ベルリン金熊賞はルーマニアの女性監督作に!挑発的な内容のため発表の瞬間にどよめきも
2018年2月26日 12:00
[映画.com ニュース] 第68回ベルリン国際映画祭の授賞式が2月24日(現地時間)に開催され、ルーマニアの女性監督アディナ・ピンティリエの初長編「Touch me not」が金熊賞を受賞した。
人との肉体的な接触にアレルギーを持つ女性が、グループセラピーを通して変化していく過程を描く。大胆でインパクトが強く、とくに性器のアップやセックスシーンなど、タブーを排した挑発的な内容に好き嫌いが分かれるタイプの作品だったため、受賞発表の瞬間には批評家の中からどよめきも起こった。本作は初長編に与えられるGWFFベスト・ファースト・アワードも受賞した。
グランプリに輝いたのは、前作「君はひとりじゃない」で2015年の同映画祭で監督賞に輝いたポーランドの女性監督マウゴシュカ・シュモフスカの「Mug」。工事現場の事故で顔半分が変形してしまうヘビメタ好き青年の物語を、社会性と純愛のテーマを融合させながら語る。アイロニーとユーモアと優しさの混じった心に残る作品だ。
監督賞を受賞したのは、コンペティション部門の中では誰もが楽しめる作品として最も人気の高かった「犬ヶ島」のウェス・アンダーソン。受賞式には、すでにベルリンを去った監督に代わり犬の声優を果たしたビル・マーレイが参加。「犬の声をやるのはとてもハッピーだったよ。ベルリンで若い監督たちや映画好きの観客たちの熱気に触れて刺激を受けた」と、今回のベルリン滞在を楽しんだ様子だった。
男優賞は、フランスのセドリック・カーン監督作「The Prayer」でドラッグ中毒から更生する少年を鮮烈に演じた俊英アントニー・バジョンに。女優賞にはパラグアイ映画「The Heiresses」で、レズビアンの女性相続人に扮したベテラン、アナ・ブランが選ばれた。本作は新鮮な視野を持った作品に与えられるアルフレッド・バウアー賞も同時受賞した。
また脚本賞は、美術館を舞台にしたメキシコ映画「Museum」のマニュエル・アルカラとアロンソ・ルイスパラシオが受賞。芸術貢献賞は、ロシアのアレクセイ・ゲルマン・ジュニア監督が20世紀の詩人、ドブラートフを描いたフィクション「Dovlatov」で、プロダクション・デザインとコスチュームを担当した監督の公私にわたるパートナー、エレナ・オコプナヤが輝いた。
今年のベルリンは開催当初から、いま映画界で話題のセクシュアルハラスメントの議論や、来年で任期を終える映画祭ディレクター、ディーター・コスリックの後釜問題など、さまざまな話題に見舞われた。結果的に、金熊、グランプリの両方が女性監督作となり、例年以上に女性たちにスポットライトが当たった年と言える。(佐藤久理子)