葉に乗せて観客に伝えている
この演出が良いのかは何とも言えないのだが、クスノキ自身が言語化できないものを伝えているので、真逆のことを行なっているなあと思った
さらに、玲斗のキャラと合っているとは思えず、この瞬間だけがかなり浮いていたように感じた
いずれにせよ、アニメの方が良かったというのはなんとなくわかるものの、実写化でも作り手によっては壮大な世界観を作り出せたように思えた
ちなみに映画で描かれないものの中で、飯倉という老人が千舟の知り合いとして登場するのだが、彼女が彼の名前をそこに書いて自分が祈念にいくのには意味があるのだろう
それが彼女が独り身である理由となっていて、彼自身がその人生にエールを送ったことも理解できる
そういった部分は描かないのに、ガッツリとボエトリー・リーディングしちゃうのはバランスが悪いなあと感じた
