コラム：編集長コラム　映画って何だ？ - 第36回

10月30日から29時間。映画.com特別オンライン上映会開催のお知らせ

新型コロナウイルスの感染がなかなか収まらない中、日本の映画興行では「劇場版 鬼滅の刃」がもの凄いヒットを記録し、社会現象になっています。その前は「テネット」がIMAXを中心に好調な興行を繰り広げ、日本の映画業界も少しずつ復調してきている感はあります。

しかし、それでも9月の興行収入は、例年比で60％に達していませんでした（文化通信の記事による）。映画業界は、まだまだ厳しい状況が続きます。とりわけ、3月から8月の間に公開できなかった、あるいは公開したけど映画館が座席制限をしていたり、客足が戻らなかったりで予定通りの興行収入が得られなかった作品がたくさんあることは皆さんもご存知だと思います。

そこで映画.comでは、今年公開された映画の中から、名作なのに、思うような興行ができなかったものを何本か選び、今月から来年にかけてオンラインで上映会を行うことにしました。映画.comが、ユーザーの皆さまに映画本編をネットでお届けする新しい試みです。

(C)2018 FarmLore Films ,LLC

まず、1作目として選んだのは「ビッグ・リトル・ファーム」です。その名の通り、ちっぽけで偉大なカリフォルニアの農場を描いた素晴らしい映画です。今年の3月14日に公開されながら、新型コロナウイルスの第一波の影響をもろに受け、4月には緊急事態宣言で映画館がクローズしてしまったため、なかなか厳しい成績の中、映画館での興行はほどなく終了してしまいました。

実はこの映画、私が2018年のトロント映画祭で鑑賞し、配給会社シンカのスージュン社長に買い付けをすすめた作品です。トロントで鑑賞したときのレビューは、当コラムの第2回「トロント映画祭で、もっとも心を揺さぶられた映画」でも書きました。個人的にとても思い入れのある映画なのです。

飼い犬が近隣の人たちに向かって激しく吠えるので、飼い主夫婦には苦情の声が絶えません。何度も引っ越しをする羽目に。一方、夫婦には広い農場に住んで、オーガニック野菜を育て、それを使った料理教室を営むという夢がありました。

犬とともに何度かの引っ越しを経た後、夫婦は一大決心をして、ロサンゼルス郊外にうち捨てられていた、200エーカー（東京ドーム17個分）の農地を買い取り、そこに移住して開墾を始めます。もう、近隣に犬の文句を言う人は存在しません。しかし、そこで待っていたのは、想像を絶するような苦難でした。大量発生したカタツムリ、深夜に家畜を襲うコヨーテ……、心を折られそうになりながらも、夫婦は作物を育て、家畜を増やしていきます。

8年間にわたって、ひと組の夫婦が、命を敬い、自然を尊重した、真にオーガニックな農場を創り上げていく過程を描いたドキュメンタリーです。決して派手な映画ではありませんが、生き物たちの、心踊るドラマがあちこちで起こります。

是非、ご家族でご覧いただきたいと思っています。もちろんお一人でも。私たちと一緒に鑑賞しましょう。

上映は10月30日（金）の19:00から31日（土）の23:59までの29時間（好評に応え、当初の24時間から5時間延長しました）この間であれば、お好きな時間にご覧いただけます。31日（土）の15時には、オンラインでトークショーも実施いたします。私も参加して、この映画の見どころなどを語るつもりです。

チケット代は1500円。一人でも多くの方にご鑑賞いただけますと幸いです。皆さまの参加をお待ちしております。