劇場公開日 2025年9月19日

「マグロとドーベルマン(本作には出てきません)」宝島 満天さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 マグロとドーベルマン(本作には出てきません)

2025年9月30日
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鑑賞方法:映画館

むかし吉村昭原作の「魚影の群れ」が相米慎二監督で松竹映画になり、大学時代レンタルビデオでみた。
 大間のマグロ漁師の話で、全編下北弁?に貫徹されていて、ほぼ会話内容の理解は断念せざるを得ないw作品だった。
 「宝島」も沖縄の方言の強さに閉口する向きが多いようだ。観客にすれば、やはり役者の演技を堪能したり物語の咀嚼するのに言葉がネックになるのはもったいない気がしちゃうものだろう。
 魚影の群れを運良く今年劇場で久方ぶりに再見できる機会がありその印象をいうと、言葉よりも、土地にすむひとびとの情念が伝わればよしという作り手及び俳優の覚悟をひしひしと感じた。宝島でもまっ先に思い出したのは、まさにこの情念と覚悟のことだ。
 子供の頃マンガの「ドーベルマン刑事」で、沖縄が舞台のエピソードをみて衝撃を受けた。若い女性が米兵にレイプされ血まみれで保護される話だったかもっと悲惨な結末だったかもう思い出せないが、かなり色んな話があるあのマンガのうちでも、衝撃が強かった。なぜそう感じたか長年引きずっていたほどだが、のちに分かったのは日本国内の平和には構造のカラクリがあるということ、沖縄がその重荷をほとんど担わされてきたことだ。だが分かったところで私自身が行動を変えたことなど何もない。
 この映画の形はエンタメやフィクションであっても沖縄の精神史や情念を精緻に体言し伝えることを目的にしている気がする。そのために作り手や俳優がそれぞれ国民の一人として、沖縄に対する贖罪の意をもって臨んだかは知れない。だが少なくとも興行収入がいくらとか、そこがもう眼中に入らない作品関係者ばかりだろうなとは思う。

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満天
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