「これがトロンの新しい物語」トロン:アレス SadMachineさんの映画レビュー(感想・評価)
これがトロンの新しい物語
この令和の時代に普及したAIの機械学習と3Dプリントという新技術を取り入れることで、実際の現実世界とのリンクを感じさせる世界観がまず面白い。
これまでのトロンも世界の技術とともに進化してきた。オリジナルではパソコンも産まれて間もない時代に電脳空間の世界観を構築し、初のCG本格起用の映画を作り上げた。レガシーでは前作から28年の歳月を経て圧倒的に成長したCG技術によって、GRIDのサイバー空間を見事に描き上げた。
では今作のアレスはと言うと、3Dプリントによりプログラムが現実世界に来れるようになるという。なるほどそう来たか、と感心せざるを得ない。
ただその設定をメインに置いてるが故に今回は現実世界のシーンがメインで、GRID内のシーンは少な目な印象。個人的にはレガシーで描かれたサイバーな街並みが大好きだったので残念ではあるが、1,2作目はほぼGRID内で話が進むため差別化を図ったというのも理解できるし、何より現実世界までトロンの世界観が拡張されたことによる今後の展開への期待もあるので、仕方がないなと言う気持ちで納められた。
ストーリーに関しては、アレスの感情を学んでいく過程が目線や動きなどあえて明言しない形で表現されてたのが、プログラムと人の狭間にいる存在を感じさせて印象的だった。特にケヴィン・フリンとの会話で、愛に対する表現に戸惑ったのをケヴィンが認めてくれるシーンはグッとくるものがあって良かった。
逆にイヴの心情描写はもうちょっと欲しかったなという印象。車内のシーンでアレスが完璧な分析で一気に話してしまったのは、流石に急ぎ足すぎてもったいなかったと思う。もう少し妹との思い出や遺志について、イヴ本人の口から語って欲しかったところ。
また、今回は前2作の要素もかなり多めでシリーズファンとしてかなり嬉しかった。
レガシーのネオンラインの入ったスタイリッシュなデザインを踏襲してるのは、やはりトロンと言えばこのデザインじゃないとという安心感があった。ただレガシーが流線型なデザインだったのに対して、今回は機械的な角ばったデザインになってるので、メカニカルなカッコよさも感じられて良かった。
そして驚きなのがオリジンの要素もがっつり出してきたこと。序盤でアレスがMCPだと言われた時は、第1作のラスボスだったMCPが今作では主人公になるのかくらいにしか思わなかったが、終盤にアレスが訪れるケヴィン・フリンのGRID内はまさにトロン:オリジナルの世界。質感も敢えて当時に寄せてのっぺりとしていて、忠実に原点を再現しており非常に好感を持てた。"傑作"なクラシックライトサイクルに乗って割れた隙間に入っていくシーンなんて本当にそのまんまで、制作陣のシリーズに対する愛を感じれた。
全体としてこの映画は、是非ともオリジナルとレガシーも観て進化と愛を感じてほしい作品だと思う。
最後に、
「コツは手首だ。」
「共感ボタン」ありがとうございました。
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レビュー拝読させていただきました。
まるでシリーズそのものの進化を一つの生命体のように辿るようで、技術と物語の呼応、そして“プログラムと人間の境界”という永遠のテーマを、冷静に分析しながらも愛情をもって語っているのが素晴らしいと感じました。特に「3Dプリントによって現実に具現化する」という設定を“時代とリンクする必然”として捉える視点には唸らされました。
旧作へのリスペクトも過剰にノスタルジックにならず、あくまで「進化の文脈」として整理しているのが巧みで、読後に「トロン」というシリーズが単なるSFではなく“技術と人間性の記録映画”だったことに気づかされます。
最後の「コツは手首だ。」の一行も粋。論理で語り尽くした後に、シリーズを象徴する軽やかな一撃を残す構成にセンスを感じました。

