「メカニック」「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」 : 芝山幹郎 テレビもあるよ

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コラム:芝山幹郎 テレビもあるよ - 第41回

2012年10月1日更新

映画はスクリーンで見るに限る、という意見は根強い。たしかに正論だ。フィルムの肌合いが、光学処理された映像の肌合いと異なるのはあらがいがたい事実だからだ。

が、だからといってDVDやテレビで放映される映画を毛嫌いするのはまちがっていると思う。「劇場原理主義者」はとかく偏狭になりがちだが、衛星放送の普及は状況を変えた。フィルム・アーカイブの整備されていない日本では、とくにそうだ。劇場での上映が終わったあと、DVDが品切れや未発売のとき、見たかった映画を気前よく電波に乗せてくれるテレビは、われわれの強い味方だ。

というわけで、毎月、テレビで放映される映画をいろいろ選んで紹介していくことにしたい。私も、ずいぶんテレビのお世話になってきた。BSやCSではDVDで見られない傑作や掘り出し物がけっこう放映されている。だから私はあえていいたい。テレビもあるよ、と。

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「メカニック」

ブロンソンとウィナー監督は本作や「狼よさらば」を含め6作品でコンビを組んだ ブロンソンとウィナー監督は本作や
「狼よさらば」を含め6作品でコンビを組んだ
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メカニックという俗語の意味を解説する場面が、映画のなかに出てくる。ひとつはゲームのディーラー(というか、賭けの細工師)、もうひとつはヒットマン(つまり暗殺者)。

「メカニック」の主人公アーサー・ビショップ(チャールズ・ブロンソン)はもちろん後者だ。映画がはじまって15分以上、彼はひと言も口を利かない。いかにも、の感じだが、当時50歳を超えたばかりのブロンソンにはぴったりの設定だ。少なくとも、年代物のワインやヒエロニムス・ボスの絵画などよりは、無愛想な沈黙のほうが彼にはよく似合う。

引退間際のそんな殺し屋が、ある若者を後継者に仕立てようとする。白羽の矢を立てられたスティーブ・マッケンナ(ジャン=マイケル・ビンセント)は、アーサーの標的となった男の忘れ形見だ。ま、この辺の因縁はよくある話といってよいだろう。

監督のマイケル・ウィナーは、ふたりに師弟関係を組ませると、堰を切ったようにアクション場面を連発する。まるで、初期の007や「マンハッタン無宿」をつなげたような展開だが、これは1970年代前半の映画だから仕方がない。あの時代の空気に首まで浸ってきた私などは、服や髪型や車やインテリアのダサさにいまさらながら茫然とする。いや、いっそ郷愁に近い感情を覚えてしまうと告白しそうにもなるが、ここは思い止まりたい。あの時代のダサさは、やはり汗をかかせる。

ただ、この映画には指摘しておきたい美点がある。それは、ブロンソンの聞き上手ぶりだ。ほかのスターが演じれば、相手役の台詞が終わるのを待ってすぐに喋り出す場面でも、ブロンソンの場合は、相手役の台詞に根気強く耳を傾けているように見えるのだ。ここは渋い。ビンセントが喋り、ブロンソンが話をじっと聞く場面の不思議なリアリティは、見逃さないでいただきたい。
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メカニック

WOWOWシネマ 10月17日(水) 14:45~16:30

原題:The Mechanic
監督:マイケル・ウィナー
製作:アーウィン・ウィンクラーロバート・チャートフ
音楽:ジェリー・フィールディング
出演:チャールズ・ブロンソンジャン=マイケル・ビンセントキーナン・ウィンジル・アイアランド
1972年アメリカ映画/1時間40分

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「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」

「X-MEN」前章の第2作「X-Men: Days of Future Past」もすでに製作準備中。アメリカでは2014年夏に公開予定 「X-MEN」前章の第2作「X-Men: Days of Future Past」も
すでに製作準備中。アメリカでは2014年夏に公開予定
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どちらかといえば、私は「X-メン」のシリーズに冷淡だった。第1作と第2作はまずまず楽しめたのだが、コミックス映画に特有の「なんでもあり」の姿勢が野放しにされているのが気になった。これはやはり安易だろう。

というわけで、私は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」の劇場公開を見逃してしまった。見たのはDVDになってからだ。

だが、見てみると、悪い作品ではない。「キック・アス」を撮ったマシュー・ボーンの監督だけにオフビートな味もちょっと混じっているし、話の捌き方に乙なところがある。

映画は、1944年のナチス収容所と62年のキューバ危機をまたぐ。44年に幼い子供だったミュータントたちが、62年には成人して大活躍する。題名が示すとおり、これはX-メンの誕生と成長を描いた映画なのだ。

そこには、人種差別とミュータント差別がからむ。超能力を利用しようとする権力の影はちらつくし、どの方向に超能力を使うかという選択の問題も浮上する。ただし、ミュータント同士の対決には、よけいな情念が盛り込まれない。ここはなかなかクールだ。

このクールな姿勢が、物語を形成する三角形の頂点をはっきりと明示する。マイケル・ファスベンダーが演じるエリック。ジェームズ・マカボイが演じるチャールズ。そしてケビン・ベーコンが扮するセバスチャン・ショー。3人とも楽しんで演じているだけに、見た目に妙な曖昧さがないし、過去の因縁や将来の混沌もはっきりと理解できる。

「私たちは社会に迎合しない。社会が私たちを尊敬するのだ」という演説も1度だけ出てくるが、ミュータントの立場を示すには、これくらいは許容範囲だろう。キューバ危機のさなか、ミュータントたちの念力でミサイルが前進と後退を繰り返す場面などは、噴き出しながらも、思わずスクリーンに見入ってしまう。
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X-MEN:ファースト・ジェネレーション

WOWOWシネマ 10月10日(水) 17:00~19:20

原題:X-Men: First Class
監督:マシュー・ボーン
脚本:ジェーン・ゴールドマンマシュー・ボーン
ストーリー:ブライアン・シンガー
出演:ジェームズ・マカボイマイケル・ファスベンダーケビン・ベーコンジャニュアリー・ジョーンズジェニファー・ローレンスローズ・バーン
2011年アメリカ映画/2時間11分

[筆者紹介]

芝山幹郎

芝山幹郎(しばやま・みきお)。48年金沢市生まれ。東京大学仏文科卒。映画やスポーツに関する評論のほか、翻訳家としても活躍。著書に「映画は待ってくれる」「映画一日一本」「アメリカ野球主義」「大リーグ二階席」「アメリカ映画風雲録」、訳書にキャサリン・ヘプバーン「Me――キャサリン・ヘプバーン自伝」、スティーブン・キング「ニードフル・シングス」「不眠症」などがある。

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