劇場公開日 2021年9月23日 PROMOTION

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クーリエ 最高機密の運び屋 : 特集

2021年9月13日更新

【本当にあった世にも奇妙な実話】
スパイ経験ゼロの男がいきなりスパイに任命され、
ぶっつけ本番でソ連に潜入したら…どうなる?

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実話を映画化した作品は数多あるが、ここまで魅力的な物語は珍しい。9月23日から公開されるベネディクト・カンバーバッチ主演「クーリエ 最高機密の運び屋」は、上質な作品を求める映画ファンをとことん唸らせるはずだ。

描かれるのは、およそ60年ほど前、実際に起きた奇妙かつドラマチックな出来事。「これが実話なのか」と驚嘆させられ、脳に鮮烈な刺激が駆け抜ける、そんな逸品である。

この特集では、本作の魅力を「物語」「キャスト」「鑑賞レビュー」の3つのパートで詳述。次にどんな映画を観ようか、迷っている読者の方はぜひ参考にしてみてほしい。


【予告編】世界の運命は、この男に託された――

【とんでもない実話】平凡なセールスマンが抜擢された
“あり得ない任務”…物語がとにかく面白い!

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[あらすじ]

表向きは平凡なセールスマン。しかし裏の顔は、英国の密命を受けたスパイ――ただし、特別な訓練を受けたわけではない“素人”だった。

1962年10月、東西冷戦下。アメリカとソ連の核武装競争による対立は頂点に達し、世界中が「核戦争が起きる」と確信する“キューバ危機”が勃発した。そんな折、事態解決を急ぐ米CIAと英MI6は、1人の英国人に目をつける。

名はグレヴィル・ウィン、職業は東欧諸国に工業製品を卸すセールスマン。彼が依頼されたのは、販路拡大と称してモスクワへ渡り、ソ連の機密情報を持ち帰ってくる“スパイ任務”だった。

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用意された計画は完璧だった。ただ“ウィンにスパイの経験など一切ない”という一点を除いて。当然ウィンは「危険すぎる」と拒否。それでもCIAとMI6は「君ならできる」と謎の自信を押し付け、彼をほぼ強制的にモスクワへ向かわせた。

そこでウィンは、国に背いたGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官ペンコフスキーとの接触を重ね、核兵器に関する機密情報を西側へと運び続けるが……。

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[繰り返しですが、実話です]知らず知らずのうち“世界滅亡”を止めようとしていた男

日本ではほぼ知られていないが、“核戦争回避のために繰り広げられた戦い”という極めて興味深い実話が映画化された! それも“最高に信頼できる男”ベネディクト・カンバーバッチが主演・製作総指揮を担い、スリルとユーモアが融合した迫真のスパイ・サスペンスとして仕上がった! これが本作の最大のバリューである。

そして最大のユニークポイントが、スパイ経験が一切ないセールスマンがスパイに任命され、ぶっつけ本番でソ連に潜入するという点だ。しかもウィンは、最初は任務の詳細は知らされておらず(人に会えとだけ言われていた)、知らず知らずのうちに核戦争回避のため体を張っていた、というところが何とも言えず面白い。

もしも現代の脚本家が、フィクションとしてこのような物語を書き上げたなら「リアリティがない」とツッコまれそうなもの。しかし事実は小説よりも奇なり、驚くべきことにこれは実話だ。だからこそ本作は衝撃的であり、力強く、私たち観客の心を鷲掴みにするのである。

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【キャストの芝居がすごい】カンバーバッチ、魂の熱演
監督も超一流、スリルと感動とユーモアを完璧に調合

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もうひとつの見どころは、主演したカンバーバッチの役者魂だ。


●ベネディクト・カンバーバッチ、新たなハマり役 驚きの体重減も

TVドラマ「SHERLOCK シャーロック」の名探偵ホームズ役で爆発的人気を博し、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたカンバーバッチ。世界的人気シリーズの一作「ドクター・ストレンジ」などにも出演し、大小を問わず“自分が身を捧げたい作品に挑む”姿勢を貫く名優だ。

そんなカンバーバッチが本作で演じたのは、数奇な運命をたどることになる英国人セールスマン、グレヴィル・ウィン。ウィンは商談相手を口八丁手八丁の“戦略的ごますり”で操り倒し商品を売る、いわばセールスの鬼である。

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ジョークは常に冴え渡り、気持ちのいい男であることは一目瞭然。ぴっちりとなでつけた髪や整った口ひげ、パリッとしたシャツに仕立てのいいスーツがとても上品であり、どこからどう見ても“カンバーバッチの新たなハマり役”と感じられる。

そして圧巻は、観ているこちらが心配になるほどの体重減を敢行し撮影した“物語終盤”。体は痩せさらばえながらも、その瞳や表情に役者魂が燃えたぎるのが見える。製作総指揮も務めているだけに、この世にも奇妙な“英雄”を描く物語をなんとしても世に伝える、そんな覚悟も窺い知れる。

「役者にとってスパイ役はご馳走。本性を隠して他人になりすます場面が必ずあるからだ」。こともなげに語る本作のカンバーバッチに対し、米VARIETYは「役作りのバケモノ」と絶賛している。

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●ドミニク・クック監督、演出の名手が繰り出す“陶酔の映画体験”

演出面も非常に素晴らしい。監督はドミニク・クック、長らく舞台演劇を手がけており、緻密かつダイナミックな演出術には定評がある。2014年には大英帝国勲章を授与され、シアーシャ・ローナン主演「追想」で映画デビューを果たした名手である。

本作では人物の丹念な描写を通じ、スリルとユーモアと感動を完璧な割合で調合した魔術師的手腕を魅せる。詳細は後述のレビューに譲るが、観れば感情が縦横無尽に揺り動かされる陶酔の映画体験が味わえるだろう。

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また、撮影監督は「それでも夜は明ける」「ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた」「追想」などで知られるショーン・ボビットの手腕も光る。彼が創出するショットはどれもバチッとキマっており、例えば帰宅したウィンが別室にいる妻へ愚痴を言う様子を引きで捉えたシーンなどが印象的。日本版予告を制作する際に、配給・キノフィルムズの担当者は「あのシーンもこのシーンも入れたい……」と取捨選択に大いに悩んだという。

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レビュー/前半はシニカルな喜劇、後半は慟哭のドラマ
一人の小さな英雄を描いた、珠玉の“今観るべき映画”

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最後に、編集部員が実際に鑑賞したレビューを掲載し、この特集を締めくくろう。

核戦争を回避せよ。ソ連に潜入したのは、スパイ経験ゼロのセールスマン――。“ユニークかつ先の展開が気になる物語”を求めてやまない筆者は、あらすじの導入ですでに「面白そうだ」と期待感でいっぱいだったが、観てみたら期待をはるかに上回る内容だったのでもう大満足だった。

サスペンスとしてのスリルは全編に横溢しているが、まず印象に残るのは、ウィンがソ連に潜入する過程。これがコメディとして描かれるのである。

ウィンは突然MI6に呼び出され、一方的に「ソ連で新規顧客開拓したくない? いつも行ってる東欧と同じようなもんでしょ?」などと言われ、断れない雰囲気になり目をパチクリさせる。彼が嫌そうであればあるほど面白く見える、という「水曜どうでしょう」的な秀逸なシークエンスが続いていく。本作は徹頭徹尾シリアスなスパイものとして描くことも考えただろうが、数奇な運命に巻き込まれる人間模様におかしみを見出し、くすくすと笑えるよう方向づけた制作陣の選択を賞賛したい。軽妙なトーンは個人的にとても好みでもある。

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しかしながら、そこはやはり冷戦下の激戦を題材にした物語。時間を追うごとに徐々に(本当にいつの間にか、というくらい徐々に)深刻さを増し、やがてユーモアはスリルにすり替わっていく。重大任務のプレッシャーからウィンは次第に壊れていき、その一方で使命感に突き動かされペンコフスキーとの接触を重ねる。さらにペンコフスキーとは友情で結ばれていき……スリリングでありながら、涙腺を緩ませるシーンも多く盛り込まれており、懐の深さにも感嘆させられた。

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ちなみに本件、脚本が出来上がった過程がなかなか面白い。脚本家のトム・オコナーは、2016年の大統領選後に米ソの諜報活動の歴史に興味を持ったとしたうえで、こう語る。

「歴史を紐解くうちに、オレグ・ペンコフスキーに行き当たった。彼はアメリカでは伝説的な情報源としてよく知られていた。そしてある本に、彼への接触役がグレヴィル・ウィンという英国人だったと記されていて、それを読んだときに脚本家としてのスイッチが入ったんだ」

えてして「ふーん」で終わってしまいそうな“小さな事実”にドラマを見出す嗅覚はさすがだし、ここまで豊かな物語に仕上げた手腕も見事だ。世界はウィンのような一般人が、人知れず救っているものなのかもしれない。映画館で”新たな歴史が生まれた瞬間”を目撃できる、今観るべき良作である。(映画.com編集部O)

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