「安楽死は、尊厳死」ザ・ルーム・ネクスト・ドア 映画イノッチさんの映画レビュー(感想・評価)
安楽死は、尊厳死
癌になりたくない! 特に日本では
今の保健医療体制では、抗癌剤はルーレット。
その薬が自分に合っているのか、効果が期待できるのかは問われないし
それを調べることさえ出来ない
たまたま効けば Lucky~! これが現実
薬は担当医によって、その病院と提携されているものだけが提供され
病院では、癌の餌となるブドウ糖を点滴される
その人の癌に合った食事も、調べてもらうことはないままに
吐き気、嘔吐、倦怠感、脱毛、痛み、朦朧とした日々が続く
激痛を抑えるために打たれる某薬によって、感覚はなくなり、家族にもちゃんと意思を伝えることも出来なくなり、延命治療の末、自分や国の大金を使って、
文字通り「眠るように亡くなっていく」そこに生き抜いてきた者の意思はない
これが、人間の最期の姿であって良いはずはない
1日も早く法律を変えなければ、明日は我が身である
自らの意思で選択した安楽死が、犯罪だという社会で大丈夫なのか
マーサのように、最期は自分で見つめ、考え、実行できる社会でありたい
いえ、そんな社会にしなくてはならない
この作品が、2021年に安楽死が合法化されたスペインの映画であることは、
世界への問題提起でもあるのかも知れない
家族や愛する人の尊厳死を受け入れる側の苦悩も、
イングリッドを見ていて、痛切に感じるし胸が締めつけられるが
「死」を忌み嫌うものとしての位置づけから、次の生への楽しい旅立ちだと
捉える考えも、今後は必要になってくる気がする
苦しむ人に寄り添い、共感し、全てを受け入れるなんて、強くないと出来ない
ただそばにいることが、当事者にとってどれ程安心できるのか
大病を経験した者には、きっと分かると思う
マーサの部屋のドアが閉まっていた(実行した)時のシーンは、必要悪?
まさに、この映画のハイライトだ
死ぬ間際にあんな大豪邸に思いつきで住めるのは、ごくごく一部の富裕層だけ
あまりにも趣味のいいアート、カラフルな服や部屋、そして調度品の数々が、
この映画からリアル感と共感を削ってる
親友の方も、1ヶ月間、仕事もしないで付き添えるなんて、庶民にはあり得ない
髪の毛も抜けていない美し過ぎる癌患者マーサ これも現実ではあり得ないけれど
それでも心に残る素敵な映画だった
見終わって振り返ると、「自由だ」とマーサが礼賛する同性愛者の2組の珍しい生き方が
核となって深海を流れていた
そして最後に、親友でもあり作家でもあるイングリッドが
詩を紡ぎつつ、エンディングへ
雪が降っている
一度も使わなかった寂しいプールの上に
森の木々の上に
散歩で疲れ果て あなたが横になった地面に
あなたの娘と私の上に
生者と死者の上に降り続く
