劇場公開日 2025年6月13日

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「レジリエンス」フロントライン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 レジリエンス

2025年11月14日
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鑑賞方法:映画館

コロナ禍の往時は、「今は距離をとって」が合い言葉になり、会合・集会の類(たぐい)は中止、大型商業施設も「自粛」で、休業したり、営業時間を短縮したり…。
本当に、散々たった記憶が脳裏から拭えません。

しかし、中世ヨーロッパに黒死病(ペスト)が流行した当時は、感染の収束を祈って皆で教会に集り、そのことが、いっそうの感染爆発を引き起こしていたのではなかったか―とも思われます。

それから時代を下って、令和になっていた今回のコロナ禍―。
いわゆる「三密」を避けて、少しでも感染のリスクを下げることを思いつくことのできた人類は、知恵がついて、往時よりは(少しだけ?)賢くなっていたと言えるのかも知れません。

人間は、経験から学ぶ生き物ですけれども。

こういう試練を経て、社会的動物としての「ヒト」はレジリエンス(困難や逆境への適応力、困難や逆境からの回復力)を高めて、令和の今まで生き延びて来ることができたのだろうとも、評論子は、思います。

本作の画面からも、その試練ー困惑と緊迫感、そして苦悩とか、犇々(ひしひし)と伝わってくるようにも、評論子には思われました。

新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染拡大を素材として、そのことを見事に描き切った一本としては、充分に佳作としての評価に値するものだったとも、評論子は思います。

なお、このレビューを書くについてに、後記のとおり参考にさせていただいたレビュアー・しゅうへいさんには、末筆ながらハンドルネームを記して、お礼としたいと思います。

(追記)
「災害は忘れた頃にやって来る」というのは、物理学者・寺田寅彦のことばだそうですけれども。

実は、お役所などの災害対応は、未経験の職員での対応を余儀なくされるのが普通です。
大きな災害は滅多に起こらないので、いちど大災害を経験した職員は、その後異動したり退職したりしていなくなり、いざ発災した時には、前回発災の後に異動してきた、未経験の職員ばかりでの対応を強いられるということです。

結局は、経験のない中で、経験がないなりの知恵を絞って、未曾有の感染拡大に対応しなければならないということでしょう。

その意味では「マニュアルの無い未曾有の事態に直面すれば右往左往してしまうのが官僚」というレビュアー・しゅうへいさんの指摘は、正鵠を得ているというべきでしょう。評論子も(自身を含めて)「まさに、そのとおり」と思います。

なお、医療機関の世界とて、その「ご事情」は、あまり変わらないのではないかと、評論子は思います。

(追記)
いわゆるDMATは、もちろん災害医療チームとして編成された組織ではあるのですけれども。

設立にあたって想定されていたのは、大地震や集中豪雨などの自然災害(物理的な事象を伴う災害)だったことは間違いがなく、今次の新型コロナウイルスといった、大規模感染症の流布は、「災害」として想定されていなかったことも、間違いがないことと思います。
それゆえDMAT自体、おそらくは外科医や整形外科医、救急救命士といったスタッフ中心に編成されていたことでしょう。

最近は、大規模災害時ても精神科領域もクローズアップされているようではありますけれども。

これも「社会手なレジリエンスの強化」の一場面と言えるのかも知れません。

(追記)
本作については、コロナ禍のときのマスコミ報道についても、いろいろとコメントが寄せられていますけれども。
評論子も、これには苦々しい思いをした記憶があります。
ひところのテレビでは「新型コロナウィルスの致死率は季節性インフルエンザの数倍」と放送されていましたが…。
そもそも、厚生労働省の資料では、季節性インフルエンザの致死率は0.01%のオーダー(多くは基礎疾患を有していると思われる60歳以上でも0.55%=肺炎を併発して亡くなるケースが多い?)
その「数倍」といっても、もともと高が知れていたというべきでしょう。
そのことにはいっさい触れずに、ただ「数倍」とだけ喧伝(あえて「喧伝」といいます)するテレビの姿勢には鼻白む思いをしたことが、評論子には思い起こされました。

(追記)
冒頭に記したとおり、コロナ禍の当時は、街中に「今は、距離をとって」という掲示が、いたるところにありました。

昔むかし、同じクラスの女子に、思い切って声をかけてみたということが、ありました。

極度の緊張とあまりの衝撃に、アタマが真っ白になってしまい、彼女の一言一句は覚えていないのですが、要するに「今は、距離をとって」というような返事だったことを、かすかに覚えています。

それが、やおら半世紀を経てから、まるで評論子に対する当てつけであるかのように、どこに行っても「今は距離をとって」…。

公権力に逆恨みされるような心当たりは少しもないのに…と思う評論子でもありました。

(追記)
ペストはなぜ黒死病と呼ばれたか―。
ペストは中世ヨーロッパで大流行し、人口の約4分の1が命を落としたといわれています。
ペストが「黒死病」と呼ばれるのは、感染者の体に現れる症状に由来します。
ペスト菌に感染すると、リンパ節が腫れ、やがて破れて化膿し、皮膚が黒く変色していきます。特に脇の下や足の付け根に腫瘤ができ、強い痛みを伴いました。その後、高熱や全身の倦怠感が現れ、急速に悪化していきます。
このように皮膚が黒色に変わっていくため、人々は恐怖を込めて「黒死病」と呼ぶようになったのです。
[出典:『知って得しない話』北嶋廣敏・著/グラフ社・刊]

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