ニューシネマに代表される70年代の厭世観を一変し、80年代の"強きアメリカ"を象徴していたのが、この時代の"あきらめない男"。 「ロッキー」や「ランボー」、そして「ダイ・ハード」のジョン・マクレーン。「トップ・ガン」のマーベリックもまた、鍛え抜かれた身体能力で一点突破を果たした。

イケイケな80年代から一転、バブルが弾けた90年代は、否が応でも価値観の転換が迫られた。体力勝負の"あきらめない男"にとってはまさに冬の時代。コツコツと積み上げていく堅実性が時代のキーワードとなった。「ショーシャンクの空に」のアンディや「ザ・エージェント」のジェリーなどは、その典型。その分観客の感情移入度も高まった。

長らく続く閉塞感からの脱出には、堅実性に加えて、戦略を読む大胆なアイディアも求められた。00年代には知恵と勇気の源となる、 "頭脳"がキーワードの"あきらめない男"が次々に登場。「ボーン・アイデンティティー」のジェイソン・ボーンは、従来のスパイ像を一新。「ダ・ヴィンチ・コード」では、美術が専門の大学教授ラングドンが活躍を繰り広げた。

 「マネーボール」の主人公ビリー・ビーンは、80年代の「肉体」、90年代の「堅実性」、00年代の「頭脳」という3つのスピリットをすべて受け継いだ、最新版の"あきらめない男"。元メジャーリーガーという恵まれた体躯と、「マネーボール理論」という新たなメソッドに着目する大胆なアイディア、そしてそれを貫き通す信念を武器に、《チームを改革しリーグ優勝する》という夢に向かって突き進んでいくのだ。