コラム:若林ゆり 舞台.com - 第133回

2026年3月18日更新

若林ゆり 舞台.com

「何もかも完璧」を目指す稽古場の「メリー・ポピンズ」3人は、ダメな自分をさらけ出し、助け合い、笑い合っていた!

左より、濱田めぐみ、朝夏まなと、笹本玲奈
左より、濱田めぐみ、朝夏まなと、笹本玲奈

あの「メリー・ポピンズ」が風に乗って帰ってくる! ミュージカルの醍醐味がめいっぱい詰まった、観たら必ず胸がいっぱいになって、目頭が熱くなって、大笑いできて、大興奮できて、人を想うやさしさ、あたたかさを実感できて、心踊らせる名曲だらけで、前向きな多幸感をこれでもかと味わわせてくれる、完璧な「メリー・ポピンズ」だ。P.L.トラバースによる原作と、ディズニーによるジュリー・アンドリュース主演の映画版のいいところを併せもち、さらにダイナミックで不思議なショー場面もてんこ盛り。まるで魔法のようなこのステージは、キャメロン・マッキントッシュ(「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」)とディズニーが手を組み、2004年に英国で開幕。そのセットや演出をそのまま、日本人キャストで再現する名作なのである。

今回、メリーを演じるのは、初演から3度目となる濱田めぐみ、再演から2度目の笹本玲奈、そして今回初挑戦となる、元宝塚トップスターの朝夏まなとという3人。過酷な稽古期間の真っ最中に、3人が揃ってインタビューに応じてくれた。まずは、稽古場で、それぞれがいま、実感していることを聞いてみよう。

濱田めぐみ
濱田めぐみ

濱田「やはり全体のエネルギーがポジティブで前向き。ネガティブな部分を表している部分もあるんですけど、それを救いにメリーは来ているので、全体的に元気がよく、楽しい、ワクワクした空気感が稽古場に満ちていて。もちろん踊りや段取りを体に入れ込む作業は普通以上に大変ですが、稽古場で受け取るエネルギーがすごいから、元気になれる。キャスト全員の結束力が強く、とても居心地がいいんです。個人的には我を忘れて稽古をするとか、没頭しすぎて周りが見えないとかいうことが、初演のときにはあったんですよ。でも3回目という意味で、いまはちょっと俯瞰で、自分は距離を置いて稽古の状況を見つつ、自分の稽古も合わせてやっていく感じかな。慣れている分、余裕みたいなものが少し出てきている感じがします」

笹本玲奈
笹本玲奈

笹本「久しぶりにこの稽古場に戻ってきて、『いかにメリーがこの作品を回せるか、なんだな』というのを最近、すごく感じています。前回は必死だった分、今回はさらに一歩上のステージに上がって、みんなを引っ張っていきたい。お客様を含めてみんなをポジティブな世界に引っ張り、巻き込むのがメリーの役目だから、いかにしてそこに自分が行き着けるか。そこが課題ですね。私はこれまで歌がメインの作品が多く、踊りがある作品や、最後まで生きている役が少なくて(笑)。でも、私は小さいころからディズニーランドのショーが大好きで、『人を楽しませたい』からミュージカル女優になりたいと思ったんですよ。テーマの重い作品もそれはそれですごく好きではあるんですけど、本来は歌も踊りもふんだんにあって、みんなが笑顔で劇場から出られるような作品をやりたかったので、『やっとできる!』という感じです」

朝夏まなと
朝夏まなと

朝夏「私は玲奈ちゃんとは逆で、明るいミュージカル専門みたいなところがあったのですが、キリッとクールな感じもいけると思っていただけたなら、それはもう長年お世話になった劇団(宝塚歌劇団)によって培われたものですね(笑)。お稽古に入ってから思うんですが、宝塚音楽学校で学んだことが大変役に立っているな、と。稽古場でめぐさん(濱田)に『予科(1年生)時代に廊下や階段をクックッと直角に曲がらなければいけないとか背筋をピンと伸ばさなければいけないとか、厳格に規律正しさを求められた経験がめっちゃ活かされているんです』とお話したことがあって。『このために私、やってたんですね』なんて (笑) 。実際にやってみると、その経験に助けられること以上に大変なことも多いんですけどね」

2022年の舞台より。メリー(濱田)とバート(大貫勇輔)と子どもたち
2022年の舞台より。メリー(濱田)とバート(大貫勇輔)と子どもたち

8年前、初演の稽古中に行った当コラムのインタビュー(第65回)で、濱田はメリー像を「よくわからない」と語っていた。初演、再演を経て、いまはどう捉えている?

濱田「いまもわからない、ですね。客観的に捉えられない。むしろ主観的にどうあるべきかはわかるんですけど、それを第三者の目で見て『こういう人である』というのが未だに表現できない。断定をしてはいけないという考えがあるんですよ。『メリーってこういう人』と言った途端に、それは嘘になる。言ったらふわっと消えてなくなってしまいそうで。メリーという存在というか、エッセンスというか、フィーリング? 実際にいて、動いているんですけど『あれ幻覚だったのかな?』という感じ。でも、メリーにスッと入れるところは確実にあるんです、初演のときから。ただ、言葉にできない。そこが魅力だとも思います」

2022年の舞台より。メリーを演じる笹本玲奈
2022年の舞台より。メリーを演じる笹本玲奈

笹本「私もまったく同じです!『メリーはこういう人です』と言ってしまったら、そういう目でお客様も見るしかなくなっちゃうし。自分の中でも『こうだ』と明確にしちゃうと、フッと消えちゃいそうな感じがする。可能性がすごくたくさんあるんですよね、一人の存在として。だからこそ未来も見えるし、過去も見えるし、すべてを把握できている。不思議ですよね」

稽古場でメリーを演じる朝夏まなと
稽古場でメリーを演じる朝夏まなと

朝夏「私はまだお2人の域に全然達していないんですけれど。最初に読んだときのメリー像は、なんか『概念だな』と思ったんです。信じるとか、愛とか、思いやりの概念みたいな。それが場面によっていろんなものに変化していく存在.かな……と。でもいまはわからないです。やることが多すぎて! まだ段取りと振りと歌とを覚えて、やっと1回通したところで。もう必死だったので。自分の思っているメリーと動きとをいかに繋いで、結びつけてくか。1つ核を作らないと私にはできないなと思っているんですが、その核がまだわからないから探しているところです」

稽古場でキャスト集合
稽古場でキャスト集合

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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