「奪えないもの」アイム・スティル・ヒア hyvaayota26さんの映画レビュー(感想・評価)
奪えないもの
137分に尻込みしてたけれどとてもおもしろかった。
声高に戦う様子は出てこないのに、不屈の精神が伝わってくる。打ちひしがれた顔で写真を撮ったりしない。
音楽の使い方がとてもいい。レコードプレーヤーから、ラジオから、ヘッドホンから、いろんなところから音楽が聞こえ、生活を彩る。
子供たちがそれぞれの年代や性格なりの感じ方で状況を捉える様子がうまい。これがこの映画を多角的にして面白くしていると思った。この子はこういう性格なんだろうなというのがちょっとした演出やセリフからうかがえる。大人になったときにもちゃんと誰が誰なのかわかるのもすごい。
写真や8ミリ映像の使い方もうまいし、文句のつけどころがない映画だった。
レジスタンスを描いた映画はたくさんあるけれど、こんなにも深く弾圧の残酷さを描いたものはなかなか思い当たらない。
暴力によって奪われたものと、暴力では奪えないものと。
収容施設が超こわい。泣いた。軍事政権側の人たちの人相がすごくてよくあんな人たち集めたなと思った。
時代や場所が違えば私も父と引き離された人生だったかもしれないなあと思い、リアルな怖さがあった。
映画の中で出てくるカエターノが軍事政権に対抗してたことくらいしか知識がなかったので、ブラジルにも酷い時代があったのだと知った。70年代、政治の季節。そんなに昔のことじゃない。
この物語はマルセロが書くことによって人々に知られ、映画になった。書くこと、記録することの強さを思う。
40過ぎて弁護士になるのもすごいし、先住民の権利擁護しててかっこいい。
ロンドンからの手紙でサウダージって言っててそういうふうにも使うんだなあと思った。
