コラム:細野真宏の試写室日記 - 第63回

2020年2月20日更新

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第63回 試写室日記 「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」。最先端のサイバー犯罪の映画がこれからのミステリー映画の主流になっていく?

2020年1月23日@東宝試写室

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本作「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」のキャッチコピーには、「日本中を震撼させた“あの”衝撃作が、“まさか”の続編映画化!」となっていることからも分かるように、2018年に公開された「スマホを落としただけなのに」は、低予算の作品ながら、興行収入19.6億円と大ヒットをしました。

私は前作では、いくつか脚本に難を感じたため紹介はしませんでしたが、映画全体としては時代性を捉えていて「及第点」には達していたので大ヒットしたのも納得はできます。

前作の「スマホを落としただけなのに」は北川景子田中圭がメインで、千葉雄大成田凌がサブでしたが、本作は、まさに前作からの流れで、冒頭部分では北川景子田中圭が“続き”としてバトンをタッチする役割でカメオ出演的に登場します。

そして、前作ではサブだった千葉雄大成田凌が本作ではメインとなり、新たに千葉雄大が扮する加賀谷の恋人として白石麻衣がメインに入ります。

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興行収入的にどうなるのかは分かりませんが、私は前作よりも本作「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」の方が良く出来ていると思いました。

リング」や「貞子」などホラー映画を得意としてきた中田秀夫監督ですが、中田監督は、むしろこの手の「SNSミステリー映画」がかなり合っていると思います。

前作「スマホを落としただけなのに」のヒットは、やはり時代性を捉えていて「自分にも起こり得ることかも」という身近でキャッチーな題材だったこともあり若者層を中心に響きましたが、スマホ時代では映画も変化すべきで、その意味では先見の明があった作品と言えるでしょう。

例えば、“3億円強奪事件の実行犯の白バイ男”が映画などの題材になったりもしますが、確かに3億円は大金であることは間違いありません。

ただ、その一方でインターネットが普及した近年では、技術革新により仮想通貨なるものが登場し、それによって580億円もの大金が一気にハッキングによって盗まれてしまう時代となっているのです。

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私も含め、多くの一般の人たちは「580億円の強奪事件」と言われてもピンとこない面がありますが、もはやそういう時代となっているので、最先端を生み出したり追うのが「映画」の醍醐味であるため本作の登場は必然と言えるわけです。

その意味で、私はハッキングなどインターネット犯罪の仕組み等がまだ表面的なことしか分かっていないので、本作の内容には非常に興味深く入り込んでいました。

しかも、SNSミステリーの内容も、なかなか凝っていて面白いのです!

そんな「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」が、いよいよ今週末2月21日(金)から公開されます。

少しだけ気になるのは、「続編」なので仕方ないのですが、タイトルの「スマホを落としただけなのに」というのは、今回はあまり関係がないところですかね(笑)。

もちろんスマホは大いに関係しているので問題はないのですが、本作は、むしろサブタイトルの「囚われの殺人鬼」の方に意味があります。

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本作「スマホ」シリーズの原作本は3作目も登場したようなので、本作が前作のようにヒットすれば、さらにシリーズ化していくと思われます。

さて、肝心の興行収入ですが、私の中では「ヲタクに恋は難しい」と同様に東宝の実写映画の期待作なので、こちらも景気よく興行収入15億円規模には行ってほしいところですが、果たしてどうなるのか注目です!

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来14年連続で完売を記録している『家計ノート2024』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2024年版では「物価高騰時代にお金を増やす方法」を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono

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