新作映画評論 Page5

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9月9日更新

ヤリ過ぎであることを恐れないロシア人監督のハリウッドデビュー作 ウォンテッド

  • ウォンテッド
  • ティムール・ベクマンベトフ。この名前の持つエキゾチックな響きは、彼の「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」が発する「異質なもの」と共鳴する。自国ロシアで驚異的ヒットを記録、日本でも公開されたこのSFアクション連作の夜の気配は、明らかにハリウッド製の夜とは異なる質感を持っていた。 ベクマンベトフ映画の手触りは、粗い。ハリウッド映画が無意識のうちに目指してしまう「洗練」とは無縁。ヤリ過ぎで... >>続きを読む

ファミリー向けに仕上がった極彩色の中島ワールド パコと魔法の絵本

  • パコと魔法の絵本
  • 日本映画界に衝撃を与えた、「嫌われ松子の一生」から2年。中島哲也監督、待望の最新作は……恐ろしいほど涙腺を刺激する。極彩色の中島ワールドで今回描かれるのは、記憶が1日しか持たない少女・パコと、一代で会社を築いた頑固ジジイ・大貫を中心とした、どこか病を抱えた濃い人々だ。原作が戯曲ということもあり、病院という閉鎖空間を舞台に、冒頭から前作以上に小劇団の主流といえるハイテンションとツッコミ笑いが炸... >>続きを読む

北野武の死生観を色濃く反映した売れない画家の半生 アキレスと亀

  • アキレスと亀
  • 映画の冒頭で、古代ギリシャの哲学者ゼノンが考えた、俊足アキレスはいつまでも亀に追いつけないという《アキレスと亀のパラドックス》が紹介されている。その答えは難解で、アートの探求に終わりがないことの比喩だろうと思うが、売れない画家の半生を描いた物語は分かりやすくて楽しめる。主人公の名前を真知寿(マチス)にしたお遊びはともかく、絵画と出会う少年時代、仲間や恋人ができる青年時代、さらに悪戦苦闘の中年... >>続きを読む

9月2日更新

美学の極致まで達した死の儀式を見せる美しい映画 おくりびと

  • おくりびと
  • 本木雅弘演じる主人公の“納棺師”が死に化粧と納棺の儀式を行う。死に装束の着物の衣ずれの音まで耳に心地よく響く。彼の所作ひとつひとつが指先まで神経が行き届いて、(ポーラ伝統文化振興財団の)記録映画でよく見る“匠の仕事”、美学の極致にまで達している。男の前の職業が指先が器用なチェロ奏者だという仕掛けが効いている。 滝田洋二郎監督と脚本家の小山薫堂がつむぎ出す物語は、死の儀式を執り行う主人公... >>続きを読む

子供の物語ではあるが、大人だからこそ楽しめる物語でもある 幸せの1ページ

  • 幸せの1ページ
  • 原作の児童小説のイメージを大切にした、かわいらしくてマジカルな世界観に冒頭から引き込まれる。監督2人は夫婦で、妻は「ビバリーヒルズ高校白書」や「L.A.ロー」、夫は「素晴らしき日々」といった、共に人気テレビシリーズで活躍してきた脚本家。それだけにツボを押さえたうまい構成でテンポ良く見せ、まったく飽きさせない。ジョディ・フォスターの珍しいコメディエンヌぶりも見もので、引きこもりの小説家を単に面... >>続きを読む

ヒトラーよ、お前を生かしておくのはワケがある わが教え子、ヒトラー

  • わが教え子、ヒトラー
  • 戦後63年を経てもなお作り続けられる独裁者ヒトラーをめぐる映画に新たな一作が加わった。監督がユダヤ人だけに、さぞかし憎悪に満ちた内容だろうと思いきや、別の意味で痛烈な作品だった。何とコメディなのだ! 「この話は真実だ。しかし“真実すぎる”ため歴史の本には出てこない」。そんな奇妙なモノローグで始まる本作は、第2次大戦末期に鬱になったヒトラーを再生させる任務を命じられたユダヤ人教授の物語。... >>続きを読む

8月26日更新

記憶のあいまいさを抱え込んだまま進む壮大な物語のプロローグ 20世紀少年

  • 20世紀少年
  • 小学校時代によく一緒に遊んだ友達の顔や名前を、ひとりひとり鮮明に覚えているだろうか。30年前の記憶はかなりあいまいになっているに違いない。このドラマはそんな記憶のあいまいさを抱え込んだまま進展していく。そしてオウム真理教を連想させるカルト教団を率いる〈ともだち〉は小学校時代の仲間なのか、彼はケンヂたちが遊びで書いた物語「よげんの書」を読んでいるのか、というサスペンスが生まれる。唐沢寿明演じる... >>続きを読む

「アイ・ミス・ユー」と呟く陰で苛烈と寛容が激しく競り合っている イントゥ・ザ・ワイルド

  • イントゥ・ザ・ワイルド
  • 一歩まちがえば、自己愛と自己破壊の葛藤を天秤にかけた話になる。もう一歩まちがえば、愚かな甘ったれの話になる。だが、そうはならない。見終えて思うのは、この映画を撮ったショーン・ペンの並外れた愛情の深さと、当人も制御できないほどの業の深さだ。 裕福な家庭に育ち、優秀な成績で大学を卒業した青年(エミール・ハーシュ)が、大学院の学費を寄付し、IDとクレジットカードを燃やし、ひとり放浪の旅に出る... >>続きを読む

コッポラらしい美意識の高さと妥協なき姿勢に満ちたこだわりの一作 コッポラの胡蝶の夢

  • コッポラの胡蝶の夢
  • コッポラ10年ぶりの新作は、彼らしい美意識の高さと妥協なき姿勢に満ちたこだわりの1本である。原作はルーマニアの宗教学者が書いた幻想小説なのだが、インドで東洋哲学を学んだ作家だけに、内容はかなり異色。ある日老教授が雷に打たれ、輪廻転生していく自分の魂を通して未来が見られるようになる。彼は若返って年を取らなくなり、一方愛する女性は過去を溯る能力を得て、どんどん老いていく。 時間を超えるとい... >>続きを読む

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