コラム:若林ゆり 舞台.com - 第55回

2017年4月27日更新

若林ゆり 舞台.com

第55回:夢咲ねねが「グレート・ギャツビー」の難役ヒロインで元宝塚の本領を発揮!

このデイジーのためなら、そりゃあ男性だったら破滅しちゃいますよ、と思わせられることは間違いないだろう。宝塚を卒業してから「サンセット大通り」「1789 -バスティーユの恋人たち-」「ビッグ・フィッシュ」に次いでミュージカルは4作目。今回は、宝塚での経験が最も活かせる役になりそうだという。

「宝塚では女性同士で演じるものですから、女役もある程度は嘘。12年間、現実にはいないような女性というものを目指してやっていたので、その癖を取るのも大変だったんですね。でも、今回の作品に関しては、邪魔だと思っていた癖がちょっと役に立つのかもしれないなって思い出しているんです。いつもはリアルなものを求められることが多いのですが、今回は小池先生から『デイジーはギャツビーが頭の中でどんどん理想化している女性だから、ちょっと現実離れした嘘っぽさの中にリアルなものが見えたらいい』というアドバイスをいただきました。確かにデイジーを生身でやったら、ちょっとどこか嫌らしいという感じがしてしまう。そこが、私がデイジーに抱いた腑に落ちない感じの原因の1つでもあったんです。それでいま、昔の引き出しを開けようとしているんですけど、1回閉めちゃったから(笑)。徐々に感覚を取り戻しつつあるのかな、という感じでやっています」

撮影:若林ゆり ヘアメイク:山下由花 スタイリスト:池田未来 衣裳:TED BAKER(テッドベーカージャパン)
撮影:若林ゆり ヘアメイク:山下由花 スタイリスト:池田未来 衣裳:TED BAKER(テッドベーカージャパン)

宝塚を卒業して「サンセット大通り」に出た後、芸名を本名の“赤根那奈”に変えて活動していたが、本作から“夢咲ねね”に戻すことを決めた。宝塚で培った財産を活かせる役柄に恵まれたこのタイミングで宝塚時代の名前と再会できたのも、運命のなせるわざかも?

「そう思いたいですね。私は、宝塚では“夢咲ねね”として突っ走ってきた12年間で、最後の方には自分を追い詰めて、本当の自分がわからなくなっていました。ひたすら全力投球でがんばってきたから、退団したときに『私は一体何者なんだ?』と混乱してしまって。本名の自分に戻って1回リセットしたかったんです。そのころは、宝塚時代に感じた自分のマイナス面ばかりが見えてしまっていました。自分の中で闘ってきたものが一段落して『やっと解放された』というような、本当の自分に戻れたような気がしていたんですね。でも、いろいろな経験をしていくうちに、宝塚での経験は私にとって誇れるものなんだ、って気づいたんです。それでやっと“夢咲ねね”と向き合えた。自分を認めることができたんです。そう思ったらちょっと楽になって、いままで乗り越えられなかったものをこれからも少しずつ勉強して、突破していきたいなってすごく前向きに思えました。だから、いままで培ってきたものをふまえて、もう一度リスタートしたくて。“夢咲ねね”という名前に誇りを持ってがんばりたいと思っているんです」

今回はすべての楽曲を、「BANDSTAND」という新作でブロードウェイデビューを果たしたばかりのリチャード・オベラッカーが書き下ろしているという点でも、新鮮な仕上がりが期待されている。

「曲自体が壮大な曲調のものが多くて、メロディラインが綺麗なんですね。オベラッカーさんも『ギャツビー』がお好きでこれを作れるのが嬉しいっておっしゃっていただけただけあって、その役に寄った曲調で『ああ、ぴったりだな』って思うんですよね。デイジーはワルツが多くて、上流階級のお嬢さんという感じでかわいい曲ばかり。でもマートルだったらフラッパーっぽいジャズだったりして。役によって全然違うので、面白いんですよ」

画像2

そしてミュージカル作品の中でも、「映画ファンの方たちに強くお勧めできる作品」だと力説してくれた。

「映画は何度でも同じものを見られるし、映画ならではの技術も美しさもあると思うんです。でもオンタイムで2時間から3時間くらいの間、生身の人間がどうやって役を生き抜くかをリアルに感じられるのが舞台の楽しさだと思うんですね。そして今回のこの『グレート・ギャツビー』に関していえば、映画と舞台の中間のような魅力もある作品なんですよ。美しくてきらびやかなパーティ・シーンなどは映像的ですし、立体映画みたいなイメージで観ていただけると思うんです。ぜひ劇場にお越しいただいて、観終わったお客様に『もう1回観たい』と思っていただけるようにがんばります!」

「グレート・ギャツビー」は5月8~29日、日生劇場で、7月4~16日、梅田芸術劇場メインホールで上演される。名古屋、博多公演もあり。詳しい情報は公式サイトへ。
 http://www.tohostage.com/gatsby/ticket.html

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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