マット・ムーア : ウィキペディア(Wikipedia)

マット・ムーア(, 本名:マシュー・コディ・ムーアMatthew Cody Moore, 1989年6月18日 - )は、アメリカ合衆国フロリダ州オカルーサ郡出身のプロ野球選手(投手)。左投左打。現在はMLBのロサンゼルス・エンゼルス所属。愛称はメイティ・ムーGiants Players Weekend nicknames explained MLB.com (2017年8月24日) 2017年9月29日閲覧。

経歴

プロ入り前

フロリダ州で生まれ、ニューメキシコ州のアルバカーキ郊外で育つ。また、父がアメリカ空軍のヘリコプター部隊に所属する軍人だったため、その仕事の関係で7歳から11歳までの間は沖縄の嘉手納基地で過ごした経験がある。高校時代から91~92mph(約146.5~148.1km/h)を記録していた速球の評価は高かったが、変化球の精度と制球力に難があると言われていたSlowinski, Steve (2011-09-12). Matt Moore: Tampa Bay’s Best Ever Pitching Prospect. FanGraphs Baseball(英語). 2011年9月23日閲覧。

プロ入りとレイズ時代

のMLBドラフト8巡目(全体245位)でタンパベイ・デビルレイズから指名され、プロ入り。プロ初年度は傘下のアパラチアンリーグのルーキー級で20回を投げ、29奪三振を奪うも16四球を出す粗削りな内容であった。

からは球速が飛躍的に上昇する一方で、与四球率は年々低下し、好成績を残していった。

はA級に所属し、123回で176奪三振を記録した。

はA+級シャーロット・ストーンクラブズに所属し、144回で208奪三振を記録し、マイナー屈指の有望株に成長する。2010年シーズン終了後には、「ベースボール・アメリカ」誌選定の有望株ランキングにおいて、既にメジャーへ昇格していたジェレミー・ヘリクソンに次いで球団内2位、全体でも15位の評価を受けたStaff Report(2011-02-23). 2011 Top 100 Prospects: 1-20. Baseball America.com(英語). 2011年9月23日閲覧。

はAA級モンゴメリー・ビスケッツとAAA級ダーラム・ブルズで合計27試合に先発し、6月16日にはノーヒットノーランを達成するなど、12勝3敗、防御率1.92、210奪三振、WHIP0.95という圧倒的な成績を残し、マイク・トラウト、ブライス・ハーパーと並ぶマイナー最高級の有望株と見なされるようになる。9月14日のボルチモア・オリオールズ戦でメジャー初登板。初先発となった9月22日のニューヨーク・ヤンキース戦では5回を投げ、11奪三振無失点の快投でメジャー初勝利を挙げたTB@NYY: Moore impresses, fans 11 in first MLB start(動画)。初先発での奪三振数11は2009年にウェイド・デービスが記録した9を更新する球団新記録であり、ヤンキース相手に5回以下の投球回数で11奪三振以上を記録した史上初の投手となったSilva Drew (2011-09-22). Matt Moore dominates Yankees in first MLB start. HardballTalk(英語). 2011年9月23日閲覧。プレーオフのロースターにも入り、ジョー・マドン監督はテキサス・レンジャーズとの地区シリーズ第1戦の先発にムーアを指名した。メジャーでの先発経験が1試合のみの投手がプレーオフの試合で先発した例は過去になく、奇襲とも言える抜擢だったが、その期待に見事に応え、7回2安打無失点で勝利投手になったChisholm, Gregor (2011-09-30). Performer of the game: Rays rookie Moore. raysbaseball.com(英語). 2011年10月1日閲覧。同年12月9日にレイズと5年1400万ドル(オプションを含めると最大で8年3750万ドル)で契約を延長したBoeck, Scott (2011-12-09). Rays lock up pitching prospect Matt Moore to long-term deal. USATODAY.com(英語). 2011年12月10日閲覧。

は31試合に先発登板して11勝11敗、防御率3.81、175奪三振を記録した。

7月31日に左肘の故障で15日間の故障者リスト入りした。9月3日に復帰。この年は27試合に登板し、自己最多の17勝(4敗)、防御率3.29、143奪三振の成績を残した。

は開幕ロースター入りし、開幕後は2試合に登板したが、4月8日に左肘の故障で15日間の故障者リスト入りした。4月15日にトミー・ジョン手術を翌週に行うことが発表され、シーズンを全休することとなった。5月27日に60日間の故障者リストへ異動した。

、戦列に戻り7月2日のクリーブランド・インディアンス戦にてシーズン初登板を果たした。そこから12試合に先発登板したが、3勝4敗と負け越して防御率も5.43に終わり、完全復活とはならなかった。

ジャイアンツ時代

8月1日にマット・ダフィー、ルーシャス・フォックス、マイケル・サントスとのトレードで、サンフランシスコ・ジャイアンツへ移籍した。8月25日のロサンゼルス・ドジャース戦、9回二死までノーヒットで3四球だけに抑え、ノーヒットノーランまであと1人と迫ったが、この試合の133球目でコーリー・シーガーに単打を打たれ偉業達成を逃した。ジャイアンツ加入後は12試合に登板、6勝5敗、防御率4.08、レイズとの2球団合算では33試合に先発登板、13勝12敗、防御率4.08の成績で、自身3年ぶりの2桁勝利を記録した。10月11日、シカゴ・カブスとの地区シリーズ第4戦に先発。カブス打線を8回まで2安打、デビッド・ロスの本塁打と犠飛による2失点に抑え10三振を奪い、バッティングでも1-1の同点で迎えた4回に一死満塁のチャンスでカブス先発のジョン・ラッキーから一・二塁間を破る勝ち越しの適時打を放つ活躍を見せた。3点リードで勝利投手の権利を持ってマウンドを降りたが、9回に後続が逆転を許し勝敗はつかず、チームは1勝3敗でディビジョンシリーズ敗退に終わった。オフの11月3日に球団がのオプションを行使した。

2017年は先発ローテーションの一員として32試合(内先発31試合)に登板したが、リーグ最多の15敗、107自責点を喫し、6勝、防御率5.52、WHIP1.53に終わるなど散々なシーズンに終わった。

レンジャーズ時代

2017年12月15日に、イスラエル・クルーズとのトレードで、テキサス・レンジャーズへ移籍した。

オフの11月2日にFAとなった。

タイガース時代

2018年11月28日にデトロイト・タイガースと年俸250万ドルで契約合意した。

はシーズン2試合目の登板で、右膝に打球を当てて負傷退場。4月17日に半月板の手術を受けて、残りシーズンを全休した。オフの10月31日にFAとなった。

ソフトバンク時代

2019年12月26日、福岡ソフトバンクホークスに入団することが発表された。

7月の練習中に左ふくらはぎを痛め約2か月の離脱。復帰戦となった8月29日の北海道日本ハムファイターズ戦(福岡PayPayドーム)で5回無失点と好投しNPB初勝利を記録。9月以降は基本的に週末カードの初戦となる金曜日の先発を任され続け、NPB移籍後2度目の中5日登板となった10月22日の日本ハム戦(札幌ドーム)では7回無失点と好投しチーム15年ぶりの11連勝に貢献。8月末から11試合に先発し6勝を挙げ、リーグ優勝に貢献した。読売ジャイアンツとの日本シリーズの第3戦(11月24日)に先発し、7回無失点無安打に抑えて勝利投手となった。この活躍により優秀選手に選ばれた。12月2日付でNPBから自由契約選手として公示された2020年度自由契約選手 NPB日本野球機構。

フィリーズ時代

2月3日にフィラデルフィア・フィリーズと300万ドルの単年契約を結んだ。24試合(うち先発13試合)に登板したがわずか2勝に終わり、オフの11月3日にFAとなった。

レンジャーズ復帰 

3月14日にテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加することになった。開幕はAAA級ラウンドロック・エクスプレスで迎え、4月16日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りした。オフの11月6日にFAとなった。

エンゼルス時代

2023年2月16日にロサンゼルス・エンゼルスと1年755万ドルの契約を結んだ。エンゼルスでは41試合(44回)に登板し、4勝1敗、防御率2.66、49奪三振と好投していたが、チームの「ぜいたく税」回避に伴う総年俸削減の対象となり、8月29日に他の5選手とともにウェイバーにかけられた。

ガーディアンズ時代

2023年9月1日にクリーブランド・ガーディアンズが獲得を発表した。ガーディアンズでは5試合に登板した。

マーリンズ時代

2023年9月19日にウェイバー公示を経てマイアミ・マーリンズに移籍した。マーリンズでは4試合に登板して1勝を挙げたが、オフの10月5日にFAとなった。

エンゼルス復帰

2024年1月27日に前シーズン途中まで在籍したエンゼルスと1年900万ドルの契約を結んだ。

人物

レイズではメジャー昇格後の2011年より背番号55を着用していた。翌2012年、松井秀喜が移籍してきたため、ムーアは松井に背番号を譲ろうとしたものの、松井自身はこれを固辞し、背番号35を着用した。

選手としての特徴

+ 2018 - 2019年の投球データ 球種 配分% 平均球速mph(km/h) 水平運動in 鉛直運動in
フォーシーム 58 93 (150) 7 9
カーブ 19 81 (131) -3 -7
チェンジアップ 13 84 (135) 10 4
カッター 10 90 (145) 1 7

スリークォーターから平均球速152km/h、最速157.6km/hを計測するフォーシーム、ツーシーム、さらに平均142km/hのカッターの速球3種と、ナックルカーブ、チェンジアップ、スライダーを持ち球とする。メジャー昇格当初は、フォーシーム、チェンジアップ、スライダーの3球種だったが、2012年にツーシームを、2015年にはカッターとナックルカーブを新たに持ち球に加えた。カッターを投げ始めた当初はスライダーと使い分けていたが、2016年からはスライダーを一切投げなくなり、その分だけナックルカーブの割合が増している。ちょうどトミー・ジョン手術明けから球威・球速が著しく低下しており、2015年以降のフォーシームの平均球速は約147km/hで、実に約5km/hも低下している。

マイナーでの通算奪三振率は12.7を記録している。一方で2012、2013年とも与四球率が4を超えており、制球難が課題とされてきたが、トミー・ジョン手術以降は球威不足をカバーするため、制球重視のスタイルに移行している。2015年の与四球率は3.3でほぼMLB平均レベルだった。

詳細情報

年度別投手成績

TB3100010011.000409.1913001520332.891.29
3131000111100.500759177.11581881571758185753.811.35
272711017400.810642150.111914761414317158553.291.30
220000200.0004410.0101500600332.701.50
12120003400.42927863.07492314466040385.431.54
21210007700.500549130.01252040051093162594.081.27
SF12120006500.54528968.15953211693031314.081.33
'16計3333000131200.520838198.11842572161786193904.081.29
323100061500.286790174.12002767371481001161075.521.53
TEX39120003802.273471102.0128194115866082776.791.66
DET220000000----3310.030100900000.000.40
ソフトバンク13130006300.66732078.06472204891032232.651.10
PHI24130002401.33333473.078153842633054516.291.59
TEX63000052514.71430474.04933821838020161.951.18
LAA41000041020.80017544.03361222491014132.661.02
CLE500000001254.291200800223.862.36
MIA4000010011.000184.040111300000.001.25
'23計50000051022.83321852.24671533601016152.561.16
MLB:12年3181641106663540.51247511094.11058139460213910126735705304.361.39
NPB:1年13130006300.66732078.06472204891032232.651.10
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績

年度球団投手(P)
試合刺殺補殺失策併殺守備率
2011TB311001.000
20123162023.929
201327917011.000
2014201001.000
2015123810.917
20162171512.957
SF121310.800
'16計3381822.929
20173232330.897
2018TEX3921111.929
2019DET20310.750
2020ソフトバンク1331210.938
2021PHI244810.923
2022TEX6322001.000
2023LAA4111001.000
CLE510001.000
MIA40000
'23計5021001.000
MLB31840113117.933
NPB1331210.938
  • 2023年度シーズン終了時

表彰

NPB
  • 日本シリーズ優秀選手賞:1回(2020年)

記録

MLB
  • オールスターゲーム選出:1回(2013年)
NPB
  • 初登板・初先発登板:2020年6月23日、対埼玉西武ライオンズ1回戦(メットライフドーム)、4回6失点(自責4)で敗戦投手
  • 初奪三振:同上、2回裏に外崎修汰から空振り三振
  • 初勝利・初先発勝利:2020年8月29日、対北海道日本ハムファイターズ14回戦(福岡PayPayドーム)、5回無失点

背番号

  • 55(2011年 - 2016年途中、2018年、2023年 - 同年途中)
  • 45(2016年途中 - 2017年、2022年、2023年途中 - 同年終了)
  • 51(2019年)
  • 37(2020年)
  • 48(2021年)

注釈

出典

関連項目

  • メジャーリーグベースボールの選手一覧 M
  • 北米・欧州出身の日本プロ野球外国人選手一覧
  • 福岡ソフトバンクホークスの選手一覧

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/03/13 01:05 UTC (変更履歴
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