「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」。遂にゴジラと東宝が覚醒し、日本の映画業界の海外戦略が見えてきた? : 細野真宏の試写室日記

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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第30回

2019年5月29日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第30回 「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」。遂にゴジラと東宝が覚醒し、日本の映画業界の海外戦略が見えてきた?

2019年5月28日(字幕版)(吹替版)@東宝試写室

日本では知らない人のいないゴジラ。1954年の劇場第1作目から定期的に作られ、東宝のシンボル的な存在で今年は「ゴジラ誕生65周年」。そんなゴジラにも紆余曲折がありました。

「シリーズ50周年」の集大成として、2004年に「さらば、ゴジラ。」というキャッチコピーのもと「ゴジラ FINAL WARS」が公開され、一つの時代が終わっていました。ただ、その作品の出来はフォローできないほどで、個人的には「これでゴジラが終わるのは仕方ないか…」と思っていました。

そんなゴジラが“復活”したのは、2014年にハリウッドで製作された「GODZILLA ゴジラ」。日本で興行収入32億円を記録し、世界興行収入では530億円という大ヒットを記録しました。その復活劇を世界で巻き起こし、日本でも本格的な「ゴジラ」が製作されることになったのが2016年の「シン・ゴジラ」で、とことん「リアルさ」を追究した斬新な作品になった結果、興行収入82.5億円というメガヒットを記録しました。

そしてハリウッドで製作された「GODZILLA ゴジラ」から、ちょうど5年後を描いた本作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で、ゴジラがまた世界中のスクリーンで暴れます。

(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved. (C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

まず作品の出来ですが、個人的には最初の「GODZILLA ゴジラ」の時は「イントロ」的な感じで、「シン・ゴジラ」ほどの衝撃を受けなかったのが率直な感想でした。ところが、本作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、一言で言うならレベルが違いすぎます。ゴジラの最高傑作と言ってもいいくらい、とにかく良く出来ています!

本作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で「日本のゴジラ」のプレゼンスが、世界中でかなり増すことになるのは間違いないでしょう。

日本でも、「キングギドラやモスラといった有名なキャラクターが登場する」だけでなく、「音楽も日本版のものが原型となっている」ので、往年のゴジラファンも、きっと大いに満足してもらえるのではと思っています。

「ゴジラ誕生65周年」という歴史の深さを考えると、本作は興行収入50億円規模は十分狙えると思いますし、浸透具合によっては「シン・ゴジラ」級にまで覚醒することも視野に入れておいてもいいのかもしれません。

ハリウッド映画では、その浸透具合を左右する要因にもなる「吹替版」ですが、「字幕版」と見比べてみて意外な発見があったのは、吹替版のほうが情報量が多いのかも、ということでした。

私は必ずしも「吹替版の肯定派」ではなく出来次第で判断しているのですが、本作に関しては「地声」に慣れているのは渡辺謙くらいなので、吹替版は悪くないというレベルでなく、むしろ良いと思いました。子役の女の子の「地声」は、実は芦田愛菜に実際に似ていたりもするのです。

「字幕版」でのお勧めは、渡辺謙が、あるシーンで日本語を話すシーンですね。確かに、あのシーンは日本語のほうがグッときます。

(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved. (C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

とにかく本作はテンポが良いので、じっくりと映像に集中したい人には「吹替版」もお勧めします。

さて、本作の経済的な意味を考えると、実は、長年模索し続けていた日本の映画会社が世界でビジネスをする方法が、ようやく本作で見えてきたのかもしれないのです。

本作の製作は「レジェンダリー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース、東宝」となっていて、映画「名探偵ピカチュウ」と同様に、東宝は出資をしているのです。

つまり、世界興行収入の利益が東宝に還元される形となるわけです!

さらに、これからの世界のビジネスで大きなカギを握る中国のマーケットですが、中国にはスクリーンクォータ制(自国映画以外の作品の上映を制限する制度)という壁があり、他国は上手く食い込むことが難しい面があります。

ところが、2016年にハリウッドの大手制作会社のレジェンダリー・ピクチャーズを中国企業が買収したため、レジェンダリー・ピクチャーズと組むことで国籍問題をすり抜ける「ステルス戦略化」ができるようになったのです!

(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved. (C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

“日本生まれのポケモン”も、そのラインでハリウッド映画化でき、現時点の興行収入では、中国は日本より4倍も多く稼いでくれているのです。

この仕組みは、これまでの「ハリウッド映画」のイメージのおかげで、(少し前まで“解”とされていた)「日中合作映画」といった形態よりも圧倒的に世界に浸透できると思います。

ようやく最適な解が見えてきた中で、いよいよ本命ともいえる「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が今週の金曜日(5月31日)に世界同時公開となります。世界中で日本発のゴジラがどのくらいの破壊力で暴れまくるのか、注目です!

[筆者紹介]

細野真宏

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 発売以来9年連続完売となっている2019年版の「家計ノート 2019」(小学館)が発売中!

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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