劇場公開日 2023年2月10日 PROMOTION

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バビロン : 特集

2023年1月30日更新

【アカデミー賞最有力候補の一角】9人の映画監督が
嫉妬、号泣、絶賛、否定、衝撃…業界に前代未聞の
“ざわめき”拡散中 あなたの感性が試される内容は、
自分の目で確かめて――

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日本の映画界がにわかに“ざわついている”。「どうやらすごい映画が試写を回り始めたらしい」という情報をキャッチし、映画.com編集部が独自に取材を敢行。すると、その震源地は2月10日公開の映画「バビロン」だと判明した。

「セッション」「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督の最新作で、出演にブラッド・ピット、マーゴット・ロビーら超豪華キャスト。ゴールデングローブ賞では5部門ノミネートされ、最優秀作曲賞を受賞した。

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さらに第95回アカデミー賞では3部門にノミネート! 賞レースをにぎわす一本であり “期待以上の映画体験”に称賛が集まっているが、同時に「賛否両論」との声も多く聞こえてくる。観る人によっては感想が180度異なり、特に「映画監督やクリエイターたちが強く共感する」との証言も得られた。これは俄然、興味がわいてくる――。

本記事では、さまざまな角度から今作の魅力と本質を明らかにすべく、9人の著名映画監督の「バビロン」評を取材し、さらに映画.com編集部も鑑賞。その評価やいかに? あえて結論を言うならば……とにかく今作を観てほしい。どうあっても、価値観は覆されるだろう。


【予告編】夢をつかむ覚悟はあるか――。

【独占取材】映画業界がざわめいている…
9人の映画監督が語る、“驚異の体験”への率直な感想

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今回、映画.com編集部では映画監督たちを試写会に招待し、本編を鑑賞してもらった。

ハリウッドの狂乱と映画への狂愛を描いた作品だが、監督たちからはどんな声が出てくるだろうか? 共鳴、絶賛、それとも……。偽りのない、率直な感想を以下に掲載していこう。

※50音順/敬称略


●犬童一心(映画監督/「ジョゼと虎と魚たち」「ハウ」など)
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ハリウッド創世記狂乱のテーマパーク。
映画に取り憑かれた者たちを一枚の巨大な壁画に閉じ込めた。
作り手の映画愛が溢れ、見ている最中数々の名作が走馬灯のように現れ消える。
残酷で甘美なラブストーリーに胸が痛むが、必死に生きた者を見つめる眼差しは優しさに満ちている。
見終わると不思議に新しい時代のエネルギーを感じて、
映画は新たなスタートラインに立ったと思わせてくれた。
チャゼル監督の第一期集大成だと思う。


●内田英治(映画監督/「ミッドナイトスワン」「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」など)
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3時間が1時間に感じた。長尺をまったく感じさせない刺激的でスピーディな映画。
サイレントからトーキーに移り変わるハリウッド黄金期の栄光と挫折。
私なら「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」とセットで見たい。
で、その後「ブギーナイツ」かな。とにかく映画愛が溢れすぎな作品でした。


●金子修介(映画監督/「ガメラ2 レギオン襲来」「デスノート」など)
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マーゴット・ロビー!演技者としての能力凄い。
チャゼル妻が監督役で出すダメ出しへの対応スバラシ!ゲロ吐かせなくても良いのに。
狂騒乱痴気パーティあれだけやったんだからセレブはもっと煌びやかに見せてからぶち壊してもいいんじゃないのか。
あと1ミリでそこに行けた感あったらもっと切な。声もハスキーでウケる展開を。


●樋口真嗣(映画監督/「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」など)
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爛熟と混沌が横溢する魔の都。
嬌声と怒号が織りなすハーモニー。
それを悪意で彩り描き切る圧倒的な映画力はもはや狂気である。
我々凡俗はその非凡なる才能の奔流に浴びて身を委ね、翻弄されるのみだ。


●樋口尚文(映画評論家・映画監督/「インターミッション」「葬式の名人」など)
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映画は魔物である。かかわる人間を酔わせ、虜にし、いつの間にかその生命と財産を吸い尽くす。
この映画はその映画の魔性を、とどまるところを知らぬ蕩尽の熱と不意に訪れる冷えた空虚がとぐろを巻く映像の祝祭を通して描破する。
そしていつしかこの映画自体が魔物と化していることに、観る者は慄然とするだろう。


●平川雄一朗(映画監督/「ツナグ」「耳をすませば」など)
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ただただ圧倒されました。
作品から溢れでるエネルギーと映画が持つ力の大きさを思い知らされたのです。
スタッフキャストの作品に対する情熱がひしひしと伝わり終始ザワザワと心揺さぶられ、映画ってこんなに自由でいいんだな、こんなスケールで羨ましいなどと思いながら、先の展開が予想できないストーリー、斬新なカメラワーク、詳細にリサーチされた衣装やメイクとセットの素晴らしさに感嘆しながら鑑賞し終え、1日経った今も余韻に浸っているという素晴らしい映画でした。
是非、劇場で体感してください。


●松居大悟(映画監督/「アズミ・ハルコは行方不明」「ちょっと思い出しただけ」など)
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夜と朝の境界線はないのに、スクリーンと客席に引かれる境界線。
時代ではなく人を描いてほしかった。1920年代ではなくて、1920年代のネリー・ラロイを。


●山田佳奈(映画監督・舞台演出・脚本/「タイトル、拒絶」「全裸監督」など)
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狂騒が狂騒を呼び、悲劇を誘う。
時代すらも出し抜いて、消え失せた栄光を再び掴もうと足掻く亡者たちはカメラの前に立ち続ける。
それが喜劇に転じているとは全く気付かずに。
これはデイミアン・チャゼル監督の鎮魂歌だ。
ラスト数秒、彼の祈りと皮肉がスクリーンに映し出された瞬間を目撃したような気がして、わたしはぐっと拳を握った。


●行定勲(映画監督/「世界の中心で、愛をさけぶ」「リボルバー・リリー」など)
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瞬きを許さない3時間。スクリーンから炸裂するエネルギーに巻き込まれるように観るハリウッドの狂乱の時代。
神童デイミアン・チャゼルが、映画の変革期を背景に、“映画とは何か”を現代に問う。
すべてを犠牲にして生き抜く先駆者たちの姿にセンチメンタルな気持ちにさせられた。


【編集部の本音レビュー】我々は絶対的に“賛”!
何としても映画館で凝視してほしい“3つの最高級”

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監督たちへの取材と前後して、もちろん映画.com編集部も鑑賞。クリエイターたちとはまた少し異なる“映画ファン目線”で、今作における「絶対に凝視してほしいポイント」をたっぷりとご紹介していこう。


●【凝視ポイント①】狂った映像とストーリー
ゴージャスでクレイジーすぎる映画業界の表と裏、すべてをさらけだす
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映画.com編集部:最初の見どころは、映像とストーリー展開。デイミアン・チャゼル監督の最新作であること、豪華キャストの共演はもちろん興味を引くが、筆者に最も刺さったのはここだった。

冒頭5分で「なんちゅうもの見せてくれてんだ」と大声を上げたくなるシーンが暴発する。「これ見せて大丈夫なのか?」と心配になる映像がこれでもかと続くが、不快感が生じるリスクを引き受けつつ、描写のすべてを“おかしさ”につなげていることは剛腕と言わざるをえない。

序盤から中盤にかけての白眉は、狂っているとしか言いようのないサイレント映画の撮影現場へ。ここは世界最高の魔法の場所であるが、同時に“イカれた場所”としても描かれており、戦争映画の合戦シーンでは、エキストラたちが本当に殺し合うのだ。チャゼル監督が演出するスピーディーかつエネルギッシュ、どこか痛みをともなうカメラワークにより、狂乱の世界へと一息に放り出され、揉みくちゃにされる。あとはもう映画の魔法に身を任せるだけだった。

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そこに登場する1人の“新人女優”、1人の“大物俳優”、そして1人の“まだ何者でもない青年”。サイレントからトーキーへと轟音を立てて変化する映画界で、3人の運命が交錯し、業界の“華々しい表舞台”と“後ろ暗い裏舞台”で生き抜いていく――。

チャゼル監督は今作で、時代と業界の表も裏もすべてをさらけ出すことに挑戦した。包み隠さないショッキングな映像とストーリーは、根底では「この時代がなければ現在の映画文化も存在しない」ことを繊細に描出する。

つまり、1920年代が主な舞台であるが“遠い国の、今の私たちと無関係な話”ではないのだ。観る間に、やっぱり映画が好きでたまらない、そんな想いが筆者の胸をじんと熱くする。チャゼル監督のこの美しく汚らわしい“傑作”は、映画好きを感情の大渦に飲み込んでいく。


●【凝視ポイント②】キャスト
ブラット・ピット×マーゴット・ロビーら世界トップ級スターの“全盛期“を観よ
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今作は“飛ぶ鳥を落とす勢いで成功をつかむ快感”を、キャラクターを通じて、観客も体感できるよう設計されている。

観客は主に3人のキャラクターに感情移入することになる。

1人目はマーゴット・ロビー演じる新進女優ネリー・ラロイだ。「大スターになる」と自信満々で、尋常でないスピードでスターダムを駆け上がっていく。心臓が踊りだすかのような音楽の数々と、キャリア全盛期を迎えるマーゴット・ロビーのオーラが混ざり合った、爆発的なエネルギーを観ることができた。

ネリーは成功をつかむが、一方で時代の変化により“消えていく者”もいる。それを大スター、ブラッド・ピットが演じている点も見逃せない。

ブラピ扮する大物俳優ジャック・コンラッドは、「老人たちのせいで今の映画界は古臭い」と言ってのける、かつての映画界の異端児。人は常に過去を批判し、進歩しようとする習性があることをも象徴している。2023年で60歳を迎えるブラピ(!)、つまりは大ベテランの域に入ってきたが、今作の熱演はこれからの“さらなる最盛期”を予感させるほどだった。

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そしてもうひとり、物語の語り部となるメキシコ人青年マニー役のディエゴ・カルバも素晴らしかった。観客はマニーを通じて1920~50年代を生きることになり、紆余曲折を経て、必見中の必見であるラストシーンに到達する……。

このように、個性的すぎるがどこか共感できるキャラクターが多数登場することも今作の特徴だ。多種多様な登場人物ゆえ、観る人によっては誰に感情移入するかが本当にさまざま。だからこそ“観る人によって評価が違う作品になっている”のだろう。あなたはどう観る? 解釈や感想を語り合うことが本当に楽しみだ。

なお2022年度のゴールデングローブ賞では、5部門にノミネートされ、最優秀作曲賞を受賞した。特に演技部門ではディエゴ・カルバ(主演男優賞)、マーゴット・ロビー(主演女優賞)、ブラッド・ピット(助演男優賞)が候補となるなど強さをみせた。


●【凝視ポイント③】デイミアン・チャゼル監督の魂
「セッション」「ラ・ラ・ランド」は今作の布石だった? 人生賭けた悲願の企画
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本特集の最後にして最大級のポイントは、デイミアン・チャゼル監督の魂というか、煮詰まった狂気と莫大なエネルギーだ。ただごとではない映像がスクリーンから放たれ、観客の肌を叩きまくる。

デイミアン・チャゼルといえば“ハーバード大学出身の秀才”で、洗練された技巧とセンスのイメージが強かった。が、まさかこんなぬらぬらした感性を強調するとは!と恐れ入った。彼の腸(はらわた)を垣間見たような気分になったし、全編通じて示唆される「どんなに時代が進歩しようとも、原始的な狂気への欲求は消えない」というテーマからは、抑圧への反発、怒りも感じる。

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チャゼル監督の全身全霊っぷりが手にとるように伝わってくるが、それもそのはず、今作は彼が「セッション」「ラ・ラ・ランド」などの実績をつくってまで実現させたかった“人生最良の企画”だったからだ(あれほどの傑作群が今作への布石だったという驚きも強い)。

と同時に、今作はチャゼル監督のチャプター1の集大成にして再出発でもあるのだろう。「セッション」では狂っていないと到達できない境地があると描き、「ラ・ラ・ランド」では痛みをともなわなければ得られないものがあると語ってきたチャゼル監督は、「バビロン」でそのさらに先を映し出してみせた。

まさに「セッション」のさらに彼方、「ラ・ラ・ランド」のさらに奥底。マーゴット・ロビー演じるネリーはしきりに「人生は最高」とつぶやくが、「まさに」と強く同調しながら、試写室をあとにした。

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