原田康子 : ウィキペディア(Wikipedia)

原田 康子(はらだ やすこ、1928年1月12日 - 2009年10月20日)は日本の小説家である。本名は佐々木康子(旧姓:原田)。

来歴・人物

1928年(昭和3年)東京府生まれ、2歳から北海道釧路市で育つ ※山川黎「原田康子 : 夢みるころを過ぎても」末尾の原田のプロフィール紹介。。市立釧路高等女学校(現・北海道釧路江南高等学校)卒業後、1949年から(のちの釧路新聞)に勤務。

1949年(昭和24年)に釧路の同人雑誌『北方文芸』に処女作「冬の雨」を発表し、以後も同誌およびその後継誌に相当する『北海文学』を中心に短編・長編を発表する。1951年(昭和26年)、東北海道新聞社の同僚と結婚。1953年(昭和28年)、前年10月に鳥居省三らが釧路で創刊した同人雑誌『北海文学』 ※収録は2018年2月1日。に同人として参加 ※記述の典拠として鳥居省三『釧路文学運動史 : 戦後編』(釧路市〈釧路叢書〉、1978年)が示されている。、初めての長編小説「廃園」を発表。1954年(昭和29年)、新潮同人雑誌賞に「サビタの記憶」で応募、最終候補に残って伊藤整らの高い評価を得る。翌1955年(昭和30年)から『北海文学』誌上に長編「挽歌」を10回に分けて連載、同人誌連載中から出版や映画化の打診があった。1956年(昭和31年)に東都書房(講談社)から単行本『挽歌』として出版されると無名作家の単行本にもかかわらず翌年には113版(113刷)を数えるベストセラーとなり、五所平之助監督による映画化も大きな反響を呼んだ ※収録は2018年2月1日。。『挽歌』は翻訳され、海外数ヶ国でも出版されている。また1991年には、『満月』が『満月 MR.MOONLIGHT』のタイトルで映画化されている。

晩年まで意欲的な創作活動を展開し、生涯に『挽歌』(1956年)で第8回女流文学者賞を、『』(1999年)で第38回女流文学賞を、『』(2002年)で第37回吉川英治文学賞を受賞している。

人気作家となった後も、北海道在住のまま執筆活動を続けていたことでも知られ、2003年(平成15年)に北海道文化賞、北海道新聞文化賞を受賞した。また、競馬、将棋を趣味とし、それらについてのエッセイ集『はなれ駒あそび駒』もある。1998年(平成10年)の将棋王座戦の観戦記を執筆し、翌年、第11回将棋ペンクラブ大賞(観戦記部門賞)を受賞した。

2009年(平成21年)10月20日、肺炎のため札幌市内の病院で逝去「原田康子さん死去:作家:『挽歌』ベストセラー81歳」 毎日新聞 2009年10月22日、14版、29面。 ※生前の原田の動画を含む。。

2023年(令和5年)1月28日から4月23日まで釧路文学館で生誕95年を記念した企画展「原田康子の足跡とその作品展」が開催された。

作品リスト

  • 『挽歌』 東都書房 1956 (のち角川文庫、新潮文庫)
  • 『サビタの記憶』 新潮社 1957 (のち角川文庫、『サビタの記憶・廃園』1991 新潮文庫)
  • 『廃園』 筑摩書房 1958 (のち角川文庫)
  • 『輪唱』 東都書房 1958 (のち角川文庫)
  • 『いたずら』 東都書房 1960 (のち集英社文庫)
  • 『病める丘』 新潮社 1960 (のち新潮文庫)
  • 『殺人者』 中央公論社 1962 (のち角川文庫、新潮文庫)
  • 『望郷』 文芸春秋新社 1964 (のち文庫、角川文庫)
  • 『北の林』 新潮社 1968 (のち新潮文庫)
  • 『北国抄』 読売新聞社 1973 (のち角川文庫)
  • 『虹』 作品社 1979 (のち集英社文庫)
  • 『日曜日の白い雲』 講談社 1979 (のち講談社文庫、角川文庫)
  • 『素直な容疑者』 作品社 1980 (のち講談社文庫、角川文庫)
  • 『遠い森』 作品社 1980 (のち集英社文庫)
  • 『恋人たち』 新潮社 1982 (のち新潮文庫)
  • 『鳥のくる庭』 講談社 1982 (のち講談社文庫)
  • 『風の砦』 新潮社 1983 (のち新潮文庫、講談社文庫)
  • 『満月』 朝日新聞社 1984 (のち新潮文庫)
  • 『星の岬』 集英社 1985 (のち集英社文庫)
  • 『イースターの卵』 朝日新聞社 1986 (のち朝日文庫)
  • 『窓辺の猫』 講談社 1988 (のち講談社文庫)
  • 『はなれ駒あそび駒』 講談社 1991 (のち講談社文庫) ※エッセイ集
  • 『聖母の鏡』 新潮社 1997 (のち新潮文庫)
  • 『蝋涙』 講談社 1999 (のち講談社文庫)
  • 『父の石楠花』 新潮社 2000
  • 『』 講談社 2002 (のち講談社文庫)

映像化作品

映画化

テレビドラマ化

  • 『挽歌』(1961年放送、1966年放送、1971年放送、1982年放送)
  • 『私は忘れたい』(1972年 - 1973年放送、1977年放送) ※原作は「星から来た」(『北の林』所収)。
  • 『春のもつれ』(1974年放送) ※原作は『輪唱』。
  • 『さよならの夏』(1976年放送) ※原作は『廃園』。

関連文献

  • 永田秀郎 『「北海文学」の航跡 : 作家、原田康子「挽歌」のナビゲーション』 言海書房、2003年5月。
  • 原田康子 著、北海道文学館 編 『原田康子の北海道 : 小説「挽歌」から50年』 北海道立文学館、2005年9月。
  • 北海道文学館 編 『原田康子 : 「挽歌」から「海霧」まで』 北海道新聞社、2010年10月。
  • 盛 厚三 『「挽歌」物語 : 作家原田康子とその時代』 釧路市教育委員会〈釧路新書〉、2011年10月。

注釈

出典

参考文献

関連項目

  • 小松伸六 - 釧路生まれの文芸評論家。原田を発見し、高く評価した。
  • 大崎善生 - 北海道札幌市出身の作家。実家が原田宅の隣にあり小学校時代に交流があった。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2023/12/14 23:11 UTC (変更履歴
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike and/or GNU Free Documentation License.

「原田康子」の人物情報へ