ベスト・キッド


新境地に到達!「ベスト・キッド」に至るジャッキーの軌跡を振り返る

 年代、性別、国籍を飛び越えて、ジャッキー映画があらゆる人々を魅了するのは、誰もがわかるシンプルで本能的な“動き”と“笑い”、
そして普遍的なドラマに満ちているからだ。カンフー&アクション、ギャグ、そしてヒューマニズム──ジャッキー映画の重要3ポイントのベストはこれだ!
 ジャッキー映画の最大の魅力はその超絶なカンフー(格闘)とアクション。どこかコミカルながらすさまじい肉体技は、常に観る者を熱くさせる! 数ある傑作の中でも“ベストアクション”に称えたいのは、1対多勢のカンフーの妙技と身体を張った大スタント、そして山の斜面のバラック小屋を車で突き抜けるスペクタクルまで満載の「ポリス・ストーリー」。「スパルタンX」では、1対1のハイスピード・バトルの真骨頂を見せる。オールドスタイルのカンフーでは、いじめられっ子ドレをかばい、6人の少年たちの攻撃を相手の力を利用しながらさばいていく「ベスト・キッド」のワンシーンが圧巻だ。「酔拳2」でもほれぼれするような格闘シーンが連続、「ドラゴン・キングダム」では、ついにジェット・リーと初対決を果たした。
 ジャッキー映画には、誰もが感情移入できる普遍的なドラマがある。優しいヒューマニズムが織り込まれているから、観客はジャッキーの超人的な能力を見せつけられても、自分たちの分身として見ていられるのだ。いじめられっ子とジャッキーが心を通わせ、そしてともに成長していく「ベスト・キッド」は、その最たるもの。彼らが迎えるラストに、感動の涙が流れるのは確実だ。「ファースト・ミッション」で描いたのは、サモ・ハン・キンポー演じる兄との兄弟愛。「奇蹟/ミラクル」「プロジェクトBB」では、心優しいギャングやコソ泥たちが“善人”となる姿を描いた。「香港国際警察~」では心に傷を負ったベテラン刑事を熱演。若手刑事との師弟愛でもグッとさせる。
 ジャッキーをスターに押し上げたのは、その明るい人柄とコミカルな魅力が開花したから。“酔えば酔うほど強くなる拳法”という設定自体がすでにギャグ、記念碑的な意味でもジャッキー映画日本初公開作「酔拳」をベスト1に挙げたい。時計台からの生身ダイブが特筆される「プロジェクトA」も、その前後はギャグの宝庫。狭い路地を縫って繰り広げられる自転車チェイスはギャグとアクションの見事なコラボだ。「ベスト・キッド」では、オリジナル作を踏襲した箸でハエを……のシーンが秀逸。シリアス役とのギャップが笑いを誘う。ラストに“窓抜け”ギャグを用意して、バスター・キートンにオマージュを捧げたのが「プロジェクトA2」。「ラッシュアワー」でのクリス・タッカーとの掛け合いも楽しい。
 齢56歳、ハリウッド進出30周年となるジャッキー・チェン。カンフー、アクション、ギャグのすべてをやり遂げてきた彼が、最新リリース作「ベスト・キッド」でついに到達した新たな境地……それは“お師匠”役だ。本作は、1984年の同名傑作青春映画の舞台を中国・北京に移し、アメリカからやってきた少年ドレがいじめに立ち向かっていく姿を描くリメイク作だが、彼が学ぶのは“ミヤギ流空手”ではなく“カンフー”! そしてそれを伝授するカンフー・マスター=ミスター・ハン役こそ、ジャッキーなのだ。

 そのジャッキーの弟子となるドレを演じたのは、父ウィル・スミスと共演した「幸せのちから」で涙を誘う名演を披露したジェイデン・スミス。彼は実際にジャッキーのスタントマン・チームでカンフーを学び、劇中で見事なワザを披露している。プロデューサーに名を連ねるウィルの全面バックアップの下、ジャッキーとジェイデンは役柄以上の師弟関係を築き上げ、ジャッキーも「ジェイデンは僕が教えることを全部吸収してしまう」と絶賛だ。

 本作には、ジャッキー映画特有のジャッキー自身による壮絶なバウトもアクションもほぼ存在しない。だが、イジメに苦しむ主人公ドレにカンフーを通して人生への向き合い方を伝え、まるで父親のように寄り添うジャッキーは、従来とは異なった魅力を強く放っている。少年ドレが困難を乗り越え、そして過去に囚われたハンが自分を取り戻していく姿が、観る者の胸を熱くさせる「ベスト・キッド」。それは、ジャッキーがついに到達した“ベスト・オブ・ザ・ベスト”に他ならない。