eiga.com
『ハッスル&フロウ』 本年度アカデミー賞主演男優賞ノミネート! 歌曲賞“It's hard out here for a pimp”受賞!
イントロダクション ストーリー キャスト&スタッフ プロダクションノート サウンドトラック
プロダクションノート
メンフィスの街が生んだ普遍的な物語
『ハッスル&フロウ』 ストリートで汚れた商売に手を染めるDジェイが一度はあきらめた夢を叶える術を見つける『ハッスル&フロウ』の物語は、メンフィスという街のリズムに触発されて生まれたものだ。監督/脚本のクレイグ・ブリュワーは、この物語のルーツを次のように語る―「これはメンフィスという街そのものを語る物語だ。この街の出身だったエルヴィス・プレスリーとかアイザック・ヘイズの物語にすごく近いよね。彼らは恵まれた環境で生まれ育ったわけではなかったけど、その事実こそが彼らを彼らたらしめて、クリエイティヴな面においても個性を発揮させたんだよ」。
 この映画は自分自身の人生観を反映している、ともブリュワーは言う。「ぼくの父親は予期せぬ突然の死を迎えた。それで、ぼくは自分もいずれは死ぬんだと意識するようになった。父は心臓発作で亡くなったんだ。煙草も酒もいっさいやらない父が49歳で逝ってしまったら、50歳以降はおまけの人生なんだなって思うようになるものだよ。当時のぼくは27歳で、ちょうど人生の折り返し地点にいるような気になっていたんだ」。
 「『ハッスル&フロウ』は、もっとましな人間になりたい、もっと多くを手に入れたいと望む人間の生きざまを描いている映画なんだ」と、Dジェイ役のテレンス・ハワードも説明する。「誰にだって思い当たる節があると思うよ。彼らがくぐり抜けていく葛藤には、ぼくら全員の人生に共通しているものがある。観ている側もDジェイに共感して、彼がもっといい人間になろうと奮闘していく姿を自分自身に重ね合わせることができるはずだ。人間的で、とても普遍的な物語だよね。生まれ育った環境がどんなものであれ、より多くを望むことをあきらめてしまったら、情熱の炎は消えてしまうんだ」。
夢の実現に力を貸したジョン・シングルトン
『ハッスル&フロウ』ブリュワーが2000年に書き終えた脚本は、プロデューサーのステファニー・アレインを強く惹きつけた。3年間にもわたってハリウッドで脚本の売り込みを続けた彼女は、やがて、ヒット作『ワイルド・スピード×2』を撮り終えたばかりのジョン・シングルトン監督がこの映画のために資金を調達するうえで助けとなってくれるのでは、と考えた。
 脚本を読んだシングルトンは、すぐに彼女に同意した。「これまでには出会ったことのないタイプの脚本だったよ。赤裸々で、とても大胆なところがすごく気に入った。それでクレイグの第一作目を観てみたら、“すごくいい監督じゃないか!”と思ったんだ」。
 シングルトンはバックアップを買って出てくれたが、その方法は、アレインやブリュワーが当初考えていたのとは異なるやり方だった。「彼は『この企画は高予算でやるべきだ』と主張したんだ」とブリュワーは言う。シングルトンはそれまでの自分の経験上、資金の調達は容易に進むものと楽観視していた。
 だが、現実は甘くなかった。資金が集まらないまま一年が経ったとき、シングルトンはついに、彼自身が全面的に製作費を負担するという決断をした。「オッケー、それならぼくがゴー・サインを出してやろう、と思ったんだよ」とシングルトンは回想する。
 「ジョンは、ぼくが地元に根差した映画作家だと理解してくれていた」とブリュワーも語る。「彼にとってのサウスセントラルがぼくにとってのメンフィスであり、だからこそ、この映画はメンフィスで撮るべきだということも理解してくれたんだ。ぼくと彼は映画の中で同じようなものを描こうとしている―登場人物も、複雑な状況も、男女の関係もね。必ずしも美しいものばかりじゃない。ぼくも彼も問題の多い地域に住んでいて、そのことは、映画中の登場人物の日常にも反映されているんだよ」。
役に魂を吹き込んだテレンス・ハワードの熱演
『ハッスル&フロウ』 主人公のDジェイ役を演じる俳優をキャスティングするに当たって、監督のブリュワーは、有名なラッパーを使うのではなく、テレンス・ハワードを起用するべきだと、早い段階から確信していた。「テレンスは、これまでの出演作では主役を張ったことは少なかったけど、常に素晴らしい演技を披露していたからね。役柄に最適の人材に恵まれれば、撮影中に、時が経っても忘れられない作品を撮っているんだって気になれる。今回の場合は、まさにそれがテレンスだったんだ」。
 ハワードが適役だと製作陣が確信していた一方で、ハワード自身の中には躊躇する気持ちもあったという。「怖かったんだ。この主人公が、ぼくの知っている誰かであるような気がしてね」と彼は回想する。「誰の人生にも人から隠している部分があるものだ。それを白日のもとに晒すのは、決して容易なことじゃない。でも、クレイグはとても誠実だった。他の関係者がこの役に有名なラップ・スターをキャスティングしようとしていたときも、彼だけはぼくを推してくれたんだ。それで、ぼくもやってみなくてはと思った―Dジェイに魂を吹き込んでみよう、とね」。
 ハワードによると、この役を演じるに当たって、彼は自分の母親からインスピレーションを得た―彼の母は、4人の子供を育てながら、その合間にオーディション通いを続けていた女優だったのだ。「母はオーディションのためになんとか時間をやりくりして頑張っていたけど、役に恵まれることはなかった。よくがっかりして家に帰ってきたものだ。彼女はその想いのすべてをぼくに託したんだ。夢を抱きながら、どうやって実現させればいいのかわからずにいた彼女には、まさにDジェイのような部分があったんだよ」。
© 2006 United International Pictures, Inc.