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是枝裕和監督の長編映画デビュー作「幻の光」がリバイバル上映 収益は能登半島地震被災地の輪島市に

2024年5月16日 10:00

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ポスター画像
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(C) 1995 TV MAN UNION

是枝裕和監督の長編映画デビュー作「幻の光」が、8月2日からBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で限定上映される。公開決定にあわせ、新たに制作されたポスターとチラシ画像が披露された。今回のリバイバル上映は「能登半島地震 輪島支援 特別上映」として企画され、収益から諸経費を除いた全額が輪島市に届けられる。

原作は、芥川賞作家・宮本輝氏の同名小説。能登の雄大な自然を背景に、ひとりの女性の喪失と再生を描く物語。祖母、そして夫を亡くした主人公のゆみ子。愛する人を次々と失った記憶と引きとめることができなかった悔恨を胸に秘め、ゆみ子は奥能登に嫁ぐ、新しい家族に囲まれて平穏な日々を送るが――。「生と死」「喪失と再生」というテーマを、陰影深い映像に昇華させ、ヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影に対して)を受賞。国内でも連日満席となる話題作となった。

合津直枝プロデューサーは、「当時、新人たちの映画づくりは暗礁に乗り上げていた。輪島市の協力がなければ、映画は完成していなかった」と振り返り「今こそ映画を通して輪島市に恩返しを」とリバイバル上映を企画した。本プロジェクトは、デジタルリマスターで新たに再生した「幻の光」を全国で上映し、映画に残る<輪島の風景、生活、美しさ>を伝えようとするものである。

さらに、原作者の宮本輝をはじめ、是枝裕和監督、当時助監督だった森井輝(現THE SEVEN CCO/プロデューサー)、出演した柄本明からもコメントが寄せられた。

▼「再上映にあたって」合津直枝プロデューサーからのコメント
「あれから29年になりますか…」スタッフの多くは感慨深げに言う。「『幻の光』の映画化権をください」と宮本輝邸を訪問したのは1992年、その訪問から映画公開までは4年近くの歳月を要した。監督も新人、主演俳優も新人、もとよりチームを牽引するプロデューサーである私も映画界ではズブの素人であった。その新人たちに、映画の扉は硬く閉ざされたままで、出資も配給も全く目途がたたずただ日々が過ぎていった。「この企画はあきらめるべきかもしれない」とひとり断念の旅をと、輪島に向かった。「こちらでやれることは応援しますよ」立ち寄った観光協会のHさんは軽々と言った。その瞬間から映画「幻の光」は、まぼろしでなく、現実に動き出したのだ。Hさんは我々と共に主人公の家を島市の外れの港町に見つけ出し、その廃屋を映画用に改築する大工さんを探し出してくれた。朝市組合は、全面協力を申し出てくれ、旅館や民宿はギリギリの宿泊費で撮影隊を受けいれてくれた。厳寒の撮影に冷え切った身に観光旅館の裏口から入って使わせてもらった温泉のありがたさ、婦人会による炊き出しの味噌汁の温かさは、生涯忘れることはないだろう。
そして、今年の正月のニュースに声を失った。朝市通りは消え、主人公の港町は孤立化している、という。「私たちにできることはないか」と考え抜いた結果が今回の再上映だ。映画の中にのこされた「輪島の美しさ」を多くの方に観ていただくことで、復旧支援の輪を広げよう、と。
また、新人を盛り立てようと立ち働いてくれた数十名のスタッフ、それをごく自然に支えてくれた輪島の人々、そのやさしさの数々が映画には確実に映っている。「能登はやさしや、土までも」という言葉があるそうだが、今改めて芯からそれを実感する。私は、「輪島の方々の応援がなければ、映画は完成しなかった」と確信している。
29年前の日々は遠いけれど鮮明だ。今回の上映が「美しく、やさしい輪島を応援しよう!」と声をあげてもらう機会につながれば、それは「幻の光」チーム全員の大きな喜びである。
▼原作者・スタッフ・出演者からのコメント
四十六年前「幻の光」という小説を書くために吹雪の能登の海に沿った道を歩いた。そこからたくさんの心が生まれてきたのだ。
小説家 宮本輝
自分の映画監督のキャリアは輪島から始まりました。今回の上映が、映画の中に描かれた朝市や海岸線の風景や、そこに暮らす人々の生活を取り戻す一助になれたらと強く思います。
監督 是枝裕和
映画「幻の光」には元気な、能登、輪島があります。映画は文化です。私達はもっともっと映画を観なければいけません。映画「幻の光」を幻でなく現実のものにするのは僕たちです。僕たちの力で「幻の光」を生き返らせましょう。そしてそれが復興の一助になれば。
俳優 柄本明
幻の光」撮影時は学生で3rd助監督でした。初めて経験する撮影現場で、人生で初めて輪島を訪れました。圧倒的な景色、いまだに目に焼き付いています。極寒の撮影現場に差し入れていただいたワカメスープ。本当に心も身体も温まりました。
THE SEVEN CCO/プロデューサー  森井輝

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