公開作目白押しで日本映画が再ブーム パリの日本映画祭と仏配給会社が提携するイベントに「ルノワール」早川千絵監督【パリ発コラム】
2025年8月31日 15:00

8月のバカンス時期は例年、フランス映画がパッとしないものの、この夏頑張っているのが日本映画だ。7月から秋にかけてはことさら、日本映画の公開作が目につく。
7月に公開された五十嵐耕平の「SUPER HAPPY FOREVER」(2024)を皮切りに、8月に山口淳太の「リバー、流れないでよ」(2023)、9月に黒沢清の「蛇の道」(2024)、ともに今年のカンヌ組だった早川千絵の「ルノワール」(2025)と、川村元気の「8番出口」(2025)。加えてスパイク・リーが新作「Highest 2 Lowest」で元ネタにした黒澤明の名作「天国と地獄」も、4K修復版となって劇場再リリースされる。さらに10月には松永大司の「エゴイスト」(2023)が控える。やや「時差」がある作品も混じっているが、これだけバラエティに富んだ作品が配給されるところがすごい。食やデザインなども含めた日本文化全体に対する興味にも後押しされ、邦画再ブームといってもいいぐらいだろう。

そんななか「ルノワール」のプレミア試写会が、ジャック・タチ監督がネーミングしたことで知られるパリの映画館、L’Arlequinで開催され、次回作の脚本執筆のためのレジデンシーにより短期滞在中の早川監督が登壇した。会場は9割方埋まり、熱気にあふれた。この時期にしては大健闘である。早川監督は、「わたしはパリの映画館がとても好きで、本作をパリで仕上げ中に、映画をたくさん観に行きました。どんなに小さな映画でも、昔の映画でも、どこの国の映画でも、必ずお客さんが列をなしていて、その映画への情熱を見て、わたしは映画を作っているものとしてとても勇気づけられました。今日、こんな歴史のある映画館で本作を上映していただけてとても幸せです。ありがとうございます」と挨拶した。
さらに終映後には批評家ディミトリ・イアニを司会にトークを開催。早川監督は本作のきっかけと11歳の主人公フキについて、「今回は前作『PLAN 75』とまったく異なるアプローチをしたいと思い、自分で説明のつかない感情について語りたいと思いました。本作は、物語自体はフィクションですが、自分の子供の頃の体験からインスパイアされています。父もわたしがフキと同じぐらいの年齢のときに癌を患い、それから10年ほど闘病していて、そのそばでわたしはずっと暮らしていたので、その体験が参考になっています」と語った。
また、相米慎二監督の「お引越し」からの影響を尋ねられると、「中学校のときに『台風クラブ』を初めて観て、この映画監督が好きだ、と強烈に思い、相米監督の名前をノートに記した、初めての監督だったんです。『お引越し』は高校生のときに観て、こんな映画を撮りたいとずっと思っていたので、影響がないわけがないという感じです(笑)。ただフキの人物造形はわたし自身の影響があって、自分も子供のときによく何を考えているかわからないと言われていたので、それに近いと思います」と説明。フキ役の鈴木唯との仕事やインティマシー・コーディネーターを付けたことなども語った。

観客からは音楽の付け方や、題名について質問があがった。「映画と関係ない題名を付けたかったのですが、80年代、西洋の絵画のコピーを生産するのが日本で流行り、自分の家にもありました。西洋文化に対する憧れがあり、そこに追いつこうとして日本が頑張っていた、ある意味無邪気な時代であり、それに対する郷愁があってつけました。でもカンヌで批評家の方から、『印象派はいろいろな色彩を用いて、それで全体の絵が立ち上がっているように、この作品もさまざまな小さなエピソードがあり、それによって全体が成り立っている。印象派のような作品で、そこから題名が浮かんだのですか』と言われ、たしかにそうだと納得して、あながち間違った題名ではなかったのだと実感しました」と明かした。
今回はパリの日本映画祭として知られるキノタヨとフランスの配給会社が提携した初の試みで、監督を招いて上映後のトークをおこなう#-kino-Rencontreの1回目。キノタヨのディレクターであるヌシャ・サン=マルタンも、「この時期で人が集まるか心配だったが、盛況でよかった。できればこれを機に今後も企画を続けていきたい」と意気込みを見せる。日本の監督たちが観客と直接交流を持てる機会として、ぜひシリーズ化して欲しいものだ。(佐藤久理子)
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