劇場公開日 2018年6月23日 PROMOTION

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猫は抱くもの : 特集

2018年6月25日更新

「ほんわか猫映画でしょ?」→“予想”は開始1秒から裏切られます……!
だって、監督は「ジョゼ」の犬童一心、脚本は「そこのみにて光輝く」の高田亮
“映画の遊び”と“共感性”──久々の《あの頃大好きだった、余韻を楽しむ邦画》

「癒やしの猫映画」という予想は覆される!「あの犬童監督作」のエッセンスがぎっしり
「癒やしの猫映画」という予想は覆される!「あの犬童監督作」のエッセンスがぎっしり

なりたい自分になれてない、猫と大人の再生の物語──犬童一心監督が、沢尻エリカ吉沢亮の共演で描く「猫は抱くもの」が、6月23日より公開。「ほんわかした猫映画でしょ?」と思ったら、とんでもない! そんな私たちの予想は、始まった瞬間から裏切られる。「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」の高田亮脚本で描かれる、思い通りに生きられない猫と人間が、どのようにして本当の自分と向き合うか。これは、「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「グーグーだって猫である」、犬童監督の代表作のエッセンスを受け継ぐ、映画の遊びと切なさたっぷりな1本。


とがった物語、個性的な空気感──犬童監督作が“あの頃”見せてくれた
そう、私たち映画好きが大好きだったのって“こんな邦画”だったよね?

元アイドルの沙織と飼い猫の良男、こじらせた“ふたり”が本当の自分と向き合う物語
元アイドルの沙織と飼い猫の良男、こじらせた“ふたり”が本当の自分と向き合う物語

ユーモアと優しい視線に満ちているんだけど、どこかで現実の辛さや切なさも見せつけて、温かくも切ない気持ちにさせてくれたのが、犬童監督色が匂い立つ映画たち。「ジョゼと虎と魚たち」も「メゾン・ド・ヒミコ」も「グーグーだって猫である」も、私たちが大好きだった日本映画は、全部そんな個性的な空気をまとっていたはず。本作「猫は抱くもの」にも、同じような「意表」と「等身大のこじらせた大人」と「名前の付かない新たなきずな」が詰まっている。

スーパーで働く沙織(左)と売れない画家ゴッホ(右)の出会いも、どこか幻想的
スーパーで働く沙織(左)と売れない画家ゴッホ(右)の出会いも、どこか幻想的

「自分とは違う何者か」とどうやって分かり合い、生きていくのか。「ジョゼと虎と魚たち」は、自由奔放に暮らす足の不自由な女性と、毎日を目的もなく過ごす大学生の青年の心の通い合いを描いた物語。別世界で暮らしていた男女が出会って築いた、恋に近いような名前の付け難いきずなに切ない気持ちにさせられた。今回は人間同士ではなく、「猫」と「人間」という取り合わせ……犬童監督は、最新作でどんなきずなを見せ、その世界に浸らせてくれるのか。

本作でもまた、「受け入れがたい現実」に直面するヒロインの姿が描かれる
本作でもまた、「受け入れがたい現実」に直面するヒロインの姿が描かれる

本作で、「今の自分」に納得できなくてくすぶっている主人公・沙織の姿は、「メゾン・ド・ヒミコ」に登場する、ゲイだった父親を受け入れられない主人公(名前は同じ「沙織」!)とも通じている。そんな彼女たちは、自分とは異質な存在に触れて現実と向き合い、こじらせた心を徐々に変えていくのだが、そもそも、現状に満足している人なんていない。くすぶっていることも、自分ではちゃんと分かってる。大人なら誰もが経験した事のある「格好の悪い姿」に共感しまくってしまう。

見る者を癒した「猫の擬人化」表現が本作ではより進化、洗練された表現となっている
見る者を癒した「猫の擬人化」表現が本作ではより進化、洗練された表現となっている

グーグーだって猫である」では、主人公が可愛がっていた猫が死後に人間の姿になって現れるが、今作では橋の下で猫たちが集っていると思ったら、それがやがて人間の姿=擬人化されて映し出される。オープニングから、とにかく視点が面白い。猫同士の会話も垣間見られる「猫愛」に満ちた部分もあるのだが、主人公と猫の会話シーンでは、会話が成立しているようで実はしていないというシビアな演出も(それは「沙織は都合が悪くなると僕をいないものとする」という猫の良男の台詞からも分かる)。それでも飼い主は猫を心から可愛がっているつもりなのだが、結局は人間の方が身勝手であり、猫の言葉や思いは完全には飼い主には届かない……。リアルな、人間と猫の一歩通行の愛情、切ないシチュエーションが描かれていく。


【映画.comビフォー】「これ、完全に猫好き&イケメン好き向けでしょ!?」
【映画.comアフター】「これ、映画ファンにも見てもらいたい! 見て!」

リアルで斬新、普遍的なメッセージも込められた本作に、驚きと、えも言われぬ夢見心地を感じてしまう
リアルで斬新、普遍的なメッセージも込められた本作に、驚きと、えも言われぬ夢見心地を感じてしまう

元アイドル役の沢尻エリカと猫に扮する吉沢亮の組み合わせと、モフモフの猫たちが可愛いビジュアル。そんな印象から、本作は「完全に猫好き&イケメン好きのための映画」と思っていたのは、映画.comの大きな誤算。本編をひと目見た瞬間から、「あ、この映画は違う!」と直感した。犬童監督の時点でうすうす感じてはいたが……峯田和伸コムアイ(水曜日のカンパネラ)が出演している作品が、そんなありきたりな映画になるはずもない。リアルで斬新で普遍的なメッセージも込められていて──そう、これは「映画ファンに見てもらいたい作品」!

「なりたい自分」になるためにどんなことでもやったと語る、沙織の言葉にグサッとくる
「なりたい自分」になるためにどんなことでもやったと語る、沙織の言葉にグサッとくる

可愛い猫たちの姿に「癒され映画」と予想していたら、あ、マズい、これはリアルな女子を描く映画。グサグサきた。「なりたい自分」になれた人は、世の中にどれくらいいるんだろう。なれなかった大多数の人は、そんな自分を受け入れて生きていくしかない。「きっと主人公は私」──見る人みんなもそう共感するだろう。

劇場の客席を「橋の上」と「河原」にして、野良猫たちの個性豊かなドラマが描かれる
劇場の客席を「橋の上」と「河原」にして、野良猫たちの個性豊かなドラマが描かれる

主人公の内面をどうやって表現するか?が、犬童監督のテーマだったそう。本作では演劇のような舞台装置で撮影されたシーンが登場し、「こんな撮り方面白い!」という嬉しい驚きをもたらしてくれる。何でもリアルに表現できるCG全盛の時代に、あえて逆を行くアナログ&手作り感あふれる演出が、温かみを増幅してくれる。

(左から)吉沢亮とコムアイがかもし出すほんわかしたムードが猫役にぴったり
(左から)吉沢亮とコムアイがかもし出すほんわかしたムードが猫役にぴったり

斬新さと温かみなら、シーンによって猫を擬人化=人間が演じることによって描く点も際立っている。元の猫のイメージを踏襲した個性豊かな面々の掛け合いは、まるで夢の中のような風合い。日本の実写映画で唯一の正式出品となった上海国際映画祭コンペティション部門で、この唯一無二の個性がどう評価されるのかが、楽しみ。

舞台、音楽、アニメ表現まで駆使して描かれる物語には、語りたくなる謎もいっぱい
舞台、音楽、アニメ表現まで駆使して描かれる物語には、語りたくなる謎もいっぱい

自分ならどうするだろう? 主人公の選択から自分の選択へと思いをはせたなら、その後はきっと「あれ? あのシーンはどういう意味だったんだろう?」と考え始めるはず。主人公は売れない画家と心を通わせるが、彼との出会いそのものが、現実だったのかどうか……。ラストシーンで主人公が見たものは現実? 妄想? 映画好きな人と、たっぷり話し合いたくなる。



あふれるイマジネーション&自由な姿勢に嫉妬!?
クリエイターたちが見た、犬童監督史上最大の“野心作”の中身はいかに?

ヒロインのアイドル時代の回想ほか、沢尻エリカの歌唱シーンにも注目
ヒロインのアイドル時代の回想ほか、沢尻エリカの歌唱シーンにも注目

あの頃私たちが大好きだった犬童監督作品のエッセンスが引き継がれているだけではなく、それが自由奔放な想像力とアイデアによって封じ込まれている本作に、映画監督、女優、アーティスト、マンガ家といった名クリエイターたちが、絶賛の声を寄せている。現実と虚構が入り交じりつつも、描かれる物語は誰の胸にも刺さる普遍性とリアルさを持つもの。そして猫の可愛さ──数々のコメントから犬童監督の“野心”の本質を捉え、そしてぜひ劇場で、自分の目でその中身を確かめてほしい。

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