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柳楽優弥&黒島結菜、10年ぶりの再会がもたらしたもの 2人が考える“究極の愛”とは?【「夏目アラタの結婚」インタビュー】

2024年9月6日 12:00

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柳楽優弥(右)と黒島結菜(左)
柳楽優弥(右)と黒島結菜(左)

乃木坂太郎氏による大ヒット漫画を映画化したサスペンス映画「夏目アラタの結婚」(9月6日公開)で、“死刑囚に結婚を申し込む男”&“日本で最も有名な死刑囚”として共演を果たした柳楽優弥黒島結菜。面会室のアクリル越しでスリリングなやり取りを披露し、刺激的で特別な2人の関係性を見事に体現している。2014年放送のドラマ「アオイホノオ」以来、約10年ぶりに共演した柳楽と黒島が、再会がもたらしたものや、“究極の愛”について語り合った。(取材・文/成田おり枝、写真/間庭裕基


柳楽優弥、「包帯クラブ」以来17年ぶりに堤幸彦監督とタッグ
画像2(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

元ヤンキーで児童相談員の夏目アラタ(柳楽)が切り出した、死刑囚への“プロポーズ”から幕をあける本作。その目的は、“品川ピエロ”の異名を持つ死刑囚、品川真珠(黒島)に好かれ、消えた遺体を探し出すことだった。毎日、面会時間である1日20分の駆け引きに翻弄されるアラタは「ボク、誰も殺してないんだ」と真珠から告白を受け、次第に2人の結婚が予想を超える展開へと突き進む様子を描く。「TRICK」「SPEC」シリーズや、「十二人の死にたい子どもたち」などの堤幸彦が監督を務めた。

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――本作のオファーを受けた感想。ぜひやってみたいと思った理由を教えてください。
柳楽:堤監督とは17年ぶり2度目のお仕事で、またいつか監督とご一緒したいと思っていました。サスペンスでありながら、ラブストーリーでもあるという内容にも新鮮さを感じて、一度この作品に懸けてみたい、挑戦してみたいと思いました。
――堤監督とは、「包帯クラブ」以来のタッグになりますね。
柳楽:そうなんです。ご一緒できて本当にうれしかったです。当時の僕はまだ16歳くらいで、とにかく「演技って何だろう」と考えることに必死で。物事を俯瞰して見ることもできずにいました。それが僕自身もいろいろな作品を経験させてもらった上で、堤組に参加できるというのはまた格別な楽しさがあって。あの頃の自分とは違うものを監督に見せられたらいいな、という思いもありました。
画像4(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

堤監督の現場って、スピーカーが置いてあるんです。監督は基本的にベースにいて、そこで編集も行なっていて。僕らは、そのスピーカーから監督の指示を受けるんですね。「包帯クラブ」の頃からそういうやり方をされていたんですが、今回聞いたところによると「ニューヨークでウディ・アレンが撮影しているところを見かけた時に、そういうやり方をしていた」ということで。表現についてもいろいろとお話しすることができましたし、「ウディ・アレン方式だったんだ!」とやっと現場のルーツを知ることもできました(笑)。

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――ものづくりについても深いお話ができたのですね。連続殺人事件の死刑囚役を演じた黒島さんは、引き受けるには覚悟を要するような役柄だったと想像します。
黒島:主演が柳楽さん、監督が堤さんだということが決まった上でオファーをいただいたんですが、「このお二人と一緒だったら、この役も乗り越えられるんじゃないだろうか」と思えたことが、真珠役をお引き受けできた大きな理由です。かなり挑戦的な役柄なので、お二人じゃなかったら尻込みしてしまっていたと思います。また台本を読めば読むほど、「堤監督に試されているのかな?」と思ったりして。それに応えられるように頑張ろうと、気を引き締めました。
――「SPEC」シリーズの一一十(にのまえいと)役や、「十二人の死にたい子どもたち」のメイコ役など、堤監督からチャレンジングな役柄を任されることも多いように感じます。
画像6(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
黒島:そうなんですよね、癖のある役が多くて……(笑)。堤監督はいつも、それまでの私にはなかった部分を魅力的に引き出してくれる監督だと感じています。大好きな監督です。
黒島結菜柳楽優弥の目力に惚れ惚れ!
――柳楽さん演じるアラタは、気持ちのまっすぐさもとても魅力的です。観客はアラタの目線になって真珠を見つめていくことになりますが、演じる上ではどのようなことを大切にしていましたか?
柳楽:“アラタが何かをする”というよりは、真珠の言っていることが本当なのか、嘘なのかとアラタが翻弄されていくというところが、本作のサスペンスとしての面白さだと思いました。その迷いがモノローグで語られていきますが、そこでの表情は堤監督もかなりこだわっていた部分です。僕としては真珠の言動、行動にきちんと反応して、受け身でいることに徹しつつ、しっかりとアラタとしての表情を出せたらと思っていました。
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――どのような言動、行動に出るのか予測不能な真珠は、テンションや表情もコロコロと変化する役柄です。相当、エネルギーを必要とする役柄だったのではないでしょうか。
黒島:毎日、撮影が終わるとぐったりしていました(笑)。現場に入ると堤監督が「こういうふうに動いてほしいんだ」と熱く演出をつけてくださるので、日々それについて行こうと必死でした。まさに全集中といった感じだったと思います。
画像8(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

また撮影の前には、真珠の大きな特徴であるガタガタの歯並びを表現するためにどうしたらいいかという、いろいろな話し合いがありました。CGにするかという案も出ましたが、結果的にマウスピースをつけて再現しています。話しづらくもありましたが、それも真珠としてのリアルさにつながったのではないかと思っています。

柳楽:黒島さんがピエロの特殊メイクをやっているのも、すごくびっくりしました。でもあの姿も、なんだかかわいいんですよね(笑)。
――お二人の共演は、「アオイホノオ」以来のこととなりました。
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柳楽:黒島さんが演じたヒロミは、僕が演じるモユルと話している時に、肩をずっと叩いているんですよ(笑)! あれ、面白いよね。すごく好きだったなあ。
黒島:ずっと叩いていました(笑)。私はあの時、高校3年生。17歳でした。
柳楽:17歳!? そうか、10年前だもんね……。あの時はずっと黒島さんに肩を叩いてもらっていたのに、10年経った本作ではアクリル越しに出会いました(笑)。
黒島:あはは! そういうことになりますね。私にとって連続ドラマに初めて出演したのが、「アオイホノオ」でした。当時はお芝居の経験もそんなになかったので、どうしたらいいのかわからず、ものすごく緊張していて。柳楽さんとは「いつかまたご一緒したい」とずっと思っていて、今回こうして共演できてものすごくうれしかったです。10年このお仕事を続けてきて、私自身、演じるということを楽しめるようになった部分もあります。会話劇でもあり、心理戦もある本作で、柳楽さんと心のやり取りをできて本当に楽しかったです。
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――面会室でアクリル越しに対峙するアラタと真珠のやり取りは、ドキドキするほどスリリングでした。黒島さん演じる真珠は、いかがでしたか?
柳楽:黒島さんのイメージにはない役柄だと思いますが、ものすごくステキでしたね。面会室のシーンで真珠側を撮影する時には、スタッフ全員が僕のいる部屋の方に来てセッティングをすることになります。つまりアクリル越しに、真珠が一人だけポツンといる感じになるんですね。それって撮影とはいえど、孤独感を味わうものだと思うんです。そこで真珠が伏し目がちになったりすると、こちらも一気にグッと引き込まれて。ちょっと色気を感じるくらいの雰囲気があってとても魅了されましたし、黒島さんのお芝居からアラタの心情をたくさん引き出してもらいました。
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黒島:柳楽さん演じるアラタには、ものすごいエネルギーがありました。真珠としてはアラタを翻弄しなければいけないんですが、真珠が持って行かれてしまいそうになる瞬間もあって。「いけない、いけない」と思いながら、真珠役に集中して、アラタのエネルギーに引き込まれないようにしようと意識していました。あと印象的なのは、柳楽さんの目力です。アクリル越しにグッと顔を近づけることが多かったので、近づけば近づくほど目を逸せなくなるような、吸引力のようなものがありました。
柳楽:僕は完成したものを観た時に、真珠の目の表情を見て「ここまで目が動くと、伝わるものはこう変わってくるんだな」といろいろなことを感じて。改めて、目の表情って大事なんだなと思いました。真珠はとても難しい役で、話していることが「真実なのか、嘘なのかという」ことが、漂ったり、漂わなかったりする。そんな真珠を、黒島さんがとてもステキに演じていました。
柳楽優弥黒島結菜が語る、“究極の愛”
――本作はゾクゾクするようなサスペンスでありつつ、そこから「結婚とは何か」「人を愛するとは?」という純度の高い愛が浮かび上がってくる点がとても面白い映画だと思います。本作やアラタと真珠の関係性を通して、“究極の愛”について考えたこと、感じたことがあれば教えてください。
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黒島:劇中で「寂しいから一緒に生きてほしい」というセリフがあるんですが、それはとてもシンプルで、ものすごくカッコいいなと思いました。あまりいろいろと難しいことを考えずに、自分は「この人といると心地がいい」とか「寂しいから一緒にいたい」とか、それだけでいいのかなと。そのセリフを聞いた時にはすっと心に入ってきましたし、なんだかうれしい気持ちになりました。
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柳楽:たしかに、本当にいいセリフですね。相手に対して、たとえば「尊敬し合える部分がある」とかいろいろとあるかもしれませんが、「寂しいから一緒に生きてほしい」というのは究極で、最高だなと思います。そう思うというのは、きっと一緒にいて楽しいからですよね。そこから詳しく話していくことで、尊敬が生まれるのかもしれない。まずは「一緒にいたい」と思えることが、幸せなのかなと思いました。
――本作はお二人にとっても、役者業を続けていった先にある“再会の喜び”を味わった作品だと感じました。
柳楽:そうですね。堤監督とは17年ぶり、黒島さんとは10年ぶりと考えると、かなりの年月を経てお二人と作品でご一緒できました。その再会という時点でも、僕にとっては価値のある作品だと思っています。また僕はいつでも成長していたいと感じていますが、堤監督に成長を見せることができたのかなと少しだけ自己肯定できるような現場でもあったので、とても幸せでした。
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黒島:柳楽さんと再会できたこともうれしかったですし、真珠という挑戦的な役柄をやり切ったことで、役者としての自分の幅が広がったような気がしています。これまでは難しい役を受けとると怖気付いてしまうこともありましたが、「まだまだいろいろな役をやってみたい」「これを機会に何でも挑戦してみたい」と思えるきっかけになりました。
――またお二人の共演作も観てみたいです。
柳楽:何百回でも! それは言い過ぎか!
黒島:あはは!
柳楽:それくらいの気持ちでいます!

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