【インタビュー】「スター・ウォーズ ビジョンズ」は、視聴者の“ビジョン”で完成する 山元隼一監督が語る
2025年10月31日 18:00

人気SFシリーズ「スター・ウォーズ」のレガシーを受け継ぎながら、日本のアニメーションスタジオの斬新な“ビジョン”を通して、正史にとらわれない自由でユニークな物語を構築する短編アンソロジーシリーズ「スター・ウォーズ ビジョンズ」Volume3が、10月29日から、ディズニープラスで独占配信中だ。
本シリーズは、日本が世界に誇るスタジオによる9つの物語で構成されており、日本の美を感じさせる繊細さ、アニメ特有の“可愛さ”、そして圧倒的なキャラクター性など、日本のアニメ文化の精神をふんだんに盛り込んだラインナップとなった。そのうちの1編である、「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」などでも知られるWIT STUDIOが制作した「The Bounty Hunters」から、山元隼一監督(「前橋ウィッチーズ」「超巡!超条先輩」)が取材に応じ、作品づくりの舞台裏を語ってくれた。(取材・文/内田涼)
本作は、“賞金稼ぎ”と“ドロイド”のコンビが魅せる冒険譚。主人公は、宇宙船に乗って、銀河を渡り歩く無法者の賞金稼ぎ・セブン(CV:ファイルーズあい)とその相棒のドロイド・IV-A4(読み:イヴァフォー/CV:杉田智和)だ。腕っぷしが強くてクールなセブンと、いつもは冷静にセブンをサポートするが、アサシンモードになると大暴れするIV-A4は相性抜群で、ありとあらゆる仕事をこなしていた。ある日、怪しい実業家から仕事を引き受けたことをきっかけに、ふたりの運命も変わっていく。作品の最後は、日本を代表するシンガーソングライターの椎名林檎が歌う楽曲「Beyond Countless Words of Truth」が彩っている。

そうですね。主人公のセブンは、子どもの頃からアウトローな世界で過ごしてきて、名前も“数字”じゃないですか。裏社会に生きながら、ジェダイに対して畏怖や憧れも持っていて。一方、ドロイドのIV-A4も、もともとは医療用ドロイドですが、ウイルスによって戦闘タイプにプログラムが書き換えられてしまったキャラクターです。
ふたりとも理想や憧れ、本来の目的があるんですが、実際には思うようにいかない。そんな二面性は「スター・ウォーズ」の重要なテーマである“光と闇”に通じるものがあって、とても面白いなと思います。
夫婦漫才みたいですよね(笑)。人間とドロイドですが、一見仲が悪くても、実は悪口を言い合えるいい関係性で、まさにバディものの王道が作れたなと思います。アニメーターさんにも、その雰囲気は大切にしてもらいました。サンドバード号のなかで、ずっと寡黙な状態もイヤですし、自然な会話を通して、キャラクターの気持ちや成長がうまく伝わればいいなと思い、演出をしていきました。
ファイルーズさんは、セブンの未熟で成長しきれていない部分を的確に表現してくださいましたし、杉田さんとは過去にもご一緒していて(「前橋ウィッチーズ」「サラリーマン山崎シゲル」)。ドロイドっぽい音声の加工はしていますが、杉田さん節が全開。台本にないセリフも随所にあって、「ここで、こんなアドリブ入れてくるんだ」と、僕らもブースで楽しませてもらいました。演技に関するディレクションはそこまで多くなくて、のびのびとお芝居をしていただきました。
『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume3 ディズニープラスにて独占配信中 (C)2025 Lucasfilm Ltd.そう思いますよね(笑)! でも、実際そんなことは全然なくて、やはり、ルーカスフィルムさん側に、日本のクリエーターに対するリスペクトがものすごくあるんです。ですから、こちらから、作品のコンセプトや絵コンテ、デザインを提出しても、基本的にノーと言われることはなかったですね。こちらから相談すれば「こうすれば、この問題は解決するよ」とアイデアもくれましたし。
強いて言えば、バイオレンスの描写で、銃の扱い方の表現が難しかったです。そのあたりは、別の表現方法を模索したりしましたが、枷(かせ)になるようなやりとりは一切なかったですね。
そうなんです。実は当初、用意していたアイデアや要素、キャラクターがもっとたくさんあったんですが、全てを詰め込むと40~50分くらいのストーリーになってしまって(笑)。ですから、今回はいったん整理して、20分ほどの作品にまとめました。「スター・ウォーズ ビジョンズ」としては長めかもしれませんが。自分自身は短編であっても、長編的な感動は生み出せると信じていて、キャラクターの過去や未来を、視聴者に想像してもらうことで、世界観も広がるなと思っています。

そうですね。日本のアニメは、いい意味でも悪い意味でも閉じられたドメスティックな環境で作品づくりがされていて、視聴者もそれを楽しんでいると思うんです。それこそが、日本らしさや魅力でもあると思うんですが……、例えば、江戸時代に浮世絵が独自に発展したように。ですが、一方で、グローバルな視点から見ると、ひとりよがりな作品になってしまう恐れもあると思うんですね。
例えば、現実社会では、いつまで経っても戦争はなくならないですよね。それでも、自分たちが「どう正しく生きるべきか?」と、「スター・ウォーズ」は問いかけているように思うんです。セブンとIV-A4もそう。厳しい現実はあるけれど、違いを乗り越えて生きていけることは、かけがえのないことですし、今回、ルーカスフィルムさんともアイデアを出し合いながら、作品づくりできたことは貴重な経験でした。
いまの時代、SNSの普及もあって、価値観が細分化していて、まさに「スター・ウォーズ」の世界だと思いますね。お互いをどうリスペクトして生きていくのか、まるで“祈り”のような作品でもあると思います。

自分たちの作品が、いろんな人たちに届くというのは純粋に嬉しいことですね。先ほど、文化や価値観の違いを乗り越える大切さのお話をしましたが、同時に、海外のファンの皆さんの感想を読むと「あっ、自分たちと変わらないんだな」って思うこともあるんです。バックグランドは違っても、共感したり、感動するところが一緒だったりするので、それはそれで不思議だなと。
はい。作品はつくっただけでは、完成ではないと思っています。たくさんの皆さんに面白がってもらって、視聴者それぞれの感想や視点、つまり“ビジョン”で完成するのではないでしょうか。「The Bounty Hunters」に関して言えば、知識がなくても楽しめる内容ですし、あえて時代設定も明確にはしていません。誰かにとっての「スター・ウォーズ」の入り口になれば嬉しいですね。
今回「スター・ウォーズ ビジョンズ」に参加して、改めてそう思いますね。誰しも自分のなかに、自分だけの「スター・ウォーズ」があって、それが文化や世代を超えて紡がれている。自分も出席しましたが、(4月に開催された)「スター・ウォーズ セレブレーション」なんて、本当にすごいファンコミュニティじゃないですか。みんなで盛り上げてきた文化である「スター・ウォーズ」の一部に、「The Bounty Hunters」がなれれば嬉しいですね。
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