「オリエント急行殺人事件」で製作・監督・主演!ケネス・ブラナーの“武器”とは?

2017年12月9日 19:30

クリストファー・ノーラン監督 からの影響も明かす
クリストファー・ノーラン監督 からの影響も明かす

[映画.com ニュース] 俳優として「ハリー・ポッターと秘密の部屋」や「ダンケルク」で存在感を発揮し、監督として「マイティ・ソー」や「シンデレラ」をヒットに導いたケネス・ブラナー。ハリウッド随一の才人として知られるブラナーが映画.comの取材に応じ、アガサ・クリスティの人気小説の再映画化に挑んだ製作・監督・主演作「オリエント急行殺人事件」(公開中)について語った。

トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、富豪のラチェット(ジョニー・デップ)が殺害された事件に、名探偵エルキュール・ポアロ(ブラナー)が挑む。ブラナー、デップに加え、ジュディ・デンチウィレム・デフォーミシェル・ファイファーデイジー・リドリージョシュ・ギャッドペネロペ・クルスといった豪華キャストが結集したほか、リドリー・スコットがプロデューサーに名を連ねている。

名探偵ポアロといえば、デビッド・スーシェが演じたずんぐりむっくりした小男のイメージが強いのではないだろうか。それが本作では、アクションもこなすスタイリッシュかつスマートな紳士へと変身。性格もより若々しくなり、天才的な頭脳を持ちながらも未熟な一面をのぞかせる人間くさいキャラクターへとアレンジがなされている。ブラナーは「アガサ・クリスティが描いたポアロは、エキセントリックな男だ。とにかくバランスをいつも求めていて、自分の周囲をコントロールしようと思うんだけど、それは不可能だよね。科学やロジックを尊んでいながらも、自分の良心に従わないといけないという“不完全さ”、その部分が私にとって1番魅力的なところなんだ」とにっこりほほ笑む。

さらに本作で顕著なのが、ポアロの成長物語としての側面がより強まったこと。殺人事件の衝撃的なてん末を通し、ポアロ自身もこれまでの価値観を揺さぶられ、人間的・精神的な変化を遂げていく。善悪の二元論にとらわれていたポアロが、最後に“ある決断”を下すシーンは、ポアロ自身の成長を感じさせ、見る者に深い感動をもたらす。

ブラナーは「確かに、成長物語の側面はあると思う」と大きくうなずき、「これまでの(『名探偵ポアロ』シリーズの)構成というのは、(事件の)終わりが来て、3~5ページ謎解きがあって、ポアロが探偵として『答えが出ました』と言って終わる。ポアロ自身も、映画の中で言っているように『世の中には善と悪しかない』と最初は思っているんだ。ところが、善と悪の他にも、人間にはいわゆる心の痛みや、人を失うという喪失感、シェイクスピアがいうところの『深い悲しみという毒』(編注:『ハムレット』のセリフ)があることを知り、彼は善と悪で割り切れないものもあると学ぶ」と解説する。

その上でブラナーは、本作で初めて「オリエント急行殺人事件」に触れる観客には事件の真相そのものが、すでに物語の内容を知っているファンにはその後の物語が、それぞれ楽しめると語る。「私には20歳と21歳の姪(めい)がいるんだが、彼女たちはこの物語をまったく知らなかったんだ。それで本作を見たら、ラストにものすごくショックを受けたようでね。最後は非常にひねりが効いていて、意外な展開になるだろう? 若い世代には、新鮮な驚きになると思うよ。そして、(物語を)知っているファンには、心と頭に2つのサプライズがある。本作では(これまでの映像化作品に比べて)さらに工夫が加えられており、事件は解決しても、道徳的にどうすればよかったのかというジレンマが残るんだ。それは(ファンが)予期していなかったことだろうし、感情を揺さぶって感動を呼び起こす要素でもある」。

これまでに「ハムレット」や「シンデレラ」などを手がけ、本作の続編「ナイル殺人事件」も進行中。古典や過去の名作を現代によみがえらせる名手であり、語り部としての役割も果たすブラナーは、「シェイクスピアやアガサ・クリスティのような偉大な作家は、人間の苦しみを描いている。そして、人間の苦しみというのは未来永劫(えいごう)同じなんだ。時代が変わっても、人種が違っていてもね。いわゆる“古典”というものは何回も繰り返し、語り継いでいかなければならないものだと私は考えていて、時代に対応させて語ることが、自分にとってはやりがいのある仕事なんだ」と力を込める。

俳優、監督、演出家としても活躍するが、「1番のルーツは、やっぱり俳優だね」と笑顔。「今回であればポアロを演じながら、悲哀やロマンチックな部分を結合させ、さまざまなキャストと演技をするなかで1つのキャラクターを作っていった。監督としての演出は、その延長線上にあるんだ。他の俳優たちの演技を取り込んで、そしてその中で監督の見方というものを付けていく。私は本作を65ミリフィルムで撮ったが、(同じく65ミリフィルムを使って撮影された)『ダンケルク』でクリストファー・ノーランと仕事をしたことが生かされているし、私は“経験”というものを自分のルーツとして、映画を作っていくんだよ」と作品作りのプロセスを明かした。

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