柳下毅一郎 : ウィキペディア(Wikipedia)

柳下 毅一郎(やなした きいちろう、1963年12月30日 - )は、日本の映画評論家、英米文学翻訳家柳下毅一郎『ズバリ図解 凶悪犯罪の歴史』ぶんか社、2008年、ISBN 978-4-8211-5141-7、殺人研究家。自称「特殊翻訳家」(後述)。多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科非常勤講師(映像芸術論)。

経歴・人物

大阪府生まれ。母親が熱心なSFファンであり、実家にあった大量のハヤカワSFシリーズと『SFマガジン』のバックナンバーを読む『ナイトランド・クォータリーvol.22 銀幕の怪異、闇夜の歌聲(ISBN 978-4883754182)』収録のインタビューより。

甲陽学院中学校・高等学校から東京大学理科一類を経て東京大学工学部建築学科卒業。東京大学在学中は、山形浩生と共に、「東京大学SF研究会」に属し、共同でウィリアム・バロウズについての研究ファンジン「バロウズ本」を作成し(北北西SF名義)、1988年のSFファンジン大賞の翻訳・紹介部門を受賞。卒業後、宝島社に勤務し雑誌『宝島』等の編集者をへて、フリーに。町山智浩とは、『宝島』編集部時代の同僚であった。

「ガース柳下」や「曲守彦」の筆名を使うこともある。ただし「曲守彦」は、宝島社勤務時代に使った名前で、現在は使用されない。

1993年以降、町山と共に仕事をするときは「ガース柳下」「ウェイン町山」の「ファビュラス・バーカー・ボーイズ(FBB)」を名乗ることが多い。なお、ウェイン、ガースは映画『ウェインズ・ワールド』(1992年)のボンクラ・コンビの名前である。「FBB」は映画『ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989年)から。

「特殊翻訳家」の謂いは、普通の翻訳家が手を出さない特殊な文献・文学作品を好んで翻訳することからで、「特殊漫画家」と自称した根本敬から影響を受けた自称である。

またサッカー愛好家でもあり、サイモン・クーパーをはじめサッカーについて政治的に論じた書の翻訳も行っている他、ヨコハマ・フットボール映画祭の審査委員長を2011年から2014年まで務める。

元妻は、サイレント映画伴奏者のピアニスト・柳下美恵。祖父は二・二六事件に中尉として参加し、禁錮四年を科された柳下良二。

日本推理作家協会会員。また、2021年4月より、日本SF作家クラブ会員。

著書

単著

  • 『世界殺人鬼百選/Ultimate Murder File』ぶんか社、1996年9月。(ガース柳下名義)
  • 『世界殺人ツアー 殺人現場の誘惑』原書房、1998年2月。→文庫化にあたって改題 『殺人マニア宣言』ちくま文庫、2003年9月。
  • 『愛は死より冷たい 映画嫌いのための映画の本』洋泉社、1998年9月。
  • 『シー・ユー・ネクスト・サタデイ 完全収録 『激殺!映画ザンマイ』』ぴあ、2003年10月。
  • 『興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史』青土社、2003年12月。
  • 『シネマ・ハント ハリウッドがつまらなくなった101の理由』エスクァイアマガジンジャパン 2007年12月。
  • 『新世紀読書大全 書評1990-2010』洋泉社、2012年8月
  • 『皆殺し映画通信』カンゼン、2014年3月
  • 『皆殺し映画通信 天下御免』カンゼン、2015年10月
  • 『皆殺し映画通信 冥府魔道』カンゼン、2016年6月
  • 『柳下毅一郎の特殊な本棚』本の雑誌社、2016年2月(電子書籍オリジナル)
  • 『皆殺し映画通信 地獄旅』カンゼン、2017年7月
  • 『皆殺し映画通信 骨までしゃぶれ』カンゼン、2018年3月
  • 『皆殺し映画通信 お命戴きます』カンゼン、2019年4月
  • 『皆殺し映画通信 御意見無用』カンゼン、2020年3月
  • 『皆殺し映画通信 地獄へ行くぞ!』カンゼン、2021年4月
  • 『皆殺し映画通信 あばれ火祭り』カンゼン、2022年4月
  • 『皆殺し映画通信 死んで貰います』カンゼン、2023年4月

共著

  • 『ファビュラス・バーカー・ボーイズの地獄のアメリカ観光』洋泉社、1999年1月。(町山智浩と共著) - のちちくま文庫
  • 『コンプリート・チャールズ・マンソン チャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件』コアマガジン、1999年10月。(共著)
  • 『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』1-3 洋泉社、2002-07(町山智浩と共著) - 3冊からセレクトして『ベスト・オブ・映画欠席裁判』文春文庫
  • 『バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争 邦画バブル死闘編〈2007‐2008年版〉』洋泉社、2009年3月。(江戸木純、クマちゃんと共著)
  • 『日本映画空振り大三振 〜くたばれ!ROOKIES』洋泉社、2010年6月。(江戸木純、クマちゃんと共著)
  • 『「監督失格」まで: 映画監督・平野勝之の軌跡』ポット出版、2013年4月(平野勝之共著)
  • 『雑食映画ガイド』(町山智浩,ギンティ小林と共著 双葉社、2013年4月)

編書

  • 『ティム・バートン 期待の映像作家シリーズ』 キネマ旬報社、2000年3月。
  • 『実録殺人映画ロードマップ』 洋泉社、2004年4月。

監修書

  • 『実録殺人映画ロードマップ』洋泉社、2004年4月。
  • 『実録!マーダー・ウォッチャー 2005 summer issue』洋泉社、2005年7月。
  • マット・ウェイランド ,ショーン・ウィルシー編『世界の作家32人によるワールドカップ教室』越川芳明と共同監訳 白水社、2006年5月
  • 『女優・林由美香』洋泉社、2006年10月。(編集は、直井卓俊、林田義行)
  • 『凶悪犯罪の歴史』ぶんか社文庫 2008年2月。
  • 『Murder Watcher 明治・大正・昭和・平成 実録殺人事件がわかる本』洋泉社、2008年6月。
  • 『Murder Watcher 実録 この殺人はすごい!』洋泉社、2008年12月。
  • 『Murder Watcher 殺人大パニック!!』洋泉社、2009年4月。
  • 『実録殺人事件がわかる本 2010 spring マーダー・ウォッチャー vol.6』 洋泉社、2010年2月。
  • 『J・G・バラード短編全集1 (時の声)』J・G・バラード (著), 柳下毅一郎 (監修), 浅倉久志他訳 東京創元社 2016年9月
  • 『J・G・バラード短編全集2 (歌う彫刻)』J・G・バラード (著), 柳下毅一郎 (監修), 浅倉久志他訳 東京創元社 2017年1年
  • 『J・G・バラード短編全集3 (終着の浜辺) 』J・G・バラード (著), 柳下 毅一郎 (監修), 浅倉久志他訳 東京創元社 2017年5月
  • 『J・G・バラード短編全集4 (下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件) 』J・G・バラード (著), 柳下 毅一郎 (監修), 浅倉久志他訳 東京創元社 2017年9月
  • 『J・G・バラード短編全集5 近未来の神話 』J・G・バラード (著), 柳下 毅一郎 (監修), 浅倉久志他訳 東京創元社 2018年1月

編訳書

  • ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』河出書房新社 2008年2月。(大森望らと共訳)
  • ロバート・クラム『ロバート・クラムBEST―Robert Crumb's troubles with women』河出書房新社、2002年7月。

訳書

  • ウィリアム・S・バロウズ『おかま』ペヨトル工房、1988年。(山形浩生と共訳)
  • ウィリアム・S・バロウズ『ソフトマシーン』ペヨトル工房 1989年8月。(曲守彦名義、山形浩生と共訳、のち河出文庫)
  • J・G・バラード『クラッシュ』ペヨトル工房、1992年。(のち、創元SF文庫)
  • フランク・リシャンドロ『ジム・モリスン 幻の世界』JICC出版局、1992年4月。
  • モリッシー/ジョン・ロバートスン『クイーン・イズ・デッド モリッシー発言集』JICC出版局、1992年9月。
  • ジョン・スラデック『遊星よりの昆虫軍X』ハヤカワ文庫、1992年12月。
  • ウィリアム・S・バロウズ『おぼえていないときもある』ペヨトル工房、1993年。(浅倉久志ほかと共訳)
  • ジョン・レチー『ラッシュ』白夜書房、1993年5月。
  • ジェームス・ヤング『ニコ ラスト・ボヘミアン』宝島社、1993年5月。
  • ギデオン・サムズ『ザ・パンク』 PSC、1994年12月。
  • デヴィッド・ブレスキン『インナーヴューズ 映画作家は語る』大栄出版、1994年12月。
  • ハロルド・シェクター『オリジナル・サイコ 異常殺人者エド・ゲインの素顔』ハヤカワ文庫、1995年2月。
  • ブルース・ワグナー『バド・ウィギンズ氏のおかしな人生(上・下)』扶桑社文庫、1995年9月。
  • コリン・ウィルソン,佐川一政『饗―カニバル』(翻訳・構成)竹書房、1996年1月。
  • ルベン・マルティネス『すべてのリズムで踊れ LAラティーノの鳴動』白水社、1996年2月。
  • キャサリン・ダン『異形の愛』ペヨトル工房、1996年7月。のち河出書房新社
  • J・C・ハーツ『インターネット中毒者の告白』草思社、1996年11月。(大森望と共訳)
  • オリヴァー・サイリャックス『世界犯罪百科全書』原書房、1996年12月。
  • ジョン・ウォーターズ『ジョン・ウォーターズの悪趣味映画作法』青土社、1997年10月。→2014年4月、新版
  • マイケル・マッカラーズ『オースティン・パワーズ』青山出版社、1998年5月。
  • フランク・ミラー『』小学館、1998年5月。
  • ブライアン・マスターズ『ジェフリー・ダーマー 死体しか愛せなかった男』原書房、1999年3月。
  • デレク・A・スミシー『コリン・マッケンジー物語』パンドラ、1999年10月。
  • クリストファー・プリースト『イグジステンズ』竹書房文庫、2000年4月。
  • サイモン・クーパー『サッカーの敵』白水社、2001年3月。
  • ニール・ゲイマン『ネバーウェア』インターブックス、2001年7月。
  • ジェームズ・エリソン『パニック・ルーム』ヴィレッジブックス、2002年3月。
  • R.v.クラフト=エビング著『クラフト=エビング変態性慾ノ心理』原書房、2002年7月。
  • R・A・ラファティ『地球礁』河出書房新社、2002年10月。のち河出文庫
  • フィリップ・ゴーレイヴィッチ『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実(上・下)』WAVE出版、2003年6月。→2011年新装版
  • スティーヴン・ピジック『アイデンティティー』ヴィレッジブックス、2003年10月。
  • ウィリアム・S・バロウズ『ソフトマシーン』河出文庫、2004年6月。(山形浩生と共訳)
  • ジョン・ウォーターズ『ジョン・ウォーターズの悪趣味映画作法』青土社、2004年6月。
  • ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』国書刊行会、2004年7月。
  • サイモン・クーパー『アヤックスの戦争 第二次世界大戦と欧州サッカー』白水社、2005年2月。
  • デニス・オニール『バットマンビギンズ』SB文庫、2005年6月。
  • シオドア・スタージョン『輝く断片』河出書房新社、2005年6月。(大森望編、大森望、伊藤典夫と共訳)
  • R・A・ラファティ『宇宙舟歌』国書刊行会、2005年10月。
  • ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』国書刊行会、2006年2月。(浅倉久志、伊藤典夫と共訳)
  • マット・ウェイランド、ショーン・ウィルシー編『世界の作家32人によるワールドカップ教室』 白水社、2006年5月。(越川芳明と共監訳)
  • ブライアン・オールディス『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』河出文庫 2007年1月。
  • アラン・ムーア/エディ・キャンベル『フロム・ヘル』上下 みすず書房 2009年11月
  • J・G・バラード『人生の奇跡 J・G・バラード自伝』東京創元社、2010年10月
  • R・A・ラファティ『第四の館』国書刊行会、2013年4月
  • アラン・ムーア/J・H・ウィリアムズIII 『プロメテア 1』小学館集英社プロダクション、2014年5月
  • ジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの記念日の本』(酒井昭伸, 宮脇孝雄共訳) 国書刊行会 2015年5月
  • ジョージ・ミラー原作『マッドマックス 怒りのデス・ロード(GRAFFICA NOVELS): COMICS & INSPIRED ARTISTS』 誠文堂新光社 2015年12月
  • ジョン・スラデック『ロデリック:(または若き機械の教育) 』河出書房新社 2016年2月
  • アラン・ムーア/J・H・ウィリアムズIII 『プロメテア 2』小学館集英社プロダクション、2018年10月
  • アラン・ムーア, ジェイセン・バロウズ他『ネオノミコン』国書刊行会、2021年10月
  • ジョン・ウォーターズ『ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』国書刊行会、2022年1月
  • ウィリアム・リンゼイ・グレシャム『ナイトメア・アリー』ハヤカワ・ミステリ文庫 2022年1月
  • ジョン・ウォーターズ『厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉』フィルムアート社、2022年8月

DVD

  • 『20世紀の冷酷犯罪史 4枚組BOX』監修・解説、アーティストハウスエンタテインメント 2007年4月

配信

YouTube

  • - 高橋ヨシキ、てらさわホークと共同のYouTubeチャンネル

ライブストリーミング・ポッドキャスト

  • 『DOMMUNE RADIOPEDIA MOVIE CYPHER」(ムービーサイファー)』(2022年2月 - 毎月第4週木曜日) - ライブストリーミング・チャンネルDOMMUNEの番組。MCは柳下の他に三留まゆみ、高橋ヨシキ。毎月1回・木曜日にスタジオから生配信し、翌週の火曜日Amazon Musicのポッドキャストでアーカイブが配信される。

外部リンク

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