コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第35回

2021年12月24日更新

人間食べ食べカエル テラー小屋

THE POOL ザ・プール」勢いづくワニ映画界隈に、微笑みの国タイも殴り込み


アリゲーター」や「レプティリア」や「クロコダイル2」など、実は結構名作が多いワニ映画界隈。一時はサメ映画ブームに押されて影が薄くなっていたが、サム・ライミアレクサンドル・アジャという二大ホラー職人が手掛けた家ワニパニック「クロール 狂暴領域」がヒットしたこともあり、最近になって再び人気が出始めた。近年では世界各地で続々とワニ映画の新作が登場。特に中国からはヤケクソみたいな勢いで新たなワニパニックが生み出されている。「アニマルパニックの覇権はワシが取るんじゃい!」と勢いづくワニ映画界隈に、微笑みの国タイも殴り込みをかけた。それが今回紹介する「THE POOL ザ・プール」である。

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映像制作会社で働く男デイは、仕事が終わった後に撮影で使ったプールで浮き輪に乗りながら眠りについていた。だがハッと目が覚めると水が抜かれ始めていて、水位がドンドン下がっていく! 気づいた時には既にプールサイドに登れなくなっていた。そのプールは閉鎖前のため人も寄り付かない。誰も助けに来ない……。と、そんな時、恋人のコイがデイを探しに来る。しかし彼女もうっかりミスでプールに落下! いよいよ外に出る手段がなくなった2人。しかも、そのプールにワニまで現れた!! 極限の危機に陥った二人は、果たして生きてプールから出られるのか!?

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なんててんこ盛りのあらすじだろうか。本作はワニ映画ではあるが、純粋にワニの脅威だけを描くだけでなく、プールに落ちた男女を襲ういくつもの危機の一つがワニだったという内容だ。ただこのワニが超厄介かつ超活躍するので、実質ワニが主役と言って良い。プール内に取り残されるコイとデイの二人は揃って知能指数が残念なことになっており、ここぞというところで悪手ばかり取ってしまい、事態が見る見るうちに最悪の方向へと転がっていく。

その様子があまりにも過剰に描かれているため、本作はどちらかというと、スリルを楽しむというよりはギャグ映画を観るつもりで臨んだ方が良いだろう。あらすじからして、「浦安鉄筋家族」の春巻が学校の長期休み中にやる遭難篇みたいなもんだからね。ブラックジョークも効いており、中でも排水トンネルを潜り抜けて脱出しようとした際の顛末があまりにもひどくて思わず笑いが出てしまう。そりゃあんなことが待ち受けていたら叫びたくもなるよ! ちなみに、劇中にラッキーというワンちゃんも出てくるのだが、この子を使ったとあるシーンについてはジョークの範疇を軽々と超えており、犬好きは憤死する可能性があるため注意した方が良い。これは心からの忠告です。

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話をワニに戻そう。本作に出てくるワニはかなり安いVFXで描かれており、御世辞にも出来がいいとは言えないが、それを補って余りあるほどにプール内で存分に動き回り、人間に食らいつかんとダイナミックに暴れてくれる。プールからいかに脱出するかという内容から、次第にワニとのバトルに雪崩れ込んでいく展開は、あまりにバカバカしいが結構アツい。何としてでも生き残りたいコイとデイ。二人が脱出を図るには、どうしてもワニを乗り越えなければならない。否が応でも戦わなければいけない強制ワニバトルな作りが楽しい。終盤に待ち受けるワニと人間の一騎打ちは本作の白眉だ。覚悟を決めたデイは拳に有刺鉄線を巻き付け、ワニと対峙する。一方のワニはその強靭な顎でデイの足に食らいつく。有刺鉄線パンチを喰らわせるデイ。怯まないワニ。両者の生存権を賭けたバトルには、不覚にも手に汗を握ってしまった。

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水のないプールから出られない!という超シンプルなストーリーをあの手この手で転がしまくり、最後の最後まで楽しませてくれるサービス精神旺盛さは大いに評価したい。絵面がだいぶ安いうえ、一部の人が拒絶しそうな厳しい展開もあるため、人を選ぶ作品なのは間違いない。だが、ワニ映画好き、特殊シチュエーションで展開するサバイバルが好きな方の琴線に触れることは間違いないので、そういうのが好きな方にはおすすめしておきたい。

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筆者紹介

人間食べ食べカエルのコラム

人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。

Twitter:@TABECHAUYO

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