吉川惣司 : ウィキペディア(Wikipedia)
吉川 惣司(よしかわ そうじ、1947年2月22日 - )は、東京都出身の日本のアニメ監督、脚本家、演出家、アニメーター、キャラクターデザイナー、舞台演出家、小説家。東京都出身。
来歴
高校2年生の時、新聞に載っていた虫プロのアニメーター募集広告を見て応募し、合格。もともとは美大に進学するつもりだったが、高校を中退して第1期生として入社。国産初のテレビアニメ『鉄腕アトム』の制作に参加する。
1964年、杉井ギサブロー、出崎統、奥田誠治らとともにアートフレッシュの創設に参加。独立後もアートフレッシュが関わった虫プロ作品『悟空の大冒険』などにアニメーターとして参加する。
その後、虫プロ以外の東京ムービーやAプロダクション制作の作品にも参加するようになる。『巨人の星』、『ムーミン』、『あしたのジョー』、『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』などの作品で演出・絵コンテなどを担当し、『天才バカボン』で監督デビュー。
1978年、31歳でルパン三世の劇場版第一作『ルパンVS複製人間』を監督する。宮崎駿監督の劇場版第二作『カリオストロの城』が公開時に興行的に苦しんだのに対し、この作品は大ヒットを記録した。しかし、その事が吉川の次の仕事につながることはなく、また宮崎の評価が高まるとともに『カリオストロの城』の人気も大きく上昇したため、次第に『ルパン三世VS複製人間』は顧みられなくなっていった。その後、インターネットの普及とともに鑑賞した人々による口コミで再評価されるようになり、『カリオストロの城』と同等の評価を得るようになった。
1970年代後半から1980年代にかけては富野由悠季監督や高橋良輔監督のサンライズのロボットアニメに数多く参加し、脚本を提供した。
2001年から2003年にかけて放送されたゲーム『星のカービィ』のアニメ版の総監督を務めた。また制作は、吉川が取締役シニアディレクターに就任していたCG制作会社ア・ウンエンタテインメント(その後、ダイナメソッドに改称)が担当した。
人物
もともと大のアニメ好きで、8ミリカメラでアニメを作ったりしていた。また、アニメ業界入りのきっかけとなった虫プロを率いた手塚治虫のファンだった。少年時代に講談社の『少年少女世界科学冒険全集』を読んで以来、SFファン。
アニメ制作において原画・絵コンテ・演出・脚本・監督と全ての役割をこなし、その制作工程全てにおいて指揮を執る。またアニメ以外にも、劇団飛行船にて原作・脚本・演出・総監督を担当。きっかけは、TVアニメ『ムーミン』の仕事をしていた際に、監督のおおすみ正秋に同劇団の『アラジン』のスクリーン映像の手伝いを頼まれたことである。アニメのノベライズやスピンオフを中心に小説家としても活動もする。
監督を務めた映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』では脚本も担当している。ただし、大和屋竺との連名となっているが、実際は吉川が一人で執筆している。まず2人でアイデア出しとプロット作りを行った後、初稿を吉川一人で書き上げてプロデューサーに提出した。その後、吉川は大和屋に手直しするかどうかを打診したが、そのままでいいという了承を得たため、その案が採用された。しかし、吉川の大和屋への敬意から連名クレジットとしている『ルパン三世officialマガジン』vol.7、双葉社、2007年。吉川惣司インタビューより。
『戦闘メカ ザブングル』では当初、監督就任が予定されていた。しかし、多忙を理由に降板を申し入れ、脚本のみの参加となった。代役は富野由悠季が務めた。
『装甲騎兵ボトムズ』ではメインライターとして物語に深く関わっているが、インタビューで「『ルパンVS複製人間』でやり残したことがやりたかった」と語っている。
高橋良輔曰く、「作り手としてセクシーなんですよ。ものすごく神経が尖っていて、なおかつパワフル。世俗的なことには執着しない」。
アニメ雑誌『アニメージュ』の誌上企画「第6回アニメグランプリ」(1994年)の脚本部門を『装甲騎兵ボトムズ』の脚本で五武冬史(鈴木良武)、鳥海尽三と共に受賞。
『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと、2003年)の監督ランキングベスト100で94位にランクインしている。
宝島社の『別冊宝島737号完全保存版ルパン三世PERFECT BOOK』のインタビューで大塚康生は日本のアニメ界を代表するメンバーとして宮崎駿、高畑勲、出崎統、吉川惣司を挙げている。
『星のカービィ』の第100話「飛べ! 星のカービィ」で話の筋道や展開などにいくつかの問題・矛盾点・強引さが散見された背景には、最終回の脚本を務めた総監督の吉川が当時「今日明日が峠」と言われた妻の危篤を知らされ、今際の際に立ち会うため急ぎ足で脚本を不完全のまま出さざるを得なかったという事情がある「桜井政博のゲームについて思うこと」1巻 64-67頁。。
受賞歴
- 1978年「東南アジア映画祭」批評家賞受賞
- 受賞作品:『ルパン三世 ルパンVS複製人間』
- 受賞理由:パックス・アメリカーナ(アメリカによる世界支配構造)への痛烈な風刺
参加作品
テレビアニメ
- 鉄腕アトム(1963-1966年) - 作画
- 新宝島(1965年) - 作画
- 孫悟空が始まるよー 黄風大王の巻(パイロット版)(1966年) - 作画
- 悟空の大冒険(1967年) - 作画
- ファイトだ!!ピュー太(1968年) - 作画・演出(第5話)※演出デビュー作
- 巨人の星(1968-1971年) – 絵コンテ・演出
- ムーミン(1969-1970年) - 絵コンテ
- あしたのジョー(1970-1971年) - 各話演出
- 天才バカボン(1971年) - 監督(シリーズ前半{{Efn2|全40回中、第1回から第22回まで担当。}})※初監督作品
- ルパン三世 (TV第1シリーズ)(1971-1972年) - 絵コンテ
- 国松さまのお通りだい(1971-1972年) - 演出(第32話)
- アニメドキュメント ミュンヘンへの道(1972年) - 監督(アニメーション監督)
- ジャングル黒べえ (1973年) - 絵コンテ
- ドラえもん(日テレ版)(1973年) - 絵コンテ
- ワンサくん(1973年)各話演出
- 荒野の少年イサム(1973-1974年) - 絵コンテ
- ゼロテスター(1973-1974年) - 脚本
- 空手バカ一代(1973-1974年) - 絵コンテ
- エースをねらえ!(1973-1974年) - 絵コンテ
- 侍ジャイアンツ(1973-1974年) - 絵コンテ
- 星の子チョビン(1974年) - 脚本
- ラ・セーヌの星(1975年) - 脚本
- ガンバの冒険(1975年) - 脚本
- タイムボカン(1975-1976年) - 脚本
- アンデス少年ペペロの冒険(1975-1976年) - 脚本
- 大空魔竜ガイキング(1976-1977年) - 脚本
- UFO戦士ダイアポロン(1976年) - 脚本
- ブロッカー軍団IVマシーンブラスター(1976-1977年) - 脚本
- ポールのミラクル大作戦(1976-1977年) - 脚本
- ろぼっ子ビートン(1976-1977年) - 脚本
- おれは鉄兵(1977-1978年) - 脚本
- 惑星ロボ ダンガードA(1977-1978年) - 脚本
- 超合体魔術ロボ ギンガイザー(1977年) - 脚本
- 無敵超人ザンボット3(1977-1978年) - 脚本
- 無敵鋼人ダイターン3(1978-1979年) - 脚本
- 未来少年コナン(1978年) - 脚本
- ベルサイユのばら(1979-1980年) - 絵コンテ
- ザ☆ウルトラマン(1979-1980年) - 脚本
- サイボーグ009(1979-1980年) - 脚本
- アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険(1979年) - 脚本
- 太陽の牙ダグラム(1981-1983年) - キャラクターデザイン・絵コンテ
- 名犬ジョリィ(1981-1982年) - 脚本
- 白い牙 ホワイトファング物語(1982年) - 監督・絵コンテ
- ゲームセンターあらし(1982年) - 脚本
- 戦闘メカ ザブングル(1982-1983年) - 脚本
- 太陽の子エステバン(1982-1983年) - 脚本
- 装甲騎兵ボトムズ(1983-1984年) - 脚本・絵コンテ
- 子鹿物語(1983-1985年) - 脚本
- GALACTIC PATROL レンズマン(1984-1985年) - 脚本
- 機甲界ガリアン(1984-1985年) - 脚本
- ボスコアドベンチャー(1986-1987年) - 脚本
- (1986-1988年) - 日本側監督・脚本
- シティーハンター(1987-1988年) - 脚本
- (1989-1990年、蘭米合作) - 日本側監督
- スペースオズの冒険(1992-1993年) - 総監督・キャラクター監修・シリーズ構成
- ビット・ザ・キューピッド(1995-1996年) - 脚本・シリーズ構成
- モンキーマジック(1999-2000年) - 脚本・シリーズ構成
- 星のカービィ(2001-2003年) - 総監督・シリーズ構成・脚本・絵コンテ
長編アニメ映画
- ルパン三世 ルパンVS複製人間(1978年、配給:東宝 製作:東京ムービー) - 監督・脚本・絵コンテ・演出・キャラクターデザイン(一部)
- SF新世紀レンズマン(1984年) - 脚本
- Mother 最後の少女イヴ(1993年) - 脚本
短編アニメ
- ガロン(2013年) - 監督・脚本
OVA
- 装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー(1985年) - 脚本
- 装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ(1988年) - 脚本
- 海の闇、月の影(1989年) - 脚色
- 装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端(1994年) - 脚本(全話)
- 沈黙の艦隊(1995-1998年) - 脚本
- 装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ(2007-2008年) - 脚本・シリーズ構成
舞台
- スターガーディアン(1986年) - 原作・脚本・総監督
- 楽しいムーミン一家 - 脚本
- 白雪姫と7人のこびと - 脚本
- オズの魔法使い - 脚本・演出
著作
- 『SF新世紀レンズマン』(E・E・スミス原作、講談社X文庫)1984
- 『GALACTIC PATROL レンズマン2 バレリア星救出作戦』(E・E・スミス原作、講談社X文庫)1984
- 『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』(アニメージュ文庫)徳間書店 1988年
- 『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(アニメージュ文庫)徳間書店 1988年
- 『愛蔵版 装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(徳間書店) 2005年
- アニメージュ文庫刊の2作品に加筆・修正を行ったものをまとめ、単行本化したもの
- 『装甲騎兵ボトムズペールゼン・ファイルズ』(矢立肇・高橋良輔原作、ホビージャパン)2009
- 『最後の少女イヴ・オリジナルストーリー』マナメッセ 1993年
- 『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』(矢島道子共著、朝日選書)2003年
メディア出演
テレビ
- ルパン三世 ルパンVS複製人間【アニメ術】(2020年、WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽) - インタビュー
注釈
出典
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/04/20 03:46 UTC (変更履歴)
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