黒沢清 : ウィキペディア(Wikipedia)

黒沢 清(くろさわ きよし、1955年〈昭和30年〉7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家、映画批評家、小説家。東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻教授。黒澤明とは血縁関係にない。

略歴

1955年、兵庫県神戸市に生まれる。六甲学院高等学校卒業。大学在学中より8ミリ映画の制作をはじめる。1980年、立教大学社会学部産業関係学科卒業。

立教大学では、自主映画製作集団「パロディアス・ユニティ」に所属した。同サークルには森達也塩田明彦らがいた森達也・安岡卓治 『A2』 現代書館、p.212、2002年4月10日。ISBN 978-4768476826。。蓮實重彦の「映画表現論」を受講し強い影響を受ける。1981年、8ミリ映画『しがらみ学園』が第4回ぴあフィルムフェスティバルに入選した。

大学4年生の時に雑誌『GORO』の対談で出会い知遇を得た長谷川和彦から声をかけられ、『太陽を盗んだ男』に制作助手として参加。1981年には相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』に助監督として参加して映画製作を学ぶ。その流れから、ディレクターズ・カンパニーの設立に参加し、同社制作のピンク映画『神田川淫乱戦争』で1983年に映画デビュー。

1984年、にっかつロマンポルノ『女子大生・恥ずかしゼミナール』を撮影するが、にっかつ側が納品を拒否したため、追加撮影を行い、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』と改題して1985年一般映画として公開した。

1989年、初のメジャー作品となる『スウィートホーム』が東宝系で公開。

1990年代には、主にテレビドラマとVシネマを中心に活動する。

1997年、『CURE』が第10回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、主演の役所広司が男優賞を受賞。同作はフランスの日本映画特集やオランダのロッテルダム映画祭など海外でも紹介され、国際的なブレイクを果たす。その2年後の1999年にはサンダンス・インスティテュートのスカラシップを獲得した脚本を基に監督した『カリスマ』が第52回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に選出された。

2001年、『回路』が第54回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。その2年後の2003年には『アカルイミライ』で同映画祭のコンペティション部門出品を果たす。その後、『ドッペルゲンガー』(2003年)、『LOFT ロフト』(2006年)、『叫』(2007年)などの作品をコンスタントに監督する。

2005年、上記の国際的な活躍が評価されて東京芸術大学が大学院映像研究科を新設するに伴い北野武など共に映像研究科の教授に就任し、監督業と並行して大学の映像教育にも携り、濱口竜介らを輩出する。

2008年、『トウキョウソナタ』が第61回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」審査員賞、第3回アジア・フィルム・アワード作品賞を受賞した。

2012年、初の連続テレビドラマ『贖罪』を監督した。2013年、劇場用映画としては5年ぶりとなる監督作品『リアル〜完全なる首長竜の日〜』が公開される。同年、前田敦子主演の『Seventh Code』で第8回ローマ映画祭最優秀監督賞を受賞する。

2015年、浅野忠信深津絵里主演の『岸辺の旅』が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した。同年、第33回川喜多賞を受賞した。

2016年、初めて手掛けた海外作品『ダゲレオタイプの女』(原題:La Femme de la Plaque Argentique)が公開される。同年、第29回東京国際映画祭・SAMURAI賞、第58回毎日芸術賞を受賞した。

2018年、『散歩する侵略者』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。

2020年(令和2年)、『スパイの妻〈劇場版〉』が第77回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。GQ Men of the Year2020 フィルム・ディレクター・オブ・ザ・イヤー賞/アウディ・モスト・プログレッシヴ・マン賞を受賞。エル シネマアワード2020でエル ベストディレクター賞受賞蒼井優&黒沢清監督「スパイの妻」ELLE賞2冠(2020年12月7日)、日刊スポーツ、2020年12月13日閲覧。。第33回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞で監督賞受賞。 第94回キネマ旬報ベスト・テンで脚本賞を受賞(濱口竜介、野原位と共同)キネマ旬報 ベスト・テン、KINENOTE、2021年2月25日閲覧。。

2021年、紫綬褒章受章『官報』第250号、令和3年11月4日。

監督作品

長編映画

  • 神田川淫乱戦争(1983年)
  • ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年)
  • スウィートホーム(1989年)
  • 地獄の警備員(1992年)
  • CURE(1997年)
  • 蛇の道(1998年、制作・配給大映)
  • 蜘蛛の瞳(1998年、制作・配給大映)
    • 『蛇の道』『蜘蛛の瞳』は2作品ともオリジナルビデオ作品ではなく、劇場公開映画だったが、VHS化の際にプロデューサーの営業判断でそれぞれ『修羅の極道 〜蛇の道〜』『修羅の狼 〜蜘蛛の瞳〜』というⅤシネマ風のタイトルに変更された『映画秘宝』2021年1月号掲載の黒沢清インタビュー「黒沢清、90年代オリジナルビデオ時代を激白!」65ページ。その後、2020年にKADOKAWAからDVDが再発売された時に、本来のタイトルの『蛇の道』『蜘蛛の瞳』に戻された。
  • ニンゲン合格(1999年)
  • 大いなる幻影(1999年)
  • カリスマ(1999年)
  • 回路(2000年)
  • 降霊 KOUREI(2001年)
  • アカルイミライ(2003年)
  • ドッペルゲンガー(2003年)
  • LOFT ロフト(2006年)
  • 叫(2007年)
  • トウキョウソナタ(2008年)
  • 贖罪 インターナショナル版(2012年)
  • リアル〜完全なる首長竜の日〜(2013年)
  • 一九〇五(製作中止)
  • Seventh Code(2014年)
  • 岸辺の旅(2015年)
  • クリーピー 偽りの隣人(2016年)
  • ダゲレオタイプの女(2016年)
  • 散歩する侵略者(2017年)
  • 予兆 散歩する侵略者 劇場版(2017年)
  • 旅のおわり世界のはじまり(2019年)
  • スパイの妻〈劇場版〉(2020年)
  • 蛇の道(2024年)
  • Cloud クラウド(2024年)

短編映画

  • 2001 映画と旅(2001年)
  • 霊刑事(2003年、『刑事まつり』)
  • ココロ、オドル。(2004年)
  • 蟲たちの家(2005年、『楳図かずお恐怖劇場』)
  • ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト(2013年)
  • Chime (2024年)

オリジナルビデオ

  • ヤクザタクシー(1994年)
  • 打鐘 男たちの激情(1994年)
  • 勝手にしやがれ!! 強奪計画(1995年)
  • 勝手にしやがれ!! 脱出計画(1995年)
  • 勝手にしやがれ!! 黄金計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!! 逆転計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!! 成金計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!! 英雄計画(1996年)
  • DOOR III(1996年)
  • 復讐 運命の訪問者(1997年)
  • 復讐 消えない傷痕(1997年)

テレビ

  • 奴らは今夜もやってきた(1989年、『危ない話 夢幻物語』第2話)
  • もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵(1990年、関西テレビ『DRAMADAS』)
  • よろこびの渦巻(1992年、関西テレビ『DRAMADAS』)
  • 胸さわぎの15才(1993年、関西テレビ、第11・12話)
  • ワタナベ(1993年、関西テレビ、第1・2・11・12話)
  • 花子さん(1994年、関西テレビ『学校の怪談』第3回)
  • 音楽室の少女(1994年、関西テレビ『学校の怪談』第4回)
  • あの子はだあれ?(1994年、関西テレビ『学校の怪談』第11回)
  • 廃校奇譚(1997年、関西テレビ『学校の怪談f』)
  • 木霊(1998年、関西テレビ『学校の怪談G』)
  • 降霊(1999年、関西テレビ)
  • 花子さん(2001年、関西テレビ『学校の怪談 物の怪スペシャル』)
  • タイムスリップ(2002年、関西テレビ『愛と不思議と恐怖の物語 ウルチョラ・セブン』)
  • 風の又三郎(2003年、NHK-BShi『朗読紀行 にっぽんの名作』)
  • 贖罪(2012年、WOWOW『連続ドラマW』)
  • 予兆 散歩する侵略者(2017年、WOWOW)
  • スパイの妻(2020年、NHK BS8K)

配信ドラマ

  • モダンラブ・東京「彼を信じていた13日間」(2022年、Amazon Prime Video)

ミュージック・ビデオ

  • マーキーズ「とんがり娘」(1991年)
  • 相対性理論「FLASHBACK」(2016年)
  • 乃木坂46「Actually...」(2022年、CD収録バージョン)

出演作品

  • 太陽を盗んだ男(1979年) - 桜井国彦
  • お葬式(1984年) - 助監督
  • 星くず兄弟の伝説(1985年) - サロン魚の目の客
  • 誘惑者(1989年) - 図書館員
  • 夜のストレンジャー 恐怖(1991年) - タクシーの客
  • ミカドロイド(1991年)
  • パチンカー奈美(1992年)
  • したくて、したくて、たまらない、女。(1995年) - ジャーナリスト
  • 亡霊学級(1996年)
  • WiLd LIFe(1997年)
  • ピエタ(1997年) - 地下酒場の警官
  • 血を吸う宇宙(2001年) - 新聞配達
  • 曖昧な未来、黒沢清(2002年) -(ドキュメンタリー)
  • 3on3 スリー・オン・スリー(2003年)
  • ピンクリボン(2004年) - (ドキュメンタリー)
  • 輪廻(2006年) - 大学教授
  • 映画監督って何だ!(2006年)
  • 殺しのはらわた(2007年)
  • [[:en:Val_Lewton:_The_Man_in_the_Shadows|Val Lewton: The Man in the Shadows]](2008年) - (ドキュメンタリー)
  • オカルト(2008年) - 黒沢清(本人役で出演)
  • ヒッチコック/トリュフォー(2015年) - (ドキュメンタリー)
  • 星くず兄弟の新たな伝説(2018年) - 酒場で西部劇を語る客

その他

ドキュメンタリー

  • 世界のクロサワ「スパイの妻」を語る〜ベネチア国際映画祭17年ぶりの快挙〜(2020年10月、NHK BSP)
  • ドキュメント「スパイの妻」〜女優・蒼井優が挑む監督・黒沢清の世界〜(2021年4月11日、NHK BSP)

著書

評論

  • 映像のカリスマ 黒沢清映画史(1992年、フィルムアート社) 増補改訂版(2006年、エクスナレッジ)
  • 映画はおそろしい(2001年、青土社)新装版(2018年、青土社)
  • 黒沢清の映画術(2006年、新潮社)
  • 映画のこわい話 黒沢清対談集(2007年、青土社)
  • 恐怖の対談 映画のもっとこわい話(2008年、青土社)
  • 黒沢清、21世紀の映画を語る(2010年、Boid)

共編著

  • ロスト・イン・アメリカ(2000年、デジタルハリウッド出版局、青山真治・安井豊・阿部和重・塩田明彦共著、稲川方人・樋口泰人編)
  • 黒沢清の恐怖の映画史(2003年、青土社、篠崎誠共著)
  • 映画の授業 映画美学校の教室から(2004年、青土社、高橋洋・塩田明彦万田邦敏・たむらまさき共著)
  • 東京から 現代アメリカ映画談 イーストウッド、スピルバーグ、タランティーノ(2010年、青土社、蓮實重彦共著)
  • 日本映画は生きている(2010年、岩波書店、全8巻、四方田犬彦・吉見俊哉・李鳳宇共編)
  • 映画長話(2011年、リトルモア、蓮實重彦・青山真治共著)

小説

  • キュア(1997年、徳間文庫)
  • 回路(2001年、徳間書店)のち文庫

注釈

出典

関連文献

関連項目

  • 映画美学校
  • 東京芸術大学

外部リンク

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