鬼才クストリッツァ監督が「オン・ザ・ミルキー・ロード」に込めた譲れぬもの : 映画ニュース

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鬼才クストリッツァ監督が「オン・ザ・ミルキー・ロード」に込めた譲れぬもの

2017年9月14日 19:00

来日ライブも盛況「アンダーグラウンド(1995)」

来日ライブも盛況
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[映画.com ニュース]「アンダーグラウンド(1995)」「ライフ・イズ・ミラクル」など旧ユーゴスラビアの戦争や政治を題材に、笑いと哀しみの入り混じった傑作を世に送り出してきたエミール・クストリッツァ監督。9年ぶりの最新作にして自ら主演を務め、モニカ・ベルッチをヒロインに迎えた「オン・ザ・ミルキー・ロード」についてたっぷりと話を聞いた。

今回、自らが率いる“ノー・スモーキング・オーケストラ”を引き連れて来日を果たしたクストリッツァ。取材の前日に一夜限りのライブを行なっており、さすがにお疲れの様子。ライブ後にメンバーと飲み明かしたのかと思いきや、時差のせいで眠れず、朝まで小説を執筆していたのだとか。改めて62歳の異才のバイタリティに驚かされる。

とある架空の国を舞台にした本作は、ミルク売りの男と数奇な運命をたどってきた美女の愛の逃避行を描き出す。自身が演じた主人公・コスタと恋に落ちるヒロインに“イタリアの宝石”モニカ・ベルッチを起用したこと。さらにコスタに恋する若い娘まで登場することから「ベルッチと共演したくて主演したのか?」「自作自演でモテモテ男をやりやがって!」という嫉妬の声も聞こえてきそうだが、クストリッツァは自ら主演した理由について「ビジュアル的に、自分を表現する必要があったからさ(笑)」と説明。一方、ベルッチについては「女性の世界を代表するような、古典的な美女を探し求めた結果であり、60年代のイタリア映画を彷彿(ほうふつ)とさせるような美女を描きたかったんだ」とのこと。

「セリフで物語を動かすのではなく、スペースの中でカメラが動きながら物語が出来上がっていく」のが自らの映画作りのスタイル。「果たしてモニカ(・ベルッチ)が自分の演出方法を受け入れてくれるのか?という不安はあった」とも語る。「でも実際に会ってみると、とてもチャーミングで、彼女自身、これまでと違う自分の側面を見せたいと考えていたんだ。ポーズをとって自分をキレイに見せようとするような役が多くて、その内面まで入り込むようなものは少なかったけど、今回、長期間にわたる撮影の中で、私の演出に対応し、役柄を豊かなものにしてくれたよ」。

ちなみに、ベルッチの演じたヒロインは1度も名前を呼ばれず、エンドクレジットでも“Nevesta=花嫁”と記される。クストリッツァ作品において、花嫁や結婚式のシーンは何度も描かれてきた。いや、繰り返されるだけでなく、「アンダーグラウンド(1995)」「ジプシーのとき」「黒猫・白猫」などで忘れられない名シーンとして輝きを放っている。クストリッツァにとって、花嫁や結婚式はどのような意味を持つのか? 「それらが象徴するところは始まりと終わりの瞬間。そこには“哀しみ”も存在するし、そうした情景を面白おかしく描きたいと思っているんだ。自分にとっては画家が何度も繰り返して用いるモチーフのようなもの。ちなみに、いま執筆中の小説では、マフィアのボスと結婚を条件に目の手術を受ける不法移民を描いているよ」。

「アンダーグラウンド(1995)」がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しセンセーションを巻き起こしたのが1995年。あれから20数年、多作とはいえないが、さまざまな角度で戦争、そして国を失った人々の悲哀を描いてきた。「時間のおかげで映画監督は映画を作ることができる。何より社会情勢や環境といった状況が映画監督に映画を作らせる。『アンダーグラウンド(1995)』はユーゴスラビアという国家の消滅が生み出した作品であり、映画そのものが大きな論争を呼び起こした(※同作を政治的プロパガンダと批評する声があり、クストリッツァが一時、引退宣言を出すまでに至った)」と懐かしそうに振り返る。

「自分自身が変わったとは思わないけど、この20数年で自分の周囲や世界は大きく変わった」とも。変わらないのは世界中のそこかしこに存在する戦火。「オン・ザ・ミルキー・ロード」では過去のどの作品よりも戦争や人々の死を生々しく描き出している。一部では本作で、戦争をテーマにした作品はひと区切りとなるとも言われているが、真相は……? 「いや、今後も(戦争を)描き続けるよ。次回作でようやく(笑)、戦争とは違う題材を扱うことになるけど、その後、あと何作かは戦争を描くことになるだろうね」。

世界から戦火がなくならない限り、異端児は映画と音楽に乗せて声を上げ続ける。

(映画.com速報)
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