パッセージ
解説
2023年・第36回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門上映作品。
2023年製作/92分/フランス
原題または英題:Passages
スタッフ・キャスト
- 監督
- アイラ・サックス
- 製作
- サイード・ベン・サイード
- ミヒェル・メルクト
- 製作総指揮
- ケビン・シュナイバイス
- カテリナ・メルクト
- 脚本
- マウリシオ・ザカリーアス
- アイラ・サックス
- 撮影
- ジョゼ・デエー
- 美術
- パスカル・コンシニ
- 編集
- ソフィー・レンヌ
2023年・第36回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門上映作品。
2023年製作/92分/フランス
原題または英題:Passages
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2020年4月12日トーマスは(フランツ・ロゴフスキ)ブレーメンからの映画監督のようでパリで映画撮影をしている。それがまるで、黒澤明タイプの監督(私観)で、細かい指示を何度もし、トーマスの満足のいくまで(例えば:階段から降りてくるシーン)をさせる。それだからこそ?認められる監督になるわけだが?.....完全主義的な自己愛者の素質があるようだし、自己満足感の強いトーマスのその態度が、実生活にも表れているようだ。
トーマスの芸術的な才能が開花しているのは:芸術家としての冒険心もあり、感情もあり、リスクテイカー(a risktaker)であり、挑戦的で、創造力(想像力)でもある。また、頭の中は先を見て、先を見て、目まぐるしく回転しているようで良し悪しに関わらず動きが速い。そこに、芸術家の特徴である感覚的な、野生的な見解があり、またそれらを大事にしているようだ。スポンテニアスなところも芸術家だ。その感覚も彼はハズバンド、マーティン(ベン・ウィショー)と共有したがる。例えば、初めて、アガサ(アデル・エグザルコオプロス)と寝た時、ハズバンド、マーティンに昨日女とねたよ.......
"I had sex with a woman. .....Can I tell you about it.....I felt something hadn't felt in a very long time.It was exciting. it was something different .........You hate me, don't you......."女と寝たことを自分の夫に伝えるだけでなく、そのフィーリングを伝えたいというトーマス。このフィーリングを説明することが夫を傷つけるということより、芸術的な価値、経験、興奮であり、自分の心の変化を感じているから説明したいということだ。芸術とは新しい経験から生み出されるようだ。マーティンの心は穏やかではない。そして、ゲイ同士が別れるのは、一方が女性との性の経験で特別なフィーリングを感じ取ったときだとマーティンは言ってるようだ。この映画を見始めた時、これがテーマだと思った。マーチンの場合はゲイ、トーマスはアガサとの関係から自分のアイデンティティーに問題意識を持っていくのがテーマかと。いや、期待感は外れた。テーマは違う。だって、『passages』だから、人間が通過する道のように感じる。これが、トーマス(アガサ、マーチンたちの)の道sで、これからの道を考えている。
トーマスは全ての行動に、プライドが強く働いていて自己を守ろうとする。頭の中はめまぐるしく動くから、マーティンに拒否された時も、トーマスはすぐさま、アガサの教えているのにその教室に向かい、よりを戻そうとする。この世に、自分を拒否するものはいない、拒否しても絶対、戻ってくるという、自己の感情中心の......それと比例して、トーマスの出来上がった映画作品を見ていないからわからないが、こういった感覚を反映させている作品になっていると私は勝手に想像している。なぜかというと、実生活で、リスクに挑戦しているし、自分を養っているから。その結果が映画になって生まれる。しかし、トーマスの作った映画では自分がコントロールできるが、生身の人間はそうは問屋がおろさないよ。あくまで私の想像だ。
私は、最後のシーンが好きである、パリの街を自転車で、激しく乗り回したり、スピードを落としたりしながら、目にうっすら涙を浮かべ、何か考えているように見せているシーンが大好きだ。トーマスのような自己顕示欲の強い人にとって、『内省』の困難さ。特に、マーティンとアガサから否定された困難さは初めての経験となるようだ。これは困難なはずだ。そのシーンを監督は上手に描いている。トーマスはどんな決断をするのだろうか。私たちにその後は任されている。ヴィム・ヴェンダース監督の『Perfect Days 』も主人公平山のこれからを私たちの決断に委ねている。また、グレゴリー・ホブリット監督の真実の行方(1996)Prmal Fear は弁護士のこれからの言動・行動に新たな息吹が潜んでいる。こういう、終わりから、つまり、視聴者が判断するわけだが、起承転結のメンタリティーでこの映画を鑑賞すると『自業自得だ』『このクソ野郎、いいきみだ』という結論に陥ってしまうかもしれない。こういう、試行錯誤の内省は人間にとって大切だが、なるべくならその過程を通りたくないね。しかし、多かれ少なかれ、人生のいつの時代になるかわからないけど、衝撃的な『passages』があるわけだ。