




不滅の傑作「ゴッドファーザー」3部作を、フランシス・フォード・コッポラ監督監修のもと完全修復した「ゴッドファーザー コッポラ・リストレーションDVD BOX」がいよいよ発売される(ブルーレイ版も同時発売)。
この3部作は今なお、映画人や映画ファンから熱狂的に愛されている映画史上の名作だ。3部作全体で、イタリア系アメリカ人のコルレオーネ家の家族の絆を描いた壮大な一大叙事詩(=サーガ)になっており、とりわけ人気が高い第1作を撮影したのは、コッポラ監督がわずか31歳のとき。主役ドン・ビトー役は、トラブルメイカーとして悪い噂も多かったマーロン・ブランド(当時45歳)。もうひとりの主役、三男マイケル役は映画界ではまったく無名だった舞台俳優のアル・パチーノ(同30歳)。コッポラ監督も会社(ジョージ・ルーカスらと設立したアメリカン・ゾエロトープ)の借金返済のために引き受けた仕事だったが、経営不振で製作に乗り気でなかったパラマウント映画の上層部と衝突を繰り返しながらも、独自の世界観に貫かれた“奇跡的な傑作”をものにした。
その様子は、今回ボーナストラックに収録された特典映像「破綻しかけた傑作」でも詳しく描かれており、第1作を見た監督デビュー前のスティーブン・スピルバーグは「監督になるのをあきらめた」とまで証言しているほどで、コッポラ監督の卓抜なストーリーテリングは衝撃的だった。
今回のリストレーション版について、そんなコッポラ監督に独占でインタビューすることに成功した。
─「ゴッドファーザー」3部作を修復しようと考えたきっかけは?
「マスターネガは退色した箇所もあり、相当ネガに傷もついていたから、何とかフィルムを救いたいと考えた。3年前にスティーブン(・スピルバーグ)のドリームワークスが、パラマウント傘下になったので、“これでキミもパラマウントの一員だ。どうだ、『ゴッドファーザー』の修復をできないだろうか?』”と彼に手紙を書いて送ったんだよ」
─修復の作業はどんな風に進められたのですか?
「実作業はオペレーターがやったんだが、ネガの退色がひどい箇所もあるから、世界各地にある『ゴッドファーザー』のプリントを取り寄せて、シーンごとカットごとに最高のプリント状態にある色調に修復したわけだ。ボストンにいる(撮影監督のゴードン・)ウィリスからの意見も取り入れて、撮影当時 の色調にできるだけ近づけた。作業はネガフィルムのデュープから、テレビジョンの40倍の解像度にあたる4Kに落とし込んだデジタルデータに、ワンカットごとに色補正していったんだ。気の遠くなる作業といえるね」
─修復版を見た感想は?
「ウィリスの映像の特色である金色は美しいし、少し赤みを帯びたシーンもあって、撮影当時の色調に完璧に修復されていて大満足だ。黒色にも階調によっていろんな黒があるが、私の目に映ったのは完全な漆黒だった。思わず、“なんてことだ、私の記憶より美しい!”と叫んだよ」
特典映像「救出されたフィルム」に、その作業の詳細が描かれているが、今回のリストレーション版がこれまでのDVD用のデジタルリマスター版と明らかに違う場面ベスト3を挙げておきたい。
1.ドン・ビトー・コルレオーネに、葬儀屋ボナセーラが娘の仇をうつように懇願する有名なオープニングの書斎のシーン。ゴールデンアンバーとブラックを基調色とした場面で、コッポラ監督が「完全な漆黒だった」とコメントした黒に修復されている。(写真:左下)
2.マイケル・コルレオーネがイタリアンレストランで、麻薬密売人ソロッツォと悪徳警官マクラススキーを撃つシーン。今回の修復でネガの退色がひどく、もっとも作業が困難だったといわれる場面。(写真:中央)
3.娘のコニーの結婚式のシーン。コルレオーネ・ファミリー全員が揃うが、歌あり踊りありの場面はドキュメンタリーのようにとらえられるが、撮影時はハレーションを起こすほどの明るい場面だったらしく、今回初めてその色調に修復された。(写真:右下)
有名なオープニングの書斎のシーン
麻薬密売人ソロッツォと
娘のコニーの結婚式のシーン
「ゴッドファーザー」3部作は熱狂的なファンを生み出している。「LOST」のクリエイター、J・J・エイブラムスが製作総指揮を務めた「クローバーフィールド」(「スペシャル・コレクターズ・エディション」発売中、「同ブルーレイ」12月5日発売)の監督マット・リーブスもそのひとり。「これを見て監督を目指した。今回の修復版はうれしい。よく友達とセリフのマネをして遊んでいる」と大ファンであることを認めている。また、脚本家ド
リュー・ゴダードも「最初のセリフは“アメリカはいい国です”。すべてのセリフが素晴らしいんだ」と、全シーンを記憶していると言わんばかり。同作のLAプレミアではキャスト全員が「ゴッドファーザー」について「素晴らしい映画」「最高のストーリー」「コッポラは最高の監督」と大絶賛し、それぞれに好きなシーンをモノマネするほどの大人気だ。
米HBOの現代のマフィアを描いた人気ドラマ「ザ・ソプラノズ」 が「ゴッドファーザー」3部作を発想の源にしているのは有名な話だが、「クローバーフィールド」のようなジャンルの違う映画のスタッフ&キャストにまで、「ゴッドファーザー」神話は生きている。