「身につまされる、老いをポジティブに受け入れる重要性。」サブスタンス クリストファーさんの映画レビュー(感想・評価)
身につまされる、老いをポジティブに受け入れる重要性。
今年のアカデミー賞関連作品の中では地味な扱いなので、それほど期待していなかったが、めちゃめちゃ面白かった。
前情報を入れない派なので「デミ・ムーアが老いに抗って怪しいクスリ打って、マーガレット・クアリーと戦う?で、血で血を洗う争いで、えー、昨今の反エイジズムで言うと、デミ・ムーアが勝つんかな」くらいの知識で観てたら、落とし所がホラーで、思ってたのと全然違った。
心理面も絵面もあまりに凄惨で、夢だったら良かったのに、ってずっと思いながら見てた。
以下ネタバレ
「モンストロ・エリザスー」が出てきた時点で、ちょっと蛇足、やりすぎかな、と思ったけど、実はここからが痛烈風刺の本番だった。
中身は同じエリザベス。
そしてみんな大好きスーちゃんでもあるのに、「バケモノだ~!!」って言ってみんながパニックになって、異常なまでに攻撃してくるのが、人間の滑稽さと恐ろしさよ。
そして最後は老いも若きもモンスターも、細胞になって、塵と消える。
細胞レベルではみんな同じ。
若さや美に開放された安堵感さえ感じるラスト。
デミ・ムーアって、過去作何作品も観てるはずなんだけど、あまり印象がない。
なんか心に訴える演技がなかった。
今回は絶妙なタイミングでのこの役柄で、なんて自虐的。
アカデミー賞主演女優賞にノミネートされて良かった。
一方、対を張るマーガレット・クアリーが本当に「アメリカの恋人」という存在に相応しく、若さ弾けて可愛さ全開。
ぷりっぷりのおっぱいとおしりは、いやらしい目線ではなく、女性でも見惚れちゃう美しさ。
三白眼だしすきっ歯なのに、それがセクシーなのよね。
老いていく上で、孤独や、自分を無価値だと思う強迫観念に立ち向かう、強いメンタルが必要、と思い知らされた。
敵は自分なのだ。
そのために、柔軟な考えや自己肯定感を養い、広い視野で、他人の評価ではなく自分軸で自己実現し、老いに準備していくことは、美しさを保とうとする努力と同じくらい大切なことだ。
食事シーンや手元などにものすごく近づいているカメラワークや、文字(フォント)と使い方が印象的で効果的。
クローズアップはなんとなく生々しいし怖い。
文字の無機質な感じもなんとなく怖い。
