「モノクロ映像がもたらす閉塞感。」TATAMI あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
モノクロ映像がもたらす閉塞感。
2019年の東京で開かれた世界選手権で、イランの男子選手がイスラエル選手との決勝戦を棄権した実話にインスパイアされた作品であるようだ。ちなみに映画に出てくるWJFという組織は存在せず本当の柔道の国際連盟組織はIJF。
ジョージアの首都トビリシで開かれた女子柔道世界選手権で60kgのクラスに出場したイランのレイラ・ホセイニ。(しつこいようだが補足すると60kgというクラスはなく63kgとなる。北京で金メダルをとった谷本歩実さんのクラス)ガンバリ監督と二人三脚で序盤順調に勝ち上がるが、イスラエル選手と対戦することを恐れる本国から棄権するよう圧力がかかる。
全編の8割位がトビリシの会場の場面でありそれも広い観客席などはほとんど映らず選手控室や関係者席、廊下など狭くて暗い場所でのシーンが多い。あとは畳の上。そしてレイラと監督が右往左往して追い詰められていく姿をスタンダードサイズのモノクロフィルムが切り取っていく。実に殺風景であり閉塞感極まりない。
二人は柔道がしたいだけ、というよりは長く努力してきた柔道で結果を出したいのである。でも国家がそれを許さない。さらにスポーツ大会でありながらヘジャブの着用をもとめられること、国際大会で外国に行く妻が夫に許可をもらわなければならない不道理も描かれる。
映画の結末としては、やはり個人は国家に勝てない、選択肢は限られている。そのために何を失ったかについては触れられないけど。
ちなみに、柔道の世界大会でありながら、日本人の選手は1人も出ません。やはり難民問題となった場合、関係のない国(積極的に関与しない国)だと思われているのかな?