「なんとまあ、おしゃれな終わり方」ふつうの子ども sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
なんとまあ、おしゃれな終わり方
「ふつうの子ども」の「ふつう」は、「その環境にあったら、“ふつう”にそうなるよなぁ」のふつうで、それぞれに違った「ふつう」が描かれつつ、そのどれにも心を寄せられる作品だった。
主人公唯士役の嶋田鉄太や、母役の蒼井優がいいのはもちろんなのだが、今作は、突然、後半から出てくる瀧内公美が優勝!
全体として、中々よく練られた作品だと思った。
<ここからは、ネタバレあります>
・学校や課外の生活が、今どきのリアリティを大切に、とても自然に描かれていて好印象。
・公立小学校で、「私の毎日」という作文を宿題にして、全員があのレベルで発表できるとしたらすごすぎる面はあるが、内容のバラエティさが程よくて面白かった。
・風間俊介が、モロに小学校教諭の風情。「集団」を押し付け過ぎない、開かれた学級の雰囲気が伝わってきた。
・唯士の作文、先生にバッサリ切られてしまったけれど、当たり前に思っていたことを粒立てられる感性が伸びたら、末は星野源並みの歌詞が書けそう。
・どの親がいい悪いではなく、それぞれの親子が思っている「ふつう」が違うことが提示された会議室の場面は、特に面白かった。
・お兄ちゃんと呼んでいる時点で、半分アウトなところをちゃんと描く脚本が鋭い。
・とにかく、瀧内公美!
ビジネスの世界では有能なのだろうということを匂わせつつ、「それ、平気で子どもに言えちゃうんだ」という「とんでもセリフを言いそうな雰囲気」をビシバシ醸し出していて、素晴らしかった。思わず声を出して笑ってしまった。
・テロの起こし方がだんだんエスカレートしていく感じや、目的が自己顕示欲の方向に変わっていくのに、それを正当化する瑠璃と、ついていけなさを感じ始めても引きずられる唯士とか、ちょっと「ワン・バトル・アフター・アナザー」の感じや、かつての過激派の末路と重なった。
・相手のせいにして押し付け合わない展開が、子どもを主人公とした作品として、とてもよかった。
・ラストの瑠璃のセリフ。口の動きだけでは全然分からず、自分は唯士と全く同じで「え?」だったのだが、妻に「あれは、“はうであゆー”って、つまり“よくもまあ、ぬけぬけと人前で好きなんて言ってくれたよね”ってことだと思うよ」と解説してもらって納得。
なんとまあ、おしゃれな終わり方でしょうか。
・・唯士のことを多分好きな女の子。とっても豊かな子だなぁと思った。孫たちがあんな子に育ってくれたらうれしい。
共感ありがとうございます。
秒速5cmもそうでしたが女の子の方が数段上手ですね。
瀧内さんは筋の通った母風でしたが、意外と蒼井ママに崩されてしまいそうな気もします。
瀧内公美は「腹に一物ある女」を演らせるとホントにうまい。ただ相手が老人(「敵」)や同年輩(「火口の二人」)なら良いけれど子供相手じゃね。赤子の手をひねるっていうのはこのことです。


