“戦うヒロイン”の元祖的存在が、このグロリアとリプリー。どちらも他人の助けを借りずに、たったひとりで強大な敵に立ち向かうが、それはイヴリンやアリスも同じ。マフィア達に銃をぶっ放すグロリア、自分以外がエイリアンにすべて殺されてしまっても、最後までサバイバルを諦めないリプリー、2人のタフさ、クールさは、しっかりイヴリンとアリスにも受け継がれている。

 だが、そんな男顔負けのタフさの裏に、実は子どもを愛するやさしい心を秘めているのが80年代ヒロインの特徴的なところ。子ども嫌いだったグロリアもやがて少年と心を通わせ、リプリーは続編では幼い少女ニュートを保護するという“守る”ための戦いを繰り広げる。ソルトも近所の幼い少女の安全を意識し、アリスも前作で別れた少女Kマートのその後を気にかけている。ただ強いだけではなく、優しい心は戦うヒロインの必須条件なのだ。
 90年代のヒロインたちの戦いは、自分の気持ち=“想い”のためだった。サラ・コナーは愛する息子を守るために戦闘能力を磨き上げ、暗殺者ニキータは恋に落ち、エレンは父の無念を晴らすため、そしてサマンサは家族との暮らしを取り戻すために戦った。それはイヴリンとアリスも同じ。イヴリンは何より愛する夫を取り戻すことを優先するし、アリスの望みは巨大企業の束縛から逃れ、自由に生きていくこと。自らの想いに純粋だからこそ、ヒロインたちはより強くなり、いっそう美しく輝くのだ。

 また彼女たちが、戦闘に関するプロフェッショナルの技術を身につけだしたのもこの頃。この点は、イヴリンとアリスにもしっかり受け継がれている。イヴリンは工作員としてのテクニックを駆使して監視カメラをあざむき、アリスは最新兵器の扱いはもちろん飛行機の操縦までやってのける。
 00年代のヒロインは、もはや主体的に、自ら戦いを求めていく姿に変貌した。ララ・クロフトは冒険を求める秘宝ハンター、ボスのチャーリーが率いる3人のエンジェルたちは、スリルを求めて私立探偵として事件に身を投じる美女たちだ。ザ・ブライドは仇討ちという目的を持って登場するが、元々は隻眼のエル、オーレン石井、GOGO夕張ら美しき殺し屋たちと同じく、自らの腕を磨き、その腕を振るうことを誇りにする女だった。そんな彼女たちは、戦いの中にいるほうが自然といっていい。だからこそ、その周囲には常に戦いが巻き起こるのだ。

 そして、イヴリンとアリスもまた、彼女たちと同類。2人が巨悪の陰謀を解明しようとするのだから、その悪は彼女たちを狙わずにはいられなくなる。ヒロインの存在自体が戦いを招く──そんな見方をしたくなるくらい、彼女たちが超人的なスキルを発揮する姿は、誇りと美しさに輝いている。
 「ジェイソン・ボーン」シリーズの登場で、スパイ映画の表現はリアリズムがきっちり重視されるように進化した。その影響を受けて、ダニエル・クレイグの「007」新シリーズも生まれた。この進化に沿って、「ソルト」のイヴリンも同じリアル路線。高架を疾走する自動車の屋根から下の道路を走る自動車に飛び移るなど、手持ちカメラが大活躍のアクション演出&俳優自身によるスタントと、リアルなアクションが観る者を連打する。
 人体実験により強大な力を持つようになった点で、アリスはスーパーヒーローたちと同じ存在といえるだろう。彼らの超人的能力を表現するには、通常のアクション映画以上の過激なビジュアル演出が必要。「バイオ」のアリスも同様で、高層ビルの屋上からロープ1本握ってゾンビが群がる地上にジャンプするなど、常人をはるかに超えるアクションが展開。男性ヒーローとはひと味違う、女性美を兼ね備えた華麗な動きが光る。

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