グッドワン

劇場公開日:2026年1月16日

解説・あらすじ

父とその友人と3日間のキャンプに出かけた少女が、大人の不完全さに気づく瞬間をとらえ、大人になることの喪失感と希望を描いたドラマ。

17歳の少女サムは父クリスと彼の旧友マットとともに、ニューヨーク州キャッツキル山地へ2泊3日のキャンプに出かける。旅の間、クリスとマットは長年のわだかまりをぶつけあいながらも、ゆるやかにじゃれあう。サムはそんな彼らの小競りあいに呆れながらも聞き役と世話役を引き受け、静かに空気を読み続ける。しかし男たちの行動によりサムの大人への信頼が裏切られ、サムとクリスの親子の絆は揺らいでしまう。

映画初主演のリリー・コリアスが主人公サムを繊細に演じ、「ドラッグストア・カウボーイ」のジェームズ・レグロスが父クリス役、テレビドラマ「プリズン・ブレイク」のダニー・マッカーシーが父の友人マット役を務めた。ロジャー・ドナルドソン監督の娘としても知られるインディア・ドナルドソンが長編初監督を務め、2024年・第96回ナショナル・ボード・オブ・レビューで新人監督賞を受賞、カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)にノミネートされるなど高く評価された。ロサンゼルスのマルチメディアアーティスト、セリア・ホランダーが音楽を担当。

2024年製作/89分/G/アメリカ
原題または英題:Good One
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
劇場公開日:2026年1月16日

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映画レビュー

3.5 少女の感情の流れを実にしなやかに描写している

2026年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

観賞後、知人が「ライカートの『オールド・ジョイ』を思わせる」と語っていたが、時間が経つにつれ、なるほどその通りだなと感じるようになった。ティーン少女と父とその友人が3人チームで森に入りキャンプのひと時を過ごす。それだけといえばそれだけだが、そもそも自然を描いた映画にはマクロとミクロの目線が欠かせないもの。山や森を感じ、なおかつ水の滴りや生き物達にも目を向けるかのような観察こそが、3人の間で交わされる言葉や心理を紐解く上で重要なのかもしれない。そして何より、誰しもが通ってきた成長期に思いを馳せたい。人は必ず親に対しNOと意志表示する時がくる。少女にとって今がその時。明晰な彼女が自然と呼吸するかのように感情を研ぎ澄まし、「いま私は怒ってますよ」のサインを伝える。その一連の描写がまさに流れる川のごとくしなやかで魅力的。情けない中年男たち(しかし芸達者)の狭間で新星リリー・コリアスが際立っている。

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牛津厚信

4.5 地獄の山登り、でも下山後に吹く風はさわやかで心地よい。

2026年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

驚く

 前知識はゼロ。予告編では川のせせらぎや鳥の囀りを環境音に杉林の山並みがスクリーンを飾っていた。ので、自然の中で描かれる美しいハイキングロードムービーなんだろうな。いいね。と、着席。そして上映開始10分ほどで思う。あれ──これ、もしや地獄なのでは? うん、ツライ。……ツライね。ほのぼのとツライ、いい。とてもいいよ。

 とてもよかった。
『ブレアウィッチプロジェクト』の前半のぎくしゃくした森歩きのパートが好きですという私と同じ嗜好の友人たちへ、おススメだぞ。

 ストーリーは「50代のおっちゃん二人のテン泊登山に付き合わされる17歳の少女サムは生理2日目」。いかがでしょう。字面がもう地獄の様相を醸し出している。そう、登山って体力面が削られることで心は少し剥き出しになる。でも、安心してください。誰も死にません。『グッドワン』はホラーやバイオレンス映画ではなく、けれどもしっかりと心の流血は描かれます。その傷は浅い。しかし忘れがたく心に残る。どなたか存じませんが、映画が上手でいらっしゃいますね。

 調べたら監督であるケリー・ライカート氏は今作が長編デビュー! 両親が離婚を経て再婚し、新たな家庭環境で接したご自身の経験をヒントに「感情労働」をテーマとして描いたのだそうです。感情労働とは相手に合わせて自分の心を抑え、ときに演じること。気遣いで消費するカロリーってやつですな。

 原題の『good one』はtheが省略されている通りダブルミーニングであり、「いいこ」そして「ちょっとした冗談」といった意味があるようです。

 そしてタイトルの通り、この主人公のサムちゃんが、んまぁ~いいこ。
 山岳メンバーの「おっちゃんその①」はサムちゃんの父にあたるのですが、どうやらサムちゃんのママとは離婚済で新たな家庭も持っている様子。それでサムママの悪口や際どい話を「おっちゃんその②」である友人と狭い車内で話しておきながらサムちゃんに「大人の会話に聞き耳を立てるんじゃない」などとのたまいます。

 対してサムは「聞こえるのよ」とだけ。
 彼女が声を発するのはそのくらいで、他はこのような大人の振る舞いに対して口を開くことはありません。ただカメラは一瞬の少女の沈黙を捉え続けます。大人たちが背を向けていては聞こえない少女の「声」をカメラは映し、視聴者の心に波紋を生じさせる。

 またこのおっちゃんその②も絶妙ないや~な味加減で最高なんだ。もちろん悪人ではない。けれど例えばクィアであるサムに“多様性に理解のある俺!”というふうで「レズビアンってことはビーガンなんでしょ」と訳知り顔で偏見を叩きつけてきたりする。知ったつもりの決めつけってもしかしたら無理解とそう変わらないのかもしれない。

 こうしてイカしたメンバーたちと山登りをするサムちゃんは、体調不良をおくびも出さずにひとり彼らの食事を用意したり、その皿洗いをしたり、水を汲んでやったり、つまらん話に笑顔を作ったり、聞こえないふりをしたり。監督がサムライミだったらおっちゃん①・②は粉微塵にされているぞ。

 けれどもサムちゃんはきっと、パパや今の自分を愛していないわけではない。
「生まれ変わったらどんな人生がいいか」などと詮ないことを話し合う大人二人に聞かれて。
「この人生がいい」
 そう答える彼女の笑顔は印象的だった。

 公式HPに映る川岸の積み石が美しい。
 ハイカーたちによって記念に築かれた積み石は絶妙なバランスでそこに在り続けながらも不安定だ。ちょっとした力が加われば崩れてしまう。

 当作でも高く積み上げた「いいこ」の石は揺れ、観る者にその決壊を願わせる。多分、崩れること=ノーグッドではない。と感じるからだ。山を降りて吹く風はさわやかで、軽やかに見える一つの小石が重みをもって響く、ラストの一音が胸に残った。

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まほ

4.0 無自覚な悪意

2026年3月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

驚く

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まこやん

3.0 お花を摘んできた

2026年2月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

Catskill Mountains.
ニューヨーク州にこんな北八ヶ岳のようないいところがあるなんて····羨ましい

主人公の彼女サムはともに連れ子再婚した父とその友達(最近離婚した)と生理中なのに3日間の山岳ハイキングに行く。登山中に小用をたすことを、男性ならばキジ撃ちに行ってくるとか、女性ならばお花を摘みに行くとか言います。まぁ、隠語です。

彼女はとってもいい子。

オヤジ二人に初めて山登りに連れて行かれて、散々な目に合う思春期の少女を描いたコメディ映画かと思って鑑賞。
元々、山には慣れている様子だし、はなから拒否されない父親は普段からとてもオコナイがいいんでしょうね。
17歳のクィアの彼女にとっては、オヤジなんか好きでも嫌いでもない対象物なのかもしれないけど、デリカシーないオジサンとテント泊含めて3日間はそりゃキツいですな。
父親はともかく友達のおじさんは山は素人で、シュラフを忘れてくるぐらいで、途中でクマに襲われたり、沢で滑って死ぬのかなと期待してしまいました😎

ザックに石を入れたり、入られれたりは、若い頃に体験済みですが、娘がいないもので、正直言って、いまいちピンとこなかったです。
デリカシーない証拠ですね😅

クルマのダッシュボードにキレイなピンク色の花崗岩。なんとなくですが、グリーン・ブックの緑のヒスイを思い出していました。父娘なりのゆるしと和解のシンボルなのかと思いました。

最後の曲はとても気に入りました。この映画のオリジナル曲かと思ったら、コニー·コンバースという1974年に失踪した女性シンガーソングライターの曲で、Talkin' Like You (Two Tall Mountains)。レイシズムと戦った元祖プロテストソングライター。失踪なのか当局による抹殺なのか、とても気になります。あの友達のおじさんが山に連れてきたけど、黙っていなくなった女性がコニー·コンバース (Connie Converse)とダブります。この映画はレズビアンだったとされるコニー·コンバースにインスパイアされた、バカ男性社会に対する暗喩満載のプチ復讐映画なのかと思うと、とりわけ目立った展開もない緩やかな仕上げ方にも納得がいきます。
世の中には知られていない怖い話しを現代版の暗喩として蘇らせようとする新進映像作家の一人として、この監督の今後に大いに期待いたします。

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カールⅢ世

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