判決、ふたつの希望

劇場公開日:

判決、ふたつの希望

解説

キリスト教徒であるレバノン人男性とパレスチナ難民の男性との口論が裁判沙汰となり、やがて全国的な事件へと発展していく様子を描き、第90回アカデミー賞でレバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされたドラマ。主演のカエル・エル・バシャが第74回ベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞するなど、国際的に高い評価を獲得した。クエンティン・タランティーノ監督作品でアシスタントカメラマンなどを務めた経歴を持ち、これが長編4作目となるレバノン出身のジアド・ドゥエイリ監督が、自身の体験に基づいて描いた。

2017年製作/113分/G/レバノン・フランス合作
原題:L'insulte
配給:ロングライド
劇場公開日:2018年8月31日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第90回 アカデミー賞(2018年)

ノミネート

外国語映画賞  
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(C)2017 TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL - EZEKIEL FILMS - SCOPE PICTURES - DOURI FILMS PHOTO (C) TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL

映画レビュー

4.5ほんのちょっとの気づき

2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

レバノン社会は複雑だ。18もの宗派が存在し多くの紛争を経て、多様な人種が暮らしている。普段は「配慮」して口にしない感情は、だれの心の中にもある。
きっかけはささいな口論に過ぎなくても、それが人種対立というフィルターを通して拡大されれば、国を揺るがす大事態になる。それほどまでにレバノン人の心の底にくすぶる何かを呼び起こしてしまうものが、映画の中に描かれている。

人間だから誰もが許せないことはある。しかし、重要なのは相手もまた自分と同じ感情を抱いていることに気がつくこと。手を取り合ったり、抱き合って和解する必要はない、ただ、相手を自分と変わらない人間だと認識することで、不毛な対立はずいぶん解消されるものだとこの映画は言っている。対立した2人の男の間に友情が芽生えたわけでもない。ただ「ああ、あいつも俺と同じなんだな」と互いに思えるようになっただけだ。
今日、世界中の対立で欠けているのはこの小さな認識ではないか。それに気づくだけで世界は随分よくなる気がする。

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杉本穂高

4.0舞台はレバノンでも、こういうことってよくある。

2018年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

難しい

配水管工事の際に起きたちょっとした暴力と差別発言のせいで、当事者である2人の男の意思に反して、事が大袈裟に膨れ上がっていく。たとえそれが、レバノンとパレスチナ、キリスト教とイスラム教の対立というとても複雑な事情を孕んでいたとしても、こういうことってよくあると思う。些細な喧嘩が、双方の意地と、そこに群がる第三者たちの"煽り"によって、取り返しがつかない事態に発展するということは。この映画が日本からは遠く離れた地域を舞台にしていながら、気がつくと誰もが法廷の傍聴席に座ったようなある種の興奮と共感を覚えるのは、そのためだ。人と人とは必ず分かり合えるはずなのに、それを邪魔する不幸で愚かな憎悪の繰り返しを、いい加減止めようじゃないか!?心が安らぐエンディングからは、そんな呼びかけが聞こえてくるようだ。

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清藤秀人

4.5法廷で争う弁護士父娘が新鮮なアクセント

2018年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

ジアド・ドゥエイリ監督は、西側や東洋の私たちがなかなかうかがい知れないレバノンやアラブ文化圏の事情を、ごく普通の人々の暮らしや体験にからめてわかりやすく伝える才人だ。フランスのアラブ人ゲットーで暮らす若者を描く2作目「Lila Says」、妻に自爆テロの嫌疑がかかるイスラエル在住の医師の苦悩を描く第3作「The Attack」は小説の映画化だが、それでもアラブの人々が決してイージーではない環境の中で、どんな風に世の中を見て、どう感じているかをいきいきと伝えている点は変わらない。

主演2人の名演は見応え十分。多くは語らず、深い怒りや憎しみを表情で伝える。2人の対立が周囲を巻き込みどんどんおおごとになっていく展開も興味をそそる。原告側と被告側それぞれにつく初老の父とその娘、弁護士親子の対決もちょっぴりユーモアがあって楽しませる。暗く重い歴史を扱っているが、後味はさわやかだ。

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高森 郁哉

4.0怒りと優しさと謝罪についてのイイ映画

2024年2月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

二人の男がちょっとしたことでトラブルになり法廷で争うことに。
初めは少々退屈かもしれない。そんなことでそこまで怒らなくても、とか思ったりね。だけど、その理由は徐々に明らかになっていくし、始まりの些細さからは想像できないほどの大きな物語に発展していくから大丈夫。
なんてったって、一番最初に、本作品はレバノン政府の見解を示すものではありませんと注意書きが出るくらいだからね。

お互いに弁護士がついたあたりから、トニーとヤーセルの思惑を超えた問題に発展していく。
内戦、難民、宗教対立、要するにレバノン国内におけるパレスチナ問題。ほじくり返せばかなり昔に端を発するこの問題は長い時間をかけてあらゆるところに分岐し、小さな問題も生み出してきた。
映画の中ではパレスチナ問題を色々な角度から取り込み、二人の些細な論争を、国を揺るがすほどにまで自然な感じで大きくした手法は素晴らしかったね。

パレスチナ問題とかよくわかんねーよ、レバノンとかほとんど知らないよ、とかいう人でも大丈夫。まあ、詳しければより楽しめるだろうし、ほんの少しの知識はあるべきだが、身構える必要はない。
なぜなら、この映画が真に素晴らしい理由なんだけど、あくまで二人の男の対立の物語であって、トニーとヤーセルがどうなるのか、この法廷劇によってどうモミクチャにされたか、そしてどのように変わり、変わらなかったのか、が観るべきポイントだからだ。

トニーとヤーセルの対立は、お互いに触れられたくない、触れてはならないものを刺激したために起きた。
それは、俺のアイデンティティーを踏み荒らすな!だったと思う。二人ともね。
理解し合えれば変化は訪れる。だって、基本的に人間は優しいものだろ?何度かホロッとさせられたからね。

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つとみ