囁きの河

劇場公開日:2025年7月11日

囁きの河

解説・あらすじ

2020年7月の熊本豪雨を背景に、水害の爪痕に苦しむ人吉球磨(ひとよしくま)地域の人々が明日への希望を取り戻していく姿を描いたドラマ。

熊本豪雨から数カ月後。母の訃報を聞き22年ぶりに人吉市に帰郷した今西孝之は、山が削られ、多くの家屋が流され、川の地形まで変わり果てた故郷の姿を目の当たりにする。孝之は22年間会うことのなかった息子・文則と再会するも、文則はかつて幼い自分を見捨てた父に心を開こうとしない。文則は球磨川下りの船頭を目指し修行に励んでいたが、水害後、球磨川下りの再開の目処がたたずにいた。一方、孝之の元恋人である老舗旅館「人吉三日月荘」の女将・山科雪子は半壊した旅館の再生を試みるが、夫の宏一は水害で父を亡くしたトラウマを抱え、旅館を畳んでしまいたいと考えていた。孝之の隣人・横谷直彦は、妻・さとみの希望で仮設住宅を出ることにするが……。

人吉市出身のベテラン俳優・中原丈雄が孝之役で主演を務め、孝之の元恋人・雪子を清水美砂、その夫・宏一を三浦浩一が演じる。NHK連続テレビ小説「おしん」の大木一史が監督・脚本を手がけた。

2024年製作/108分/G/日本
配給:渋谷プロダクション
劇場公開日:2025年7月11日

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映画レビュー

3.0 流域の住民にとっての球磨川

2026年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

〈映画のことば〉
「もう、お前は今日から船頭だ。ぜんぶ自分で舵は取れ。どこに向かうや。」
「最初から決めていた。初めての船頭の時は山に向かって漕ぐって。河は山から生まれ
る」

「球磨川は、熊本県南部の人吉盆地を貫流し川辺川をはじめとする支流を併せながら八代平野に至り八代海(不知火海)に注ぐ延長115㎞に及ぶ一級河川で、熊本県内最大の川であり最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の一つ」で、遊漁や稚あゆの放流も行われ
、水質も15年連続日本一になるなど、豊かで美しい川とのことです[球磨川漁業協同組合オフィシャルサイト]。

また、「(球磨川くだりは)日本三大急流のひとつ“球磨川”を木船に乗って下るアクティビティで、100年以上の歴史があります。比較的穏やかな区間を約50分かけて楽しむ「清流コース」や、人吉城址の石垣を間近で眺めることができる「梅花の渡し」のほか、冬は期間限定でこたつ舟も運行。船頭さんの声に耳を傾けながら、大自然を満喫で
きます。また、ラフティング専用のラフトボートを操りながら球磨川の急流を下る“球磨川ラフティング”も人気」とのことです[熊本県公式観光サイト・もっと、もっ―と!くまもと]。

そのように、流域の地域住民にとって、球磨川は、水産資源が豊かであるだけでなく、観光資源としても、流域地域に多くの「恵み」をもたらしてきた河であることも、確かなようです。

しかし、いったん水害(氾濫)が起こると、その豊かな河は、流域住民に対して凶暴な牙を剥き、その生活を一夜にして完膚なきまで破壊してしまう―。

その「球磨川の矛盾」「球磨川がもたらす悲哀」に関して、本作は、その球磨川自身が流域住民に対して何を囁(ささや)くのかを明確に描くところはなかったものと思いますが、少なくとも、そういう球磨川の「二面性」「反面性」を受け入れて生きて行かなければならない流域の地域住民の生活は、くっきりと描かれていたのではないかと、評論子は思います。
(本作でも、文則は、球磨川下りの船頭に生業を得て、その生活を立てようと考えている)

その意味では、充分な佳作だったとも、評論子は思います。

(追記)
本作で、孝之は、なぜ人吉球磨を出奔したのかー。
そのことについては、本作は明確に描くところがなかったと、評論子は思うのですけれども。

最初、家の中に、孝之の妻(文則の母親)の遺影がなかったことからすると、孝之は、妻とは離別であって、死別ではなかったのだろうと考えていましたが、どうやら、そうではない様子。

往時は、人吉球磨での生活は苦しかったのだろうと思います。
まだ幼かった文則を母親(文則の祖母)に預けて、生計の途を立て直すために、孝之が人吉球磨を出る(都会へ働きに出る)ことになったという「例の借金」は、おそらくは、病没した妻の生前の治療費だったのだろうと、評論子は推測しました。

一方で、孝之は、妻への看病の苦労話などから(当時は未婚であった)雪子との関係性が芽生えたものでしょうか。

そして、結果としては、交際のあった雪子を、人吉球磨に置き去りしたような格好にもなってしまっていたようです。

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
(室生犀星「小景異情」そのニ)

故郷の「居づらさ」という点では、孝之の心情も、正にそのとおりだったのではないかと、評論子は思いました。本作を観終わって。

しかし、いざ母親・和江の訃報を聞いてしまっては、矢も盾もたまらずに人吉球磨に帰郷した孝之の胸中も、理解できないことはないように、評論子には思われます。

結局のところ、孝之にとって人吉球磨は、やっぱり故郷以外の何ものでもなく、それまでは、孝之の心の中で人吉球磨への想いを封じていた「つっかえ棒」が、和江の訃報で、ポッキリと折れてしまったということなのでしょう。

孝之の、その心情に思いが至ると、胸がいっぱいになるような感情を禁じ得ません。

その意味でも、本作は充分な佳作だったと思われます。
評論子には。

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talkie

4.0 「川のささやきを聞く」

2025年7月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

今年221本目。

力任せに漕いじゃ。川のささやきを聞く。船頭は川を流れる木の葉一つで流れが分かる。そこでこの映画のタイトル素敵。

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ヨッシー

4.5 被災地の“いま”を描く、静かな問いかけ

2025年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年7月の熊本豪雨で甚大な被害を受けた、熊本県・球磨川流域。
その被災地を舞台に、失った「居場所」を自らの手で取り戻していく姿を描いた作品です。

とにかく、暗く、重く、胸が締めつけられるような映画でした。
被災直後の映像はこれまでも多く見てきましたが、「その後」をここまで丁寧に描いた作品には、なかなか出会えなかったと思います。

災害の多い今の日本で、「生きていく」ことの意味を改めて考えさせられる――。
静かながらも、強く胸を打つ作品です。今こそ多くの人に観てほしい一本でした。

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kazu50

3.5 タイトルなし(ネタバレ)

2025年7月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
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ナイン・わんわん