長沢美樹 : ウィキペディア(Wikipedia)

長沢 美樹(ながさわ みき、1970年7月11日 - )は、日本の声優、舞台女優、ラジオパーソナリティ。北海道帯広市生まれ、福島県郡山市育ち。アトミックモンキー名誉会長、同社所属。劇団ヘロヘロQカムパニー所属。

経歴

小さい頃から本を声に出して読むことが好きであり、小学時代国語の時間に教師から指されて教科書を音読することが楽しみという子供だった。

小学生時代に『風と共に去りぬ』を見て映画のみならず漫画、小説などにも手を出し、その影響を受ける。中学時代は「校内放送をしなくちゃならないから、放送部員は掃除の時間にさぼれる」という理由で放送部に所属。昼休みに好きな音楽をかけ、紹介文を読むうちに声の仕事に興味を持つようになった。6年上の姉がアニメ好きで、姉から職業としての声優があることも教わって、アニメに興味を持つようになった。高校時代も放送部に所属して朗読、アナウンスコンクールなどに出場しており、練習するうちに「声の仕事ができたらいいな」と思うようになった。校内放送を担当しているうちに「面白かったよ」、「良い声だね」のような感想をもらえることがうれしくなり、高校生3年生の秋、進路決定に際して当初はアナウンサー志望であったが、最終的には声優となる道を選ぶ。声優になろうと思ったその日にアニメ雑誌『アニメージュ』を買いに行き、最初に見つけた勝田声優学院の案内書を請求した。しかし大雨でグチョグチョの案内書が届き、「声優になるな」ということだと一度は諦めかけたが、勝田側の手違いで再び案内書が届き、「やっぱり声優になる運命なんだ」と思ったという三木浩也編「今さら友だちのWA!!(長沢美樹→?)」『アニメV 1997年10月号』学習研究社、1997年10月1日、雑誌01591-10、111頁。。

大学受験に失敗し、両親に東京の予備校に通うという条件に週1回の養成所に通うことを認めてもらって一人暮らしをしながら予備校と養成所に通う。

両親は声優になることは反対していたが、「どうしてもなりたいから許してもらえないだろうか」と必死に説得していた。父は長い間反対していたが、母は途中からは応援してくれるようになったという。

勝田声優学院、俳協ボイスアクターズスタジオ第1期生。

勝田声優学院時代は、4年間通い、通常は3年間しか在籍できないが、講師に好きだった水鳥鐵夫がおり、水鳥が開いていたゼミをもう1年間受講したいと思い、勝田久に直談判をして「もう1年通わせてくれないか」と頼み込み、留年という形にしてくれた。その時に勝田には「前例がない」と渋っていたが、「前例がないなら前例を作ってください!」と頼み込んで認めてくれた。

水鳥と野沢雅子のレッスンを選択して、週2回通っていた。前述の通り、大学受験には案の定失敗し、2年目からは声優のレッスンに専念することになった。

勝田声優学院時代での最初のレッスンで勝田、「やる気がないのだったら、すぐにやめていいから帰りなさい」と言われた。あの厳しさがなかったら、もう少し甘い考えでしてしまったと語る。

レッスン中に怒鳴られて、あまりの怖さに泣いていた。それまでに演技経験なども全くなかったため、発声、滑舌といった基礎の基礎から全部、勝田声優学院で教わったことから、「あのとき教わっていて良かった」と思うことは2010年時点でもたくさんあった。一番心に残っている教えは、プロとしての心構えであり、勝田からは口癖のように「そんなことならお嫁さんになったほうがいい」と言われた。声優としてだけでなく、人間としての基礎の部分をたたき込まれたのが大きいと語る。

養成所2年目で仕事をくれたことがあったが、それが原因でクラスで仲間はずれになったこともあった。そんな中で、兄貴分の人物、同期が応援してくれた。

1年目2年目は、「このクラスで一番にならなきゃいけない」という思いが常にあった。その時に「発声で一番声を出せる人がいたら、その人より大きな声を出せるようになろう」、「演技で褒められた人がいたらその人のどこが良くて褒められたんだろう」、「その人よりいい演技ができるようになろう」、「とにかく一番にならなきゃ」とばかり考えており、「稽古虫」という渾名がつくほど人一倍、様々な稽古していたと語る。週に2、3回仲間で集まり稽古するほかに、風呂に入った時には五十音を全部言うようにする、「外郎売り」をつっかえずに言えなければ湯船から出てはいけないなど、長沢なりに方法を考えて練習していた。

声優としてのデビュー作は養成所時代のドラマCD『イカロスの翼』の乙女(石像)役。アニメでのデビューは『それいけ!アンパンマン』のクレヨンマン役。

1年後には東京俳優生活協同組合の所属になったが、色々なオーディションを受けて落ちまくり、「この先ずっと受からないのじゃないか」と真剣に悩んでいた。

オーディション不合格が続くので落ち込んでいた時、「今までオーディションを受けていても、合格することばかりを考えていて、お芝居を楽しんでいなかったな」「自分の100%を出し切れていないな、なんかもったいないな」とふと気がついた。

ディレクター、監督など素晴しいスタッフが一瞬でも注目してくれていたが、「緊張だけで終わらせるのはすごくもったいないな」とそれで「肩肘張るのやめよう、受からなきゃと思うのやめよう。それよりはこの瞬間自分の声を聞いてもらえたことに感謝しよう」と思った。

初めてオーディションで受かった作品はOVA『KEY THE METAL IDOL』。

当時は原稿をもらい、「私はこうやって演じてみたいということを素直にやってみよう」と思ったという。

転機になった作品は『新世紀エヴァンゲリオン』の伊吹マヤ役。個人的にうれしかった役は、『それいけ!アンパンマン』のクリームパンダ役である。その時は出演が決まる前から1年くらい収録見学をさせてくれた憧れの作品なため、「レギュラー出演できる」と決まった時には、うれしさでいっぱいで、2010年時点で収録の時は、幸せを噛みしめながら演じているという。

初主役は『吸血姫美夕』の美夕役となる。

その後、勝田声優学院からの同期で同じく俳協ボイスアクターズスタジオ第1期生だった関智一とともにアトミックモンキーに所属することになる。

人物・エピソード

『吸血姫美夕』に出演するまではどちらかというと活発なキャラクター役が多かったが、美夕役で初めて感情をあまり表に出さないキャラクターを演じた。そのため『吸血姫 美夕』を始めたばかりのころは、かなりとまどい、一所懸命抑えているつもりだったが、ふとしたときに感情を出し過ぎてしまうため、スタッフから「美樹ちゃんもっと抑えて抑えて」と注意されていた。感情を抑えた演技をしているとストレスが溜まり、収録が済んだ後にカラオケに行ってストレス発散をしていたという。

『吸血姫 美夕』と同じころからラジオ番組を担当してくれるようになった。ラジオではものすごくハイテンションになったりするため、ラジオ番組で長沢を知った人物は「あの長沢が美夕を演じるのか!」と驚いたようだった。逆に『吸血姫 美夕』から長沢を知った人物は、出演しているラジオを聴いてがっかりされたかもしれないといい、そのくらい、演じている役とラジオでの長沢はギャップがあった。ラジオは素のままに近い自分が出せ、毎週「こんなことがあったんだよ」とコンスタントに出し、アニメ番組とはまったく違った感じがしていた。ただし、切り売りしていくような一面もあるため、ラジオ番組を週4本していた時は、どの番組でどんな話をしたのか解らなくなることもあった。

切り売りが激しくなったきっかけは、『智一・美樹のラジオビッグバン』で、「昔、関智一と付き合っていた」とカミングアウトした瞬間は2010年時点では忘れられないという。そんな話になるとは思っていなかったスタッフも騒然としていたが、リスナーからの反響が大きすぎて、一気に汚れ人生に転落したような気がしていた。しかし「そうなって損をしたか」というとそうでもなく、「あの汚れっぷりなら、こんな役も演じられるんじゃないか」のような話をくれることもあり、演技の幅が広がったんではないかと語る。

声優としての仕事、ラジオ番組以外に劇団も活動しているが、当初は舞台演技をするつもりは全くなかった。無知だったころは、職業としての声優は国語の授業で教科書を音読するようなもので、「舞台演技の素養が必要だ」とは思っていなかった。

勝田声優学院の2年目の舞台演技で初めて「舞台ってこんなに面白かったんだ」と気づいたくらいだった。レッスンを通して舞台演技の面白さに惹かれていくうちに、劇団に所属して定期的に舞台を活動している声優も多く、「私もいずれそうできたらいいな」と思うようになった。その時に、関智一から、「一緒に劇団をやらないか」と誘われた。講師から「同期のメンバーで劇団を作ると内輪受けになりがちで、自分の成長に繋がらない」とアドバイスをくれたこともあったため、関の誘いは断り、先輩が活動している劇団に入団するつもりだった。ところが関が会うたびに「自分達でやりたいものをやるのが一番楽しいよ。道を拓こうよ」と誘いをかけてきて、数カ月続いていたころ、根負けして「解りました。一緒にやらせていただきます」と折れた。当時、劇団で日記をつけていたが、そこに「長沢、陥落」と書かれていたという。

子供の頃は『機動戦士ガンダム』が大好きで、宇宙に行きたくて宇宙飛行士になる夢も持っていた。自分の婿はアムロ・レイと心に決めていて、自分に子供が生まれたら「アムロとレイ」と名前をつけようと思っていたが、周囲から反対された。後に安室奈美恵がデビューした際は「先を越されたな」と思ったりしたとも。

ラジオ冒頭で「がっつんわ!!」と挨拶するのが恒例である。長沢が作るカレーライスはそれに由来して「がっつんカレー」と呼ばれている。

養成所時代は東京都渋谷区原宿でウエイトレスをしていた。

19歳当時、ロンドンブーツ1号2号の田村淳とはイタリアンレストランのアルバイト仲間(田村は調理担当)だった。

趣味・特技は木刀で素振り。

出演

太字はメインキャラクター。

テレビアニメ

劇場アニメ

OVA

Webアニメ

  • ショートアニメ(2023年、パム)

ゲーム

ドラマCD

  • ドラマCD『アニメ店長』シリーズ(星井ラミカ
  • エリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士2〜(エルフィール・トラウムエリー〉)
    • ドラマCDエリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士2〜1
    • エリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士2〜2
    • エリーのアトリエ ヴォイスコレクション
    • ゼストCDブックVol.6エリーのアトリエ〜ザーブルグの錬金術士2〜
  • KEY THE METAL IDOL RADIO PROGRAM #1「友だち」(厨川さくら)
  • ギリシャ・ローマ神話2 イカロスの翼(石像〈乙女〉)
  • 1999 花とゆめオリジナルドラマCD『フルーツバスケット』(草摩紅葉
  • Weiß kreuz Dramatic Image Album(北川由美)
  • 殻の中の小鳥ドラマCD(クレア・バートン)
  • KIRAI(遠藤の彼女)
  • 銀河ロイド コスモX IN ヒーロークロスライン ドラマCD(三ノ輪涼子)
  • ドラマCD『Good Morning ティーチャー』(海野綾)
  • グラビテーションドラマCDシリーズ(レイジ)
  • ごめんなさいと言ってみろ(阿見)
  • 『スキップ・ビート!』ドラマCD(最上キョーコ)
  • ストリートファイターZERO2外伝 さくら・もっとも危ない女子高生(ケイ)
  • ストリートファイターZERO2外伝 さくら・もっとも危ない文化祭(ケイ)
  • Sneaker CD Collection 『されど罪人は竜と踊る』(ジヴーニャ・ロレッツォ)
  • 世紀末プライムミニスター(長嶋美紀
  • sense off 〜a scared story in the wind〜(御陵透子
  • 太陽の少女インカちゃん(への字)
  • 天からトルテ!CDドラマ(佐倉繭理)
  • 『はやて×ブレード』ドラマCD(宮本静久)
  • 百歌声爛 -女性声優編III-
  • 『Fight 〜conte〜』(氷上恭子とのコントCD)
  • 『ふしぎ遊戯 玄武開伝』シリーズ(女リムド)
  • プリンセスナイン 如月女子高野球部 CDドラマ 燃える対決!裸のナインたち(早川涼
  • モスラ'61(小美人)
  • 勇者指令ダグオンシリーズ(戸部真理亜
    • 〜スペシャルドラマ1〜「選挙で激突! トライダグオン」
    • 〜スペシャルドラマ2〜「サルガッソB級宇宙人十番勝負」
    • 〜スペシャルドラマ3〜「山海高校ミステリーツアー〜湯けむり美少女失踪事件」
    • CDシネマ1 〜春はあけぼの〜
    • CDシネマ2 〜夏のツー・ショット〜
    • CDシネマ3 〜それぞれの秋〜
    • CDシネマ4 〜冬、来たりなば…〜
    • スペシャルドラマ 〜いいやつ〜
    • スペシャルドラマ2 〜悪いやつ〜
  • 『私は好き』
  • ONE 〜輝く季節へ〜(柚木詩子)

カセットブック

  • アニメイトカセットコレクション 機動戦艦ナデシコ 「ナデシコ対ゲキ・ガンガー対宇宙人」……って、オイ!?(マキ・イズミ)
  • アニメイトカセットコレクション 機動戦艦ナデシコ 2 ナデシコ・ばらえてい(仮題)(マキ・イズミ)

吹き替え

映画

ドラマ

  • カウボーイビバップ(ジュディ)

アニメ

  • 装甲救助部隊レストル(オミン・キサラギ
  • ヘラクレス(女性)

特撮

  • 特捜ロボジャンパーソン(1993年、ロボット・ジェルソミーナの声)
  • ブルースワット(1994年、TVレポーター役)
  • 激走戦隊カーレンジャー(1996年、シグエの声)

映画

  • Wonderful World(2010年) - 南智子

ラジオ

  • 長沢美樹のCreator's Cafe(文化放送:1996年10月1日 - 1997年4月1日)
  • 長沢美樹のあやかしラジオくの一番(文化放送:1997年4月9日 - 10月1日)
  • 智一・美樹のラジオビッグバン(文化放送:1998年4月11日 - 2014年9月28日)

ラジオドラマ

  • 銀河ロイドコスモX ヒーロークロスラインにクロスせよ!(三ノ輪涼子)※智一・美樹のラジオビッグバン内にて
  • 臨死!!江古田ちゃんinオールナイトニッポン(江古田ちゃん) - オールナイトニッポンモバイルにて配信。
  • 井上喜久子のアフタヌーンラジオ(講談社・アフタヌーンKCまつり公式サイト・第5回:2010年3月6日ゲスト)
    • 番組冒頭に『臨死!!江古田ちゃん』ほかがコラボレートした「コラボムービー」(ラジオドラマ+静止画)を配信。(『臨死!!江古田ちゃん』江古田ちゃん役ほか)

舞台

  • ヘロヘロQカムパニー作品
  • 長沢美樹プロデュース
  • 新・幕末純情伝
  • TRANS
  • ビューティフルサンデー
  • カプセル兵団
    • 「ダストシューター」(2003年5月3日-5日)
    • 「D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜」(2004年1月28日 - 2月1日)
    • 「DUSTSHOOTERS-ダストシューターズ-」(2013年2月28日 - 3月3日)

テレビCM

  • JT HALFTiME缶コーヒー 「完熟豆」(1993年)

アプリ

  • CoCoICHIナビ(2017年、伊吹マヤ)

CD

  • CDアルバム わたしは好き(発売日 1998年4月19日)

その他コンテンツ

  • うごくこえプロジェクト 富士マリンプール音声案内(2019年)

出典

参考文献

  • 月刊ニュータイプ(1997年10月号SCENE OF CV II)

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/04/05 05:07 UTC (変更履歴
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike and/or GNU Free Documentation License.

「長沢美樹」の人物情報へ