劇場公開日 2022年6月24日 PROMOTION

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ベイビー・ブローカー : 特集

2022年6月13日更新

【人生ベスト映画を更新する】是枝監督×ソン・ガンホ
赤ちゃんを高く売る、それだけのはずだった… 事件と
思惑が絡み、観客を衝撃的な感動へ導く“名作”誕生

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年に何本か、強烈に「観たい」と衝動に駆られ、映画館へ転がりこむ類の作品がある。6月24日から公開される「ベイビー・ブローカー」は、まさにそんな一本である。

監督はアカデミー賞(外国語映画賞)にノミネートされた「万引き家族」などの是枝裕和。そして主演は、「パラサイト 半地下の家族」などで知られる唯一無二の名優ソン・ガンホ。

終映後、「人生ベスト映画のひとつ」と感じる人は少なくないはず。事実、映画.com編集スタッフ一同はそんな思いを抱いた。

この特集では、「ベイビー・ブローカー」のあらすじ、キャストなどの基本情報から、鑑賞したレビュー・評価も交えて解説。次に観る作品選びの参考や、鑑賞後の深掘りなどに活用してもらえれば幸いだ。


【予告編】是枝監督×ソン・ガンホの時点で鑑賞は確定

【見どころ】衝撃の物語、名監督×名優、世界的評価
何もかも捨てて絶対に観たい“大注目作”がついに公開

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[物語が段違いに面白い]始まりは“赤ちゃんポスト” サスペンスのスリルも加わり、やがて心震える感動へ…

作品選びのポイントとして、最も重要な要素のひとつが物語だ。本作「ベイビー・ブローカー」は、強烈に興味をそそる物語を携えている。あらすじはこうだ。

“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を横流しし、マージンを稼ぐベイビー・ブローカーの男2人、サンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)。ある雨の夜、2人は監視カメラの映像を消し、若い女性ソヨン(イ・ジウン)が預けた赤ん坊をこっそりと連れ去るが、翌日思い直して戻ってきたソヨンに疑われ、なりゆきから一緒に養父母探しの旅に出る。赤ちゃんをできるだけ高く売る。それだけの旅は、やがて予想外の方向へ……。

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特徴は、自らの手で育てられない赤ん坊を匿名で預けることができる“赤ちゃんポスト”が持つ社会性と、是か非かの問題提起、それを取り巻く人間模様。そこへ殺人事件にまつわるサスペンスが加わり、映画の醍醐味とも言える面白さと様々な感情の波が全編で持続していく。

ネタバレになるため当然、詳述は避けるが、クライマックスは魂を震わせる。もはやショッキングとさえ言える感動が、この作品には詰まっているのである。

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[期待しかないタッグ]「万引き家族」是枝裕和×「パラサイト」ソン・ガンホ! 約束された極上の映画体験を

次にスタッフとキャスト。まさかこんなタッグが実現するとは! 製作発表の段階からワクワクが止まらなかったが、ついにその全貌を観ることができるのだ。

監督は「そして父になる」「万引き家族」など、近年は「血の繋がりと社会問題」を中心に描き、いまや世界的監督となった是枝裕和。主演は「グエムル 漢江の怪物」「パラサイト 半地下の家族」などで知られ、彼だけにしか醸し出せない独特の存在感が世界中を魅了する名優ソン・ガンホ。

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おいそれとは観ることができない2人のコラボに加え、「MASTER マスター」のカン・ドンウォン、是枝監督が2009年に手がけた「空気人形」に主演したぺ・ドゥナや、アーティスト“IU”として活動するイ・ジウン、「梨泰院クラス」のイ・ジュヨンら、実力と人気と勢いを兼ね備えた多士済々が名を連ねる。

演出と芝居。最高に最高が重なる瞬間。極上の映画体験は、もはや約束されたようなものだ。

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[すでに評価も世界的]カンヌ映画祭で絶賛の嵐! “今、最注目の作品のひとつ”を早く観よう――

世界三大映画祭のひとつ、第75回カンヌ国際映画祭。コンペティション部門に出品された「ベイビー・ブローカー」は高く評価され、ソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。韓国人初という快挙を成し遂げた。

さらにエキュメニカル審査員賞(人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる)にも輝き2冠に。公式上映では12分超のスタンディング・オベーションが起き、審査委員長からは「この映画は、血のつながりがなくても家族が存在できることをとても親密な方法で示してくれる」などコメントが寄せられた。

日本公開を前にして、海外からの絶賛評がやまない……万難を排して、いち早く鑑賞してほしい。

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【映画.comレビュー①】編集部も超期待→総出で鑑賞…
実際に観た感想は?「人生ベストを更新しなければ」

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では、実際のところ本編の仕上がりはどうなのだろうか? 映画.com編集部大注目の作品であり、期待のあまり総出で観てきたので、その感想をここに抜粋して記述していこう。


●男性編集者A(30代前半)の場合…「魂の柔らかいところを押してくる」

記事冒頭にあるみたいに、本当に転がるように試写室に駆け込んだ。普段は“感動作”はあまりピンとこないのだが、「ベイビー・ブローカー」はワケが違った。予告編から物語に惹かれ、何がなんでも本作を早く観たかったのだ。

実際に観ると、名作の予感は見事に的中した。是枝監督は本作で、「擬似家族=まがいものの共同体」が、時に「本物の家族=伝統的な共同体」を凌駕する強い結びつきを持ってしまうことを、またも感動的かつ極めて人間的に描いてみせた。

象徴的だったのが、赤ちゃんポストに我が子を預けた若い女性ソヨンが、電気を消してあることを呟くシーン。涙が心の底から溢れ、目を伝ってこぼれ落ちるような感覚に陥った。

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そして、時折り刺すようなスリルが潜んでいるので油断ならない。さらに中盤から終盤にかけては、登場人物たちが優しく寄り添い、時に切なく別離しまた寄り添い、もう一歩を踏み出そうと生き、それを認める、そんな姿が魂の柔らかいところを押してくる。

鑑賞後、うまく立ち上がれなかった。人生ベスト映画のリストを更新しなければ。劇場公開されたらあと何回観よう、なんてことを考えながら、しばし呆然としていた。


●女性編集者B(20代後半)の場合…「母の顔が浮かび、泣きそうになった」

劇場から出る足取りがついつい重たくなるのは、ずっと深い余韻に浸りたいから……。是枝監督の作品を観るとほぼこうなってきた私ですが、今回は足早に劇場を出て、すぐに母に連絡をしました。

今すぐ何かを伝えたいとか顔が見たいとか、そういうわけではないけれど、エンドロールで母の顔が浮かび、泣きそうになってしまいました。

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鑑賞中に「あ、好きだな」と思うセリフが何度も出てきたのですが、特に“傘”を用いたあるセリフが心に沁みました。これを書いている今も思い出すとちょっとホッとできるくらい、人との繋がりを感じさせる素敵な言葉。

これから先もずっと覚えていたいです。


●女性編集者C(30代中盤)の場合…「刑事たちのやり取りが最高」

私のお気に入りキャラクターは、ペ・ドゥナが演じる刑事のスジン。

赤ちゃんを売ろうと企む「ベイビー・ブローカー」たちを現行犯逮捕することに異常なまでに執着する彼女は、まるで「家族」のように互いにかばい合い、支え合う「悪人たち」の姿を観測するにつれ、自身の内面とも向き合うことになる。

ぶっきらぼうな表情の奥に隠した繊細さ。そしてそれを見抜いているような、後輩刑事(イ・ジュヨン)とのやり取りも最高。観客の視点とも重なる彼女の物語にも注目だ。

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【映画.comレビュー②】編集長・駒井はこう観た…

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特集記事の大トリに、映画.com編集長・駒井尚文によるレビューを掲載。果たしてどう観たのか?


●これは「映画を見る」以上の体験。自らの少年時代の記憶が甦る不思議な一本

この映画を見終わった瞬間「スカっとした」「面白かった」などのシンプルな感想を持つ人は、おそらくいないでしょう。私にしても、エンドロールが出た瞬間、なんとも形容しがたい複雑な感情が込み上げてきました。それも、ひとつふたつではありません。いくつもの感情が湧いてくるのです。

映画に登場するのは、子を捨てた親、親に捨てられた子、そして、捨てられた子を他人に売る大人……。みな、家族関係が不完全な人たちです。子を捨てる者がある一方、子を欲しがる者もいるので、一見、ギブアンドテイクが成立しているようにも思えます。しかし、この映画のそれは、非合法ビジネスであるところが事情を複雑にしています。

つまり、子どもに「値段」がつくのです。「4000万ウォン以下では売らない」「いや、400万ウォンの分割払いじゃなきゃ買わない」。韓国における子どもの市場価値は、瞳と眉毛の見栄えで上下するようです。

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子どもの出自や成長をめぐる話だからなのか、とにかく、見ていると、自分の少年時代の思い出が次々に蘇ってくるんです。「そう言えば、クラスの同級生にこんなやついたなあ」「あいつ、いつも先生に怒られていたよなあ」など、小学生の頃の記憶が無性に出てくる不思議な体験をしました。それは、決して悪い体験ではありません。

また「この映画は、そもそも日本で撮る企画だったのではないか?」という疑問もわきます。日本でも「赤ちゃんポスト」がありますし。しかし、少子化は日本よりも韓国の方が激しいと言われてますので、韓国側で生まれた企画なのかも知れません。

その疑問に付随して、「ソン・ガンホの役柄は、日本人俳優だったら誰が適任だろう?」というのも見ながら考えていたポイント。ところがこれ、なかなか思いつかないんですよ。あの役にハマる日本人俳優が。個人的に「ソン・ガンホ以外に適任者がいない」という結論に到った時点で、この映画の偉大さを思い知りました。

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この映画の複雑さの正体は、ソン・ガンホの役柄に象徴されています。「憎めない犯罪者」は、観客の共感を集めて止まないのです。何が正しくて、誰が悪人なのか? 明確に答を出せる人よりも、出せない人の方が、私も含めて多いのではないかと。

また、カンヌ映画祭でソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞したという素晴らしいニュースが。ソン・ガンホはカンヌでは初の男優賞で、是枝監督作品では「誰も知らない」の柳楽優弥に続いて2度目とのこと。凄いことです。これは賞レースが楽しみになりました。ソン・ガンホ、最終的にオスカーの可能性も出てきましたね。とても楽しみです。

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