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三宅唱監督×森岡龍、超異色時代劇 「密使と番人」で目指した“新しいものづくり”

2017年7月23日 19:30

三宅唱監督(右)と主演の森岡龍「密使と番人」

三宅唱監督(右)と主演の森岡龍
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[映画.com ニュース] 国内外で高く評価された「Playback」などで注目を集めた新鋭・三宅唱監督の最新作である時代劇「密使と番人」が、東京・渋谷のユーロスペースで2週間限定レイトショー公開中だ。主演を務めたのは、三宅監督とは「人類で2番目に会っている友人」だという盟友・森岡龍。2人がインタビューに応じ、「新しいものをつくる」という信念のもと完成させた“超異色時代劇”を語った。

近年「超高速!参勤交代」「無限の住人」など、従来の時代劇とは一線を画す作品が続々と世に放たれてきたが、今作はなかでも、ひときわ異彩を放つ。19世紀初頭、鎖国下の日本を舞台に、極秘の書物を持ち出した若き蘭学者・道庵(森岡)が雪深い山中を逃げ、寡黙な山の番人・高山(渋川清彦)がそれを追う。刀も殺陣も江戸の町並みも登場せず、“時代劇という枠組み”にもとらわれない追走劇が展開していく。

前作「THE COCKPIT」ではヒップホップアーティストの楽曲制作過程に迫り、とりわけ“新進気鋭”という惹句がふさわしい三宅監督。「時代劇専門チャンネル」から「時代劇を撮らないか」とオファーされた際には「正直、面食らった」というが、製作陣と顔を合わせるや、「いわゆる従来の時代劇ではなくとにかく新しいものを、と求められていることがはっきりした」そうだ。その心意気と勇気に胸を打たれ、オファーを引き受けることになった。

新しいものをつくる。そこを出発点に「日本家屋や侍、ちゃんばら、町人の生活は撮らない。したがって時代劇用のスタジオに今回は行かない。それならばどこでなにを撮れるか」と思考を掘り下げ、「200年前と変わらない風景がある山中を舞台に」と決めた。「焚き火をするまでに木を集めていたり、何の意味もなくイモを洗っていたりする時間など、今ある時代劇ではカットされているが、実際には確実にあった時間を映したいと思った。そこにはきっと、僕ら現代人と似た感覚があると思ったし、そこで時代劇に挑戦したかった」。

エミアビのはじまりとはじまり」など主演作が続く森岡だが、オファーを受けた際にはやはり「いつか一緒に、とは思っていましたが、まさかこのタイミングで時代劇になるとは」と驚いた。2016年12月に行われた長野・諏訪の山中の撮影では、「そこにある石や木のように存在してほしい。演じるのではなく“2週間も番人に追われる蘭学者”であってほしい」と演出されていただけに、「自然も共演者みたいだった」と述懐する。

三宅監督はこう話す。「本番中に鳥が飛べば、おそらくそれに恐れたりする。風が強く吹けば目を閉じる、虫が止まれば払うかもしれない。道庵が相手にしているのは追っ手であり、同時に世界や環境丸ごとなんです。つまり登場人物と同じくらい天気や木も存在感があり、人間だけでなく自然物をなるべくフレームに収めたかった。また、ほとんどのシーンはテストせずそのまま本番。『あの辺を歩いてくれればいい。何かが起きるはずで、何も起きなければそれはそれで、時間を撮れればいい』と言っていました」。2人の言葉からは、従来はカットされてきた時間に意味を持たせるためには、“世界丸ごとの撮影”と“芝居ではない芝居”が必要だったことがうかがえる。

かくして道庵が荒い呼吸を繰り返しながら歩き、焚き火をして和む姿だけでも延々と見ていられる、斬新かつ心地いい余韻が残る時代劇が完成した。即興性が強い撮影と、「THE COCKPIT」の被写体でもあったOMSB&Hi'Specによる音楽が融合し、予想以上の効果を生んだシーンもある。森岡は「最後、道庵の草鞋(わらじ)が壊れてしまいます。アクシデントだったんですが、それが音楽を乗せてスクリーンを通すと、歩き疲れてスニーカーが壊れたようにしか見えなかった。三宅さんの狙いが表れているシーンです」と振り返り、三宅監督は「通常はカットをかけますが、どうなるんだと見ていたら、素足で歩いていったので面白いと思った。当時はたくさん草鞋を持って旅に出ていたそうですが、すべて履き潰した最後の一足だった、という設定がそこでできたんです」と説明する。

「今作は従来の時代劇に対するカウンターか」と問うと、三宅監督は笑みを絶やさずこう答えた。「敬意がありますし、恐れ多いですよ。カウンターの意識はないです。しかし痛快という点で『こういうのがあってもいいんじゃねえ?』という思いもあります。時代劇専門チャンネルのチャレンジ精神に僕も乗っからせていただき、本当に光栄でした」。「密使と番人」は、7月29日の深夜1時に時代劇専門チャンネル・日本映画専門チャンネルでも同時放送される。

(映画.com速報)
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