「沸かねぇ猿はただの猿だ」BETTER MAN ベター・マン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
沸かねぇ猿はただの猿だ
正直、レジェンド・ミュージシャンの伝記映画に飽きてきた。今後気になるのはマイケル・ジャクソンとビートルズくらい。
今年だけでも同系列は4本。一時のMCU並み。
ファンからすれば待ってました!…なんだろうけど、そうでなければ…。ましてやボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンやファレル・ウィリアムスは名前くらいは聞いた事あるけど、ロビー・ウィリアムズって…?
名前すら初めて聞いた。ファンの方には申し訳ないが、いつもながら音楽には疎いので…。どんな人…?
イギリスの誇る世界的ポップシンガー。多くの功績、記録を持つ猿人間。…猿人間?!
本作でロビーはチンパンジー姿で表されている。
これはロビーが自分を猿に例えている事からの表現だという。
ここが賛否両論の分かれ目。素顔のままで…なんて声もちらほら。私的には見事なCGとそのユニークさ、本作はミュージカル映画でもあり、『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー監督によるショーアップされたミュージカル・シーンは躍動感たっぷり。お陰で他のミュージシャン伝記より興味惹かれた。
とは言え良かったのはその表現で、話に関しては…。
“ベスト・ムービー”とはならず、タイトル通りの“ベター”であった。
イギリスのごく平凡な家庭に産まれる。
父はフランク・シナトラを敬愛し、よく2人でデュエットしたり。父からの教えは“沸かせろ”。なので子供の頃から目立つ性格であった。
両親が離婚。仕事が忙しい母に代わり祖母が面倒を見てくれた。
成長しても異端児。そんな時レコード会社のオーディションを聞き、すぐさま受けに飛ぶ。合格。
“テイク・ザット”の最年少メンバーとしてデビュー。グループはヒットを飛ばし一気に人気者へ。ロビーも変わらぬ異端児ぶりで個性を放つ。
順風満帆だったが、メンバー間との不和で脱退。
ソロで活躍するが、ドラッグやふしだらな異性関係など荒れた私生活で…ハイ、そこまで!
どうしてレジェンド・ミュージシャンの人生って、こうも似たり寄ったり?
当人の実際の話なのだからしょうがないとは言え、似た話を何度見た? またかよ。
それをどう魅せるかが監督の手腕や作品の独自性で、猿表現がそれなのだが、見慣れてくると違和感も感じるようになってしまい、特にラブシーンなんかは結構キツ…。
自身のパフォーマンスを猿に例えている事と、自身が周囲より劣っている事からの表れもあるという。
異端児で活動も私生活も派手だが、内心に抱える苦悩や劣等感は重い。ここら辺、思ってた以上にシリアス。
それらを乗り越えてのカムバック。
私自身も、序盤の斬新さ~途中飽きを経ての、クライマックスの格別のカタルシス。
劇中ロビーの楽曲もたっぷり使われるが、クライマックスで父と歌い上げるフランク・シナトラの名曲『マイ・ウェイ』に最も沸いてしまった…と言ったら皮肉かな…?
